ブログで何度か「理学療法」というキーワードを使った気もするのですが、ちゃんと自己紹介をしたことが無かったと思うので、改めて。
僕は「理学療法士」という資格を持っています。
今回は、そんな理学療法士に関する「あれこれ」を記事にしていきます。
目次
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「僕、理学療法士です」と自己紹介した際の反応
学校へ入学すると、自身の人となりを自己紹介することから始まります。
どんな過去を持った人物なのかは、自己紹介で皆が一番知りたいところ。
で、あん摩マッサージ指圧の学校は、(僕の学校に限らず)多種多様な人たちが学びに来ていると思います。
そして僕も自己紹介をするわけですが、「理学療法士として働いていた」と自己紹介すると、皆の反応は様々。
例えば以下な感じ。
- 既に臨床でマッサージをバリバリにやっている「経験者」ってことですね!凄い!
- は?理学療法士って何する人?
- 骨折したり、脳梗塞を起こしたり、高齢者で弱った人のリハビリをする仕事ですね。何でリハビリする人が、マッサージの資格を取ろうと思ったの?
ちなみに、①のリアクションが圧倒的に多いです。
②に関しては、「病院や施設でリハビリをする人です」って伝えてると「あー、なるほど」とピンと来てもらえます。
③のように解釈してくれる人が一番少ないわけですが、そんな数少ない③な人たちだけでも以下のように比較的正しい認識を持ってくれているのが救いです。
あん摩マッサージ指圧は、(ほとんどの理学療法士は)積極的に用いていません。
もちろん、学校では「あん摩」「マッサージ」「指圧」の違いすら学びませんし、マッサージなどの実技練習も皆無です。
もちろん理学療法士は「医師の指示の下であればマッサージも可能」な職種なため、(学校では学ばないにしても)「筋肉をほぐす手法」は独学するケースも多いですが、基本的には「運動療法」「動作練習」「指導」などの「メインとなるリハビリの前処置」といった位置づけとして捉えている人が非常に多い。
また、「筋肉をほぐす方法(もう少し厳密には、過緊張を改善させる方法)」と一括りに表現しても、「あん摩マッサージ指圧」に類似した手法を好む人がいる一方で、PNFのホールドリラックスをはじめとした等尺性収縮後弛緩などを好む人、オステオパシーでいうところのストレインカウンターストレインのような手法を好む人、AKA(関節運動学的アプローチ)の様な手法を好む人など様々です。
そして意外かもしれませんが「マッサージ」を「単なる慰安的な行為」「施術者への依存を助長する行為」などと忌み嫌う人すら存在します(っというか、そういう理学療法士は結構多いです)。
ちなみに、この「あん摩マッサージ指圧に関する拒絶感」は歴史的な背景もあったりするのですが、話が長くなりそうなので、また機会があれば記事にしたいと思います(脱線も甚だしいので)。
何で「理学療法士=あん摩マッサージ指圧が上手」と勘違いされるのか?
自己紹介で理学療法士と伝えると「あん摩マッサージ指圧が上手」と思われてしまい易いのは前述したとおり。
でもって「何で、マッサージが上手だと思われてしまうのか」に関しては以下などが関与しているのではと個人的に考察してみました。
- 授業のカリキュラムで共通している科目も多いから
- 学校へ通う年齢では一番なじみがありそうな「整形外科・クリニック」ではマッサージをしてる理学療法士が比較的多い傾向が
- 整体師として起業する理学療法士が増えてきているから
授業のカリキュラムで共通している科目も多いから
東洋医学的なカリキュラム、経絡経穴などの授業は、理学療法士のカリキュラムに一切組み込まれていません。。
もちろん、それに付随した実技練習も一切ないのは前述したとおり。
ただし、解剖学・生理学などは基礎科目では類似している点が多い。
なので、この点をもって「マッサージが上手なはず」と判断する人が多いように思いました。
整形外科クリニックのイメージが強い
学校へ入学する学生は20~40代が多いので、その年齢を考えると、受診してリハビリ室を見るチャンスが一番多いのは「整形外科クリニック」かなと。
で整形外科クリニックでは、マッサージをしている理学療法士も(他と比べると)多いので、そのイメージを持ちやすいかなと。
整体師として起業している理学療法士をイメージしている
最近は、独立して整体院を起業する理学療法士が増えています。
この背景も、語りだすとメチャクチャ長いし本題から脱線するので割愛します(機会ああれば別の機会に記事にしたいと思います)。
ここでは、とりあえず「整体師として起業している理学療法士は、あん摩マッサージ指圧に類似した行為をする傾向が、グッと上がる」とだけ記載しておきます。
っという感じで、これらの点が「理学療法士=あん摩マッサージ指圧の経験者」というイメージを持たれてしまう要因なのかなと。
補足:認定理学療法士制度について
