解説:
胎児の臓器形成に影響を与えて、先天性の形態異常を誘発する因子を催奇形因子という。
それにはウイルス、放射線、薬剤、毒物などが知られている。
1:母親が妊娠初期の3か月までにウイルス感染症風疹に罹患すると、その胎児に奇形発生率が高くなり、白内障、聴力障害、心・大血管奇形、精神遅滞などがみられる。それを一般に先天性風疹症候群と呼んでいる。
2:母親がインスリン依存性糖尿病の場合は血糖値のコントロールが重要で、そのコントロールが不良な場合には、その児に心奇形、神経管閉鎖不全、仙椎形成不全などが起こるリスクがある。
3:ダイオキシンは強い催奇形性と発がん性を示す環境汚染物質である。ベトナム戦争の枯草作戦で使用された除草剤に不純物として含まれ、その散布地域住民にみられた高い奇形児発生率が注目された。現在ではゴミ焼却炉からの汚染物質として世界中で問題となっており、内分泌撹乱物質の1つに数えられている。
4:ビタミンCはヒトの体内で合成されないため、すべて食餌に依存するが、体内貯蔵量は限られており、欠乏症が発生することがある。しかし、その過剰症はみられない。ビタミンCの催奇形性についての報告も現在までみられない。