解説:
長期に渡る透析療法で高頻度にみられる合併症に透析アミロイドーシスがあり、アミロイドの沈着が身体各所に起き、手根管症候群、インピンジメント症候群などにつながる。
手根管症候群は、手根管内のアミロイド沈着で手根管が狭小化し、通過する正中神経が圧迫される。
知覚神経の障害として母指示指・中指・薬指のしびれ(薬指は橈側半)、運動神経の障害として正中神経支配の母指球筋が痩せる。
母指球筋には、正中神経支配の短母指外転筋および母指対立筋、浅頭が正中神経深頭が尺骨神経支配の短母指屈筋、尺骨神経支配の母指内転筋がある。
- 「2:ファレンテスト」は、手根管での正中神経圧迫障害を示唆する。手背を合わせ、両手関節を完全屈曲位にしたとき、正中神経支配領域のしびれが悪化し、手関節を中間位に戻せば症状が消失するものを陽性とする。
- 「3:肘関節屈曲テスト」は肘部管症候群の誘発テストで、肘屈曲で肘部管の内圧が増加するため、肘の屈曲を数分間持続させ、手のしびれが再現すると陽性であり、尺骨神経の絞扼神経障害を示唆する。
- 透析アミロイドーシスでは肘部管症候群も代表的疾患に含まれ、また「1:フローマン徴候」は尺骨神経麻痺を示唆するが、この設問の症例でのしびれの部位は尺骨神経領域ではないため1と3は除外される。
- 「4:トムゼンテスト」は陽性で上腕骨外側上顆炎を示唆する。