「理学療法士は、メチャクチャ多くの役割を担っている職種」というのを補強するために「認定理学療法士制度」というのを補足で解説してみます。
「認定理学療法士制度」というのは、理学療法士を取得後、「興味のある分野」・「知識を深めたい分野」などの目的に合わせて研鑽を積み、「認定資格の取得を目指す制度」です。
医師や看護師にも「○○専門医」「○○認定看護師」みたいなのがありますが、それの理学療法士バージョンだと思ってください。
そんな「理学療法士の専門分野」は以下の通り。
- 礎理学療法分野:
・ひとを対象とした基礎領域
・動物・培養細胞を対象とした基礎領域
- 神経理学療法専門分野:
・脳卒中
・神経筋障害
・脊髄障害
- 運動器理学療法専門分野:
・運動器
・切断
・スポーツ理学療法
・徒手理学療法
- 内部障害理学療法専門分野:
・循環
・呼吸
・代謝
- 生活環境支援理学療法専門分野:
・地域理学療法
・健康増進・参加
・介護予防
・補装具
- 物理療法理学療法専門分野:
・物理療法
・褥瘡・創傷ケア
・疼痛管理
- 教育・管理理学療法専門分野:
・臨床教育
・管理・運営
・学校教育
ちなみに、全ての理学療法領域において、特に「あん摩マッサージ指圧」へ興味がある人は『(運動器理学療法専門分野の中の)徒手理学療法』に所属すると思います。
では、「認定理学療法士」の中で、「認定徒手理学療法士(つまり、特に徒手理学療法へ興味を持ち、自己研鑽に励んだ人)」は、いったいどれくらい存在するのでしょうか?
少し古い資料(2017年12月)になりますが、認定理学療法士の内約は以下の通り。
圧倒的に「脳卒中」が多いようです。
また、同じ「運動器専門理学療法」の分野でも「徒手理学療法」ではなく「運動器」が多い(脳卒中の次に多い)というのも特徴です。
これは「運動器疾患に対しては、(徒手療法も含めた)多様なアプローチを提供したい」と思っている人が圧倒的に多いことを示しています。
認定理学療法士を取得している人のうち、「脳卒中1156人」「運動器874人」と比べて「徒手理学療法102人」という数字からも、ここまで記載してきたことが理解してもらえるのではと思います。
しかも、(繰り返しになりますが)「徒手理学療法」と一括りに行っても、PNF・オステオパシー・関節運動学的アプローチなど(マッサージ以外にも)多岐に渡ります。つまり「認定徒手理学療法の取得者=あん摩マッサージ指圧に興味がある人」という考えすら当てはまらないということになります。
っというか、「認定徒手理学療法を、あん摩マッサージ指圧と同じにするな」というプライドを持っている人は多いと思います(私が接する限りにおいて)。
私はマッサージが学びたくて学校へ通っています
私がマッサージの学校へ通ている理由は複数ありますが、その中の一つは以下です。
そして「理学療法士=マッサージを臨床でも多用している人・得意な人」という誤解を解くため、自己紹介をする際は、ここで記載した内容を(もっと大雑把に端折って)なるべく付け加えるようにしています。
「理学療法士」と名乗らずに学校へ通っている人も
私の「クラス」の中には、私を含めて理学療法士が2人います。
ですが、「学生」の中には、他にも理学療法士がいるらしい。
※同じクラスの理学療法士さんが教えてくれたのですが、その方が「夜間部なのか昼間部なのか」「1年なのか、先輩なのか」すら私は知りません(もう一人の理学療法士さんも知らないようです)。
で、その方(自身が理学療法士だと明かしていない方)は同じクラスの人にすら「自分は理学療法士であること」を伏せているそうです(先生しか知らないようです)。
※っとなると、クラスメートと雑談をする際などで、かなりの部分を偽る羽目になり、学生生活が苦痛になりそうですが。。。どうなんでしょうか。。。
ただ、理学療法士であることを伏せたくなる理由は分からなくもありません。
いくつか可能性が思い浮かびますが、その中の一つとしては、やはり今回のテーマでもある「理学療法士=マッサージやってる」って変に誤解されるのが嫌なのかなと。
先輩との実技練習の際に「経験者ですか?」と聞かれた際の対応
クラスメイトは僕が理学療法士であることを知っています。
ですが放課後研修に参加して先輩と接する際においては、私が理学療法士であることを知らない人も多い。
そして、その様な場面においては、率先して理学療法士だという必要はないと感じています。
理由は以下の通り。
理学療法士だと伝えたからといって、+αとして優遇して何かを教えてもらえるわけですし。
教えてくれる量が増えるわけでもないですし。
一方で、デメリットが生じる場合は多々あります。
理学療法士と知った途端に、妙に恐縮されて態度が変わったり、(前述したように)誤った認識の下で妙に期待値が上がったり。
もちろん、以下のように対面で聞かれたら理学療法士と答えます。
- 何か医療系の資格を持っているのですか?
