次の文で示す症例の神経絞扼部に対する刺鍼部位として最も適切なのはどれか（２９回）

解説：

「前腕回外位でカバンを引っかける」という記述や、「張り感、しびれの症状」から正中神経の絞扼が考えられる。

前腕肘関節遠位での正中神経の絞扼は、上腕二頭筋停止腱膜の下、円回内筋の上腕骨と尺骨頭の間、浅指屈筋の起始腱の部位で起きる。

内側上顆から肘窩内側縁に沿った張り感は円回内筋を指すと思われ、円回内筋症候群の設問である。

少海と孔最はともに円回内筋上の経穴であり以下の通り。

• 少海は内側上顆の前で円回内筋の起始部に近い。
• 孔最は円回内筋の停止部に近い。

従って、少海と孔最の間に刺銭することで円回内筋に働きかけるという設問と考えられる。よって正解は1である。

上腕二頭筋腱膜による正中神経の絞扼障害は「肘屈曲で前腕回外させて抵抗を加えると疼痛が誘発る」というのも特徴の一つで、これはこの設問の「肘屈曲・前腕回外位でカバンを引っ掛けるという姿勢」に当てはまり、上腕二頭筋腱膜による障害とも考えられる。

しかし「2：曲池と曲沢の間」は肘窩の外側部になり、上腕二頭筋腱膜からは外れる位置なので該当しない。

円回内筋部での絞扼は「前腕回内位で手関節掌屈により疼痛が誘発される」というが特徴で、この症例の姿勢とは逆になるため疑問も残るが、この設問の選択肢で正中神経絞扼に関係するのは1のみである。

また浅指屈筋腱弓部での絞扼は中指PIP関節屈曲で誘発され、このような誘発テストは絞扼部位の局在診断の参考になる。