表示順効果・位置効果とは?メニューの並びが患者対応・治療院経営を変える理由

行動経済学・認知バイアス

あなたは最近、何かを「自分で選んだ」と感じた場面がありますか?

  • レストランでメニューを見たとき、上のほうに書いてある料理が自然と目に入ったことはないでしょうか。
  • あるいは病院の問診票で、最初のほうに並んでいる症状からチェックしてしまったことはないでしょうか。
  • または、整体院や鍼灸院のホームページを見たとき、目立つ場所にあるコースを「これが標準なのかな」と感じたことがあるかもしれません。

 

私たちは、自分の好みや必要性だけで選んでいると思いがちです。しかし実際には、選択肢の中身だけでなく、並び順・位置・見せ方にも影響を受けています。

 

巷では、この現象を「メニュー依存性Menu Dependence」として説明さえることがあります。ですが、ここは少し注意が必要です。

 

学術的な意味での menu dependence は、単に「メニュー表の並び順で選択が変わる」という意味だけではありません。もっと広く、どの選択肢が一緒に並んでいるかによって、人の好みや選択が変わることを指す場合があります。

 

そのためこの記事では、より分かりやすく、そして正確に、表示順効果位置効果選択アーキテクチャという視点から解説します。

 

簡単にいうと、この記事のテーマは「選択肢の並べ方によって、人の選び方が変わること」です。

💡 ポイント

人は、選択肢の内容だけでなく、「どの順番で見せられたか」「どこに置かれていたか」「どれが目立っていたか」にも影響されます。これは、学生の勉強、問診票、施術メニュー、料金表、ホームページ、患者説明などに関係します。

 

ただし、この知識は患者を誘導したり、思い通りに動かしたりするためのものではありません。

 

患者が情報を理解しやすくなり、自分に合った選択をしやすくなるように、説明や選択肢の見せ方を整えるための知識です。

 

目次

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定義:「並び順」と「位置」が選び方を変える

 

表示順効果・位置効果とは以下を指します。

 

同じ選択肢であっても、どこに置かれるか、どの順番で見せられるかによって、人の選び方が変わること。

 

たとえば、次の2つのメニューを見てください。

 

パターンA

  1. 鶏のから揚げ定食 850円
  2. 焼き魚定食 800円
  3. 豚の生姜焼き定食 900円

 

パターンB

  1. 焼き魚定食 800円
  2. 豚の生姜焼き定食 900円
  3. 鶏のから揚げ定食 850円

 

料理の内容も価格も同じです。

しかし、「鶏のから揚げ定食」が最初にある場合と最後にある場合では、目に入るタイミングや印象が変わります。

 

人は、じっくり考えて選んでいるようでいて、実は「最初に見えたもの」「目立つ場所にあるもの」「比較しやすいもの」に影響されることがあります。

 

つまり、選択は中身だけで決まるのではなく、見せ方にも左右されるのです。

🔑 補足

この記事では分かりやすく「メニューの並び方による影響」と説明します。ただし、正確には「表示順効果」「位置効果」「中央配置効果」「選択アーキテクチャ」など、いくつかの考え方が重なったテーマです。

「メニュー依存性」とは少し意味が違います

 

「メニュー依存性」という言葉だけを見ると、飲食店のメニュー表や、治療院の施術メニューの並び順を想像しやすいと思います。

 

しかし、学術的な menu dependence は、単に「表示される順番」のことだけを指すわけではありません。

 

たとえば、AとBの2つから選ぶときはAを選ぶ人が、A・B・Cの3つから選ぶとBを選ぶようになる場合があります。

 

このように、どの選択肢が一緒に並んでいるかによって選び方が変わることも、menu dependence として扱われることがあります。

 

そのため、この記事では「メニュー依存性」という言葉を、単純に「並び順の効果」と同じ意味では使いません。

 

