次の文で示す症例で罹患神経の絞扼部位に 対する刺鍼部位として最も適切なのはどれか（２９回）

解説：

感覚障害の部位､物がつまみにくいという症状から正中神経麻痺が考えられ、選択肢で正中神経の障害に関連するのは「3：橈側手根隆起と尺側手根隆起の間」のみである。

屈筋支帯はこの2つを結び、手根管を形成する。

よって手根管症候群の設問であり、正解は3となる。

手根管症候群は、妊娠時の浮腫、手の使い過ぎ、糖尿病、アミロイドーシスなど様々な原因から発症する。

手根管症候群では手根管より近位で正中神経から枝を出し支配する円回内筋や浅指屈筋、また正中神経の枝である前骨間神経支配の深指屈筋(示指と中指)、長母指屈筋、方形回内筋の筋力は保たれるが、手根管より遠位で枝を出し支配する母指対立筋、短母指外転筋、短母指屈筋の浅頭、第1・2虫様筋が麻痺する。

これらにより母指の運動が制限されるので、物がつまみにくくなる。

正中神経の手掌枝は屈筋支帯の上を通るので手根管症候群では障害されず､手掌の感覚は保たれ、指に痛みやしびれが現れる。

設問は「右手掌の」となっているが、わかりやすく言えば「右指の掌側」であり、母指から中指の掌側と環指の橈側に感覚障害が発生する。

※豆状骨と有鈎骨鈎の間を通るのは尺骨神経である。