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【国試対策】主要な異常歩行を解説(イラスト+動画)

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この記事では、国家試験で出題される主要な跛行(異常歩行)を列挙していく。

 

目次

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弱化した股関節外転筋による異常歩行

 

股関節外転筋群が弱化すると以下などの跛行が生じる。

  • トレンデレンブルグ歩行(トレンデレンブルグ徴候)
  • ドュシェンヌ歩行   (ドュシェンヌ徴候)

 

股関節外転筋群が弱化する原因は以下などが挙げられる。

ギランバレー症候群、筋ジストロフィー、ポリオ、股関節痛、股関節炎、肥満、人工股関節置換術など

 

トレンデレンブルグ歩行とは

 
Trendelenburg gait(トレンデレンブルグ歩行)とは、以下を指す。
単下肢支持期において、骨盤が弱化した股関節外転筋の反対側に傾く現象

立脚側下肢の股関節外転筋は、骨盤の高さを保つのに十分な力を発生できないので(骨盤の高さを保つのに十分な力を発生できないので)、骨盤、またしばしば体幹も、大きく対側に傾く。これをトレンデレンブルグ徴候陽性という。

 

以下はトレンデレンブルグ歩行を模した動画となる。

 

 

ドュシャンヌ歩行とは

 
Duchenne geit(ドュシェンヌ歩行・ドュシャンヌ歩行)とは、以下を指す。
単下肢支持期において、体幹と骨盤が弱化した股関節外転筋と同じ側に傾く現象

ドュシェンヌ歩行では、弱化した股関節外転筋と同じ側に、骨盤と体幹を故意に傾ける。この代償動作では、重心線を左に移動させて、立脚側股関節の回転軸により近づける。その結果、外的トルクは股関節上で減少する。それによって、弱化した股関節外転筋への要求を減少させる。

 

 

股関節の分回し

 

股関節の分回し歩行(=下肢の分回し歩行)とは以下を指す。

遊脚側の下肢を、半円型の弧を描いて振り出す歩行。

 

原因

分回し歩行の原因は「遊脚側の下肢を短縮するとができないこと」である。

 

例えば「下肢ブルンストロームステージⅢの脳卒中後遺症」では、共同運動により「下肢が1本の某の様に伸びきった状態」での歩行となりやすい。

従って、遊脚期に必要な膝関節屈曲が生じないため(下肢を短縮させることが出来ないため)、下肢を「外側へぶん回すこと」で前方へ振り出す。

 

※外側へ分回すことにより、足部が床面にぶつからないようにする。

 

 

股関節伸筋群(主に大殿筋)の弱化による異常歩行

 

大殿筋の機能不全が起こると以下の様な跛行が生じる。

歩行の立脚初期において、体幹が後方へ傾く。

 

この様な跛行が生じる理屈は以下の通り。

立脚相において、体幹が後方に傾斜することによって、重心線を股関節の後方に移動し、股関節の伸筋への要求を減少させている。

 

顕著な跛行はポリオなどで見られる。

 

 

足関節背屈筋群の筋出力低下に起因する跛行

 

足関節背屈筋群の筋出力低下に筋する跛行としては以下などが挙げられる。

  • フットスラップ
  • 鶏歩
足関節背屈筋群の筋出力低下は、脳卒中片麻痺(弛緩性の中枢神経麻痺)・脊柱管狭窄症・総腓骨神経麻痺(末梢神経麻痺)などで生じる。

 

フットスラップ

 

フットスラップとは

フットスラップとは「踵接地において足部が急速に底屈するため、音を立てて床にぶつかる跛行」を指す。

       

原因

フットフラップの原因としては「背屈筋の機能が不足し、足関節の底屈を緩徐に行えない」などが挙げられる。

 

鶏歩

 

鶏歩とは

鶏歩とは「背屈筋の著しい弱化によって下垂足が生じる跛行」を指す。

歩行分析の際は、「想像上の障害物を超えて歩く」ようにみえる。
※そのため「高いステップhigh stepping」とも呼ばれる。

原因

鶏歩の原因は「股関節と膝関節は、床に足部が接触しないように、前進する下肢を過度に屈曲して高く上げる必要があるため」などが挙げられる。

 

 

大腿四頭筋の弱化または収縮の不全

 

大腿四頭筋の機能不全が起こると以下の様な跛行が生じる。

膝関節は立脚相全体を通して完全に伸展したままであり、また体幹が過度に前方傾斜する。

この様な跛行が生じる理屈は以下の通り。

体幹が前方に傾斜することによって、膝関節の内側ー外側軸の前方重心線が移動する。

この体幹の運動は、膝関節を伸展位に固定することによって、大腿四頭筋が収縮する必要性を低下させる。

 