用語 意味 この記事での扱い
メニュー依存性 選択肢の組み合わせによって選び方が変わること 並び順効果と同じ意味にはしない
表示順効果 見せる順番が判断に影響すること この記事の中心テーマ
位置効果 先頭・末尾・中央など、置かれた位置が選択に影響すること この記事の中心テーマ
選択アーキテクチャ 選択肢の見せ方や環境の設計全体 臨床・経営への応用で扱う

 

表示順効果・位置効果を理解するうえで重要な研究

 

このテーマには、「この実験がすべての始まりです」と言えるような、たった一つの研究があるわけではありません。

 

ここでは、選択肢の並び順・位置・見せ方が判断に影響することを理解するうえで、特に関係の深い研究を紹介します。

 

レストランメニューの位置と注文率の研究

 

Dayan & Bar-Hillel(2011年)は、レストランのメニューで、料理の掲載位置を変えると注文率が変わるのかを調べました。

 

研究では、メニューの中で料理が「先頭」「中央」「末尾」などに置かれた場合を比べています。

 

その結果、カテゴリー内の先頭または末尾に置かれた料理は、中央に置かれた料理よりも選ばれやすい傾向が示されました。

🔑 研究のポイント

ここで大切なのは、「先頭だけが必ず強い」という話ではないことです。

正確には、「先頭または末尾にあるものが、中央より選ばれやすくなることがある」と理解するほうが安全です。

 

この研究は飲食店のメニューを扱ったものですが、治療院の施術メニュー、症状一覧、問診票、ホームページの導線設計を考えるときにも参考になります。

 

ただし、すべての場面で同じ結果になるとは限りません。

実際の反応を見ながら、少しずつ調整することが大切です。

 

 

中央に置かれたものが選ばれやすい中央ステージ効果

 

Rodway, Schepman, & Lambert(2012年)は、複数の選択肢を横一列や縦一列に並べたとき、中央にあるものが選ばれやすいかを調べました。

 

その結果、参加者は中央に置かれたものを選びやすい傾向を示しました。

これは中央ステージ効果(Center-stage Effect)と呼ばれます。

🔑 補足注意

中央に置かれた選択肢は、「無難」「標準」「おすすめ」に見えやすいことがあります。ただし、中央だから必ず選ばれるわけではありません。あくまで「そういう傾向がある」と考えるのが適切です。

 

たとえば、治療院で「短時間コース・標準コース・しっかりコース」を横に並べた場合、真ん中の標準コースが「この院の基本コースなのかな」と見られる可能性があります。

 

これは患者にとって分かりやすい反面、意図せず特定のコースを強く見せてしまう可能性もあります。

 

選択肢の組み合わせが判断を変える妥協効果

 

Simonson(1989年)は、選択肢の組み合わせや比較のされ方によって、人の選び方が変わることを研究しました。

 

特に有名なのが、妥協効果です。

 

妥協効果とは、極端な選択肢を避けて、真ん中くらいの選択肢を選びやすくなる傾向のことです。

 

たとえば、施術メニューに「30分・60分・90分」が並んでいると、60分が「ちょうどよさそう」と感じられやすくなることがあります。

🔑 研究の位置づけ

Simonsonの研究は、「表示順そのもの」の研究ではありません。正確には、選択肢の組み合わせや比較のされ方が判断を変える研究です。そのため、この記事では「並び順の直接研究」ではなく、「選択肢の見せ方が判断を変える関連研究」として紹介しています。

 

この考え方は、学生の教材選び、施術メニューの作り方、患者への選択肢提示などに応用できます。

 

ただし、患者に高いコースを選ばせるために使うのではありません。患者が自分に合う選択肢を比較しやすくするために使うことが大切です。

 

 

アンケートや問診票では、質問の順番も影響することがある

 

Schuman & Presser(1981年)は、アンケート調査において、質問の順番や言い方が回答に影響することを整理した古典的な研究で知られています。

 

たとえば、ある質問を先にすると、その内容が頭に残り、次の質問への答え方が変わることがあります。

 

