解説:
1:肥大とは、組織や臓器が一定レベル(それぞれの平均値)以上にその容積を増すことである。実質細胞の容積増大でもたらされた臓器の容積増大を真の肥大と呼ぶ。
この増大には、個々の実質細胞そのものの容積を増した結果によるものは狭義の肥大であり、個々の実質細胞の増数によるものは、通常、過形成ないし増生と呼んでいる。
多くの場合、この両者がしばしば重複して起こっているのが実際である。
2:生体内細胞の増殖は、いろいろな規制、因子により、核内DNA合成から細胞分裂過程を経て、1個の細胞が2個に増えることであり、細胞の数が増すことは当然である。
3:労働性肥大は、臓器組織の仕事量が増加したために生じた肥大で、心の心筋組織や運動器の骨格筋組織でよくみられるものである。
4:代償性肥大は、例えば腎臓のように一対として存在しているものの一方を摘出した際、個体にとって低下した機能を回復するために、残った一方の臓器が増大することである。
神経系では、このような代償性の現象は通常みられないようである。
末梢神経にみられる神経細胞は若干の狭義の肥大はみられるが、再生能力はほとんどみられない。
さらに、中枢神経系の神経細胞も再生増殖能はきわめて低いとされており、大脳の傷害に対する修復過程の大半はその間質である膠細胞によって営まれている。