解説:
1:イレウス(腸閉塞)は、腸が異物、糞塊、癒着、悪性腫瘍、腸軸捻、腸重積などで機械的閉塞をきたしたり、麻痺などで機能的閉塞をきたして内容物が通過できなくなったもので、嘔吐、腹痛、腹部膨満、腸運動不穏、便秘などが出現する。血中アミラーゼの上昇はみられない。
2:胃潰瘍は、食後1~2時間後に心窩部痛を訴えることが多い。げっぷ、胸やけなどの過酸症状や下血による黒色タール便がみられることがある。血中アミラーゼの上昇はみられない。
3:急性胆嚢炎では、発熱、悪寒、戦慄、右季肋部から心窩部の疼痛、悪心、嘔吐、軽度黄疸等を生じ、右上腹部、右季肋部の緊張、圧痛を呈する。血中アミラーゼの上昇はみられない。
4:アミラーゼは、膵から分泌される酵素であり、腎臓から尿中に排泄されるが、急性膵炎、膵石症、腎不全および流行性耳下腺炎の膵炎併発時などで血中アミラーゼの上昇がみられる。急性膵炎はアルコールの過飲をする飲酒家に多く、上腹部、特に心窩部の激痛、嘔気、嘔吐、腹部膨満感を訴える。血清アミラーゼ値が発症後48時間で最高に達し、移行降下する。本症例の「飲酒後の激しい心窩部痛と血中アミラーゼの上昇」は急性膵炎を疑わせる。