リスク

膝関節の伸筋の麻痺によって、膝関節の伸展を制限できない。

従って、この跛行を続けることは「膝関節の関節包後部に負荷がかかり、反張膝につながる可能性」がある。

また、高負荷により疼痛誘発の原因となりえる。

同様に反張膝の原因となる原因として「足関節背屈制限がある人の歩行」が挙げられる(次の項目で記載)。

 

反張膝

 

「歩行時における反張膝」は以下の機能障害で見られやすい。

  • 大腿四頭筋の長期間の麻痺(さらに、膝関節の屈筋の麻痺を伴う場合がある)←前項を参照
  • 「足関節の重度の底屈拘縮」や「尖足(脳卒中片麻痺などによる下腿三頭筋の過緊張)」

底屈拘縮・尖足により反張膝が生じる理屈は以下の通り。

足関節の底屈拘縮によって、下腿は足関節よりも後方に偏位する。これにより、膝関節は強制的に過伸展され、最終的に関節包後面は過度に伸張するため生じる。

 

例えば「ブルンストロームステージⅢの脳卒中後遺症」では、尖足(足関節底屈位での痙縮)が生じているため、立脚期に尖足が生じやすい。

従って、短下肢装具を着用すること(尖足を矯正すること)は反張膝の抑制につながる。

 

 

股関節又は膝関節の屈曲拘縮による異常歩行

 

股関節または膝関節の屈曲拘縮が起こると以下の様な跛行が生じる。

歩行の立脚相において、股関節と膝関節の屈曲位をとる(+しばしば腰椎前弯の増大を伴う)。

※股関節の屈曲拘縮例では、しばしば股関節の内転筋と内旋筋の硬直を伴う。

 

腰椎前湾を伴う理由

正常歩行における立脚後期では股関節伸展・膝関節伸展が生じることで、歩幅拡大・推進力増大を図る。

しかし股関節・膝関節の屈曲拘縮(=伸展制限)を有している場合、腰椎前湾を起こすことで「上記の正常歩行」の代償をしようとする。

 

原因

股関節または膝関節の屈曲拘縮が起こる原因としては以下などが挙げられる。

股関節の屈曲あるいは膝関節の屈筋の痙直や硬直、股関節の伸筋弱化、関節炎による可動域制限や疼痛などの病変。

 

脳性麻痺例での歩行パターンを説明する際、この異常歩行はよく「かがみ歩行crouchend gait」として言及される。

 

その他の跛行動画

 

以下はパーキンソン病における「小刻み歩行」の動画。

 

以下は「アヒル歩行(=動揺歩行)」の動画となる。

 

様々な跛行まとめ

 

以下は様々な跛行をまとめた一覧表となる。

 

名称 原因 特徴
疼痛性跛行(逃避性跛行) 下肢の疼痛(変形性股関節症) 痛みがある下肢の接地時間を短くする。
間欠性跛行

1)バージャー病・閉塞性動脈硬化症

2)腰部脊柱管狭窄症

歩行を持続すると、疼痛により歩行が困難になるが、休むと再び歩行可能となる。
トレンデレンブルグ歩行

1)先天性股関節脱臼

2)中殿筋麻痺

・・など。

患側下肢で起立すると健側骨盤が下降する。
片麻痺歩行(痙性歩行・分回し歩行) 片麻痺(脳卒中後遺症・上位運動ニューロン障害) 麻痺下肢を外転しながら円弧を描き歩く。
失調性歩行 1)小脳性(酩酊性歩行) 小脳疾患(小脳変性症など) 体幹動揺がひどく、ジグザグに歩く。
2)脊髄性(踵打ち歩行) 脊髄癆(脊髄後索障害) 歩幅が大きく、踵を地面にたたきつけ歩く。
3)前庭性(酩酊性歩行) メニエール病(前庭系障害) 平衡傷害が強く、酔っ払いのように歩く。
麻痺性歩行(鶏歩) 総腓骨神経麻痺(下位運動ニューロン障害) 足を高く上げ、尖足のため、つま先から着地して歩行する。疼痛は無い。
動揺性歩行(アヒル歩行)

1)進行性筋ジストロフィー症(デュシェンヌ型)

2)両側性先天性股関節脱臼

後方に反り、腰を左右に振って歩く。ガワース徴候(登坂性起立)が陽性となる。
随意性跛行

1)小児股関節結核

2)ペルテス病

疼痛が軽いため意識すると跛行しない。
突進性歩行

パーキンソン病

一度歩き始めると、止まれなくなる異常歩行。

その他「小刻み歩行」「小歩」「すくみ足」もパーキンソン病の特徴。

 

上記の他、以下などがある。

  • 痙直型脳性麻痺で生じる「はさみ脚歩行(内転筋の痙性による股関節の内転、左右交互性の不良による骨盤の回旋を特徴とする歩行)。

 

 

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異常歩行を理解するためには、その前提条件として「正常歩行」について理解する必要がある。

以下の記事では、そんな正常歩行についてまとめている。

 

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