解説:
皮膚は、身体の外表を被覆することで生体内にあるものすべてを外界から保護すると同時に、知覚・体温調節に関与し、さらに近年免疫担当組織としても注目されている。これらの機能のうちで老化の影響を最も受けにくいのは、皮膚血流量であろう。一般に、老化とともに、器官・組織内での実質細胞の数・水分含有量は減少し、細胞間質ないし結合組織が相対的に増加する。皮膚真皮の膠原線維は加齢とともに次第に組織内に集まってくる傾向を示す一方、弾性線維は次第に変性ないし分解消滅をもたらす傾向がある。これらの線維の構築の加齢的変化ももちろん注目しなければならない。皮膚は表皮・真皮・皮下組織からなり、表皮には基底層・有棘層・(顆粒層)・角質層がある。角質層は、扁平で無核の細胞が何層にも重なり、表皮の最外層を形成する。この部位が水分などの通過も阻止するバリアーとして常に機能している。正常表皮での細胞分裂は基底層のみに起こり、この分裂のうちで有棘細胞になった細胞には分裂能はなくて成熟分化する方向に向かう。これが角質細胞になるまで約14日要する。角質細胞になってから皮膚表面に移動して剥離脱落するまでにさらに約14日間かかるという。結局、1個の基底細胞が皮膚表面に移動して剥落するに至るまでにヒトでは約28日間あるが、表皮にあるケロンという物質がこの細胞増殖と落屑間の動的平衡に重要な役割を演じている。この表皮のターンオーバーは加齢とともに緩徐となり、従って角質層の水分含有状態やバリアー機能も老化の影響を受ける。