これは、問診票や患者アンケートを作るときにも無視できない考え方です。

💡 臨床への接続

問診票で「腰痛」「肩こり」「頭痛」などが最初に並んでいると、患者はそれらを「この院が重視している症状」と受け取る可能性があります。一方で、後ろにある項目は見落とされやすくなる場合もあります。

 

ただし、医療領域のすべての質問票で、順番の影響が大きく出るわけではありません。

 

患者報告アウトカム、つまり患者自身が症状や生活の困りごとを回答する評価では、順番の影響が大きくなかった研究もあります。

 

そのため、「順番は必ず大きく効く」と決めつけるのではなく、影響する可能性があるので注意して設計するという理解が適切です。

 

 

日常生活を例にした分かりやすい具体例

 

コンビニの棚で、目の高さの商品を選びやすい

 

コンビニでお茶を買うとき、冷蔵棚のちょうど目の高さにある商品が自然と目に入ることがあります。

 

上の段や下の段にも似た商品があるのに、正面にある商品を手に取りやすいことがあります。

 

これは、その商品が必ず一番良いからではありません。

見つけやすい場所に置かれているから、選びやすくなっているのです。

💡 ポイント

人は、「よく見えたもの」「探す手間が少ないもの」「自然に目に入ったもの」を選びやすくなります。これは、施術メニューやホームページの設計でも同じです。

 

旅行プランで真ん中を選びやすい

 

旅行代理店のパンフレットで、「エコノミー・スタンダード・プレミアム」という3つのプランが並んでいるとします。

 

このとき、多くの人は「スタンダードが無難そう」と感じやすくなります。

 

一番安いプランは物足りなさそうに見え、一番高いプランは贅沢すぎるように見える。

その間にあるプランが、ちょうどよく感じられるのです。

 

施術メニューでも同じことが起こります。「短時間・標準・しっかり」の3つが並ぶと、中央の標準コースは自然に選ばれやすくなる可能性があります。

 

 

スマホの設定画面では、上にある項目を選びやすい

 

スマートフォンの設定画面では、上にある項目ほど早く目に入ります。

 

多くの人は、画面を最後までじっくり読まず、最初に見えた項目から判断します。

 

これは予約フォームや問い合わせフォームでも同じです。

 

最初の質問が分かりにくいと、利用者はそこで面倒に感じて離脱しやすくなります。

 

逆に、最初に答えやすい質問を置くと、最後まで進みやすくなる可能性があります。

 

 

学生の勉強・実技練習への応用例

 

教科書の順番に、勉強時間が引っ張られる

 

学生は、教科書の第1章から順番に勉強しがちです。

 

もちろん、最初から順番に読むこと自体は悪いことではありません。

ただし、国家試験対策では注意が必要です。

 

たとえば、教科書の前半にある分野ばかり丁寧に勉強して、後半にある関係法規や臨床医学の復習が後回しになることがあります。

 

これは、教科書の並び順に学習量が引っ張られている状態です。

💡 学習のポイント

目次の順番だけで勉強するのではなく、出題頻度・苦手度・臨床での重要度を見ながら、優先順位を決めることが大切です。並び順に任せず、自分で学習メニューを作りましょう。

 

実技練習でも同じです。

 

授業で最初に習った手技ばかり練習し、後半に習った評価法や説明技術が弱くなることがあります。

 

臨床では、手技だけでなく、評価・説明・安全確認も大切です。学習の順番が偏っていないか、定期的に見直してみましょう。

 

 

チェックリストは、後半が雑になりやすい

 

実技練習でチェックリストを使うとき、上から順番に確認していると、後半の項目が雑になることがあります。

 

たとえば、姿勢観察のチェックリストで、頭部・肩・骨盤までは丁寧に見るのに、足部や歩行時の変化は流してしまうことがあります。

 