- 専門用語を知っているようですが、以前お仕事は何をされていたのですか?
あるいは、「整体やサロンなどをやられていたのですか?」などと対面で聞かれた際も、「理学療法士なので、専門用語は知っているんです」と答えます。
ただ、グループで集まっている場面において「この中に経験者はいますか?」とか「何か似た資格を持っている方はいませんか?」と言われた際には、わざわざ「経験者です。似た資格を持ってます。理学療法士です。」などと申告したりはしません。
※何をもって『経験者』『似た資格』と言っているのかザックリしすぎて不明ですし、『対面で言われている』訳でもないので。
最近感じたデメリット
直近で感じたデメリットのエピソードを上げてみます。
「僕が理学療法士であることを知っている先輩」が丁寧にマッサージを指導してくれていました。
大変勉強になり、僕も素直に色々と吸収しようと励んでいました。
すると、その姿を見た別の先輩(この方も、最近僕が理学療法士であることを知った)が、二人っきりになった際、以下のようにアドバイスをくれました。
これは、僕に対する批判とかではなく、「僕が妙に先輩を立てて、気を使っているのでは」と考えて伝えてくれた言葉なのですが。。。
確かに、(マッサージというよりは)運動療法っぽい話も交じった指導になることがあり、そのような指導の中には自分の方が詳しいなと思う場面も稀にあります。
そして、そんな場合においても(知っているのに)他の学生と同じリアクションを取っていることがあり、そんな場面を見て先輩は「理学療法士なはずなのに??」と違和感を持ったようです。
う~~ん、むずかしい。
このケースの場合、どうすれば良いのでしょうか?
既に知っているので(皆が「なるほど!」というリアクションを取っている中で、僕だけ)「それ、もう知っている」という態度をとった方が良かったのかな。。
あるいは、「理学療法士ならではの見解」を先輩の指導に被せて、一緒になって語ればよかったのかな。。
う~~ん。。。。
個人的には、(自分の意見とかは脇に置きつつ)皆と一緒なリアクションを取って、あまり深く考えすぎず楽しみながら、自分の知らないスキルを身に着ける方向に注力したいのですが。。。
※郷に入れば郷に従い、批判的思考は内省のみで咀嚼するというスタンスが好ましいかなと感じています。
せっかく(嫌味ではなく、良かれと思って)アドバイスをして頂いたので、その先輩のいる時にはどいうスタンスでいようかなと、ふと考えました(まぁ、多分、深く考えず今まで通りなスタンスでしょうが)。
こういうのも、僕が理学療法士だと知られていなければ発生しないエピソードなわけで。
「理学療法士だと知ってもらえるメリットは無い一方で、デメリットはあるな」と感じさせられる出来事でした。
終わりに
以上が、「理学療法士」にまつわる最近の雑感です。
「理学療法士ということを伏せている人がいる」というエピソードと、「最近の先輩とのエピソード」が、この記事へのインスピレーションとなりました。
僕のクラスメイトである鍼灸師さんが以下のように言っていたのが印象的です。
全くの同意。
理学療法士だからといって偉ぶる必要はない。
そして、謙虚に振る舞う上で、理学療法士だと知ってもらう必要性は全くない(むしろ、謙虚が嫌味に受け取られる可能性も)。
聞かれてもいない場面で、あるいは言う必要もない場面で、理学療法士だと伝える必要はない。
少しでも理学療法士に対する誤解が解ければ幸いです。