これは、チェックリストの後ろの項目ほど注意が落ちやすいからです。

実践的なOK例

練習のたびにチェックリストの開始位置を変える、苦手項目を上に移動する、後半項目だけを集中的に練習するなど、並び順に学習が固定されない工夫が有効です。

 

国家試験では、選択肢の位置に惑わされない

 

国家試験では、選択肢の内容を正確に読む必要があります。

 

しかし、焦っていると「最初に見た選択肢」「見慣れた言葉」「なんとなく中央にある選択肢」に引っ張られることがあります。

 

対策としては、選択肢を上から流し読みするだけでなく、一つずつ根拠を確認する習慣が大切です。

 

「何となくこれが正しそう」ではなく、「なぜ正しいのか」「なぜ他は違うのか」を説明できるようにしましょう。

 

 

臨床・患者対応への応用例

 

問診票の順番は、患者の振り返り方に影響することがあります

 

問診票は、ただ情報を書いてもらうための紙ではありません。

 

質問の順番や、症状の並べ方によって、患者が自分の状態をどう思い出すかが変わる可能性があります。

 

たとえば、症状チェックリストに「腰痛・肩こり・頭痛・しびれ・不眠・疲労感」と並べたとします。

 

この場合、患者は最初のほうにある腰痛や肩こりなどの身体症状を中心に考えやすくなるかもしれません。

 

一方で、不眠や疲労感などの全身状態は、後ろにあることで見落とされやすくなる可能性があります。

実践的なOK例

「痛みの部位」「日常生活で困る動作」「睡眠・疲労・ストレス」「既往歴・服薬」など、テーマごとに分けて問診票を作ると、患者が自分の状態を整理しやすくなります。

 

大切なのは、患者を誘導することではありません。

 

患者が自分の状態を思い出しやすくなるように、情報の入口を整えることです。

 

 

自由記述欄を残すことで、誘導を減らす

 

チェックリストは便利ですが、選択肢にない症状は書かれにくくなることがあります。

 

たとえば、チェックリストに「腰痛」「肩こり」「頭痛」しかなければ、患者はそれ以外の不調を書きにくく感じるかもしれません。

 

そのため、問診票には「その他、気になることがあれば自由にお書きください」という自由記述欄を入れることが大切です。

⚠️ 注意点

問診票に症状名をたくさん並べすぎると、患者が「これも当てはまるかも」と不安になる場合があります。必要な情報を得るための設計は大切ですが、不安をあおる表現や、誘導が強すぎる選択肢は避けましょう。

 

施術後の説明は、伝える順番で印象が変わります

 

施術後の説明では、何をどの順番で伝えるかが、患者の受け取り方に影響します。

 

次の2つの伝え方を比べてみましょう。

  • 「腰の動きは良くなっています。ただ、足の張りはまだ少し残っています。」
  • 「足の張りはまだ少し残っています。ただ、腰の動きは良くなっています。」

 

内容はほぼ同じです。

 

しかし、最初に何を伝えるか、最後に何を伝えるかで、患者の印象は変わります。

実践的なOK例

患者説明では、「今日よくなった点」→「まだ残っている課題」→「次回までに意識してほしいこと」の順で伝えると、患者が前向きに状況を理解しやすくなります。

 

ただし、改善を大げさに伝えてはいけません。

 

事実に基づいて、良くなった点と、まだ残っている課題をバランスよく伝えることが大切です。

 

 

治療院開業・経営への応用例

 

施術メニューの並び方は、比較のしやすさを左右します

 

整体院・鍼灸院・治療院のホームページでは、施術メニューをどの順番で見せるかが重要です。

 

たとえば、次のように並べたとします。

  1. 短時間コース
  2. 標準コース
  3. しっかり改善コース

 

この場合、中央の標準コースは「基本」「無難」「多くの人に合いそう」と受け取られやすくなります。

 

一方で、最初に置かれた短時間コースは、価格や手軽さが目に入りやすくなります。

経営活用例

院として最も説明したい基本コースがある場合は、そのコースを見つけやすい位置に置きましょう。そのうえで、「どんな人に向いているか」「何が含まれるか」「他のコースと何が違うか」を分かりやすく書くことが大切です。

 

ただし、「高いコースを選ばせるため」に並び順を操作する考え方は避けるべきです。

 

目的は、患者が自分に合った選択をしやすくなるように、比較しやすく整えることです。

 

 

症状一覧の先頭は、院の強みとして見られやすい

 

ホームページの「対応症状一覧」に、次のような項目が並んでいるとします。

 

腰痛・肩こり・頭痛・坐骨神経痛・膝痛・産後の不調・スポーツ障害

 

この場合、患者は先頭にある「腰痛・肩こり」を、その院の代表的な対応分野だと感じやすいかもしれません。

 

もし実際の強みが「産後ケア」や「スポーツ障害」であれば、それらを後ろに置いたままだと、院の専門性が伝わりにくくなります。

経営活用例

症状一覧は、ただ多く並べればよいわけではありません。院の専門性、患者の検索意図、来てほしい患者層を考え、重要な項目を見つけやすい位置に置きましょう。

 

予約フォームは、最初の質問を簡単にする

 

予約フォームや問い合わせフォームでは、最初の質問が難しいと、途中で離脱されやすくなります。

 

いきなり「詳しい症状の経過を入力してください」と求めると、患者は面倒に感じるかもしれません。

 

それよりも、「希望日時」「お名前」「お困りの症状を選択してください」など、答えやすい項目から始めるほうが、心理的な負担は小さくなります。

経営活用例

フォームの前半には答えやすい質問を置き、詳しい悩みや補足情報は後半や自由記述に回すと、患者が最後まで入力しやすくなる可能性があります。ただし、安全確認に必要な情報は省略しないようにしましょう。

 

料金提示では「比較しやすさ」を優先する

 

料金表では、価格だけを並べるよりも、それぞれの違いが分かるようにしたほうが患者は選びやすくなります。

 

たとえば、次のように価格だけを並べるとします。

 

  • 30分 4,000円
  • 60分 7,000円
  • 90分 10,000円

 

これだけでは、患者は「自分はどれを選べばよいのか」が分かりにくい場合があります。

 

一方で、「短時間の相談向け」「初回・標準的な症状向け」「複数部位を相談したい方向け」といった説明があると、患者は自分に合う選択肢を選びやすくなります。

⚠️ 注意点

料金提示で大切なのは、患者を高額メニューへ誘導することではありません。料金・時間・内容・向いている人を明確にし、納得して選べる状態を作ることです。

 

施術家が活用するときの注意点

 

患者を操作するために使わない

 

表示順効果や位置効果を知ると、「どこに置けば選ばれやすいか」という視点が生まれます。

 

しかし、それを患者を操作するために使ってはいけません。

 

施術家が意識すべきなのは、患者が情報を理解しやすく、自分に合った選択をしやすい環境を整えることです。

⚠️ 倫理的な警告

「この並びにすれば高いコースを選ぶだろう」ではなく、「この並びなら患者が違いを理解しやすいだろう」という発想で使うことが大切です。

 

不安をあおって来院や継続を促さない

 

症状一覧や問診票の並び方によって、患者が自分の不調に気づきやすくなることがあります。

 

しかし、過度に不安をあおる表現は避けるべきです。

 

たとえば、「この症状がある人は危険」「放置すると大変なことになる」といった表現で来院を促すのは、患者の冷静な判断を妨げます。

⚠️ 注意点

患者教育は、不安を増やすためではなく、理解を助けるために行います。必要な受診勧奨や医療機関への紹介は大切ですが、恐怖を利用した集客とは分けて考えましょう。

 

治療効果と、説明の分かりやすさを混同しない

 

表示順や説明の工夫によって、患者が理解しやすくなったり、予約しやすくなったりする可能性はあります。

 

しかし、それは施術そのものの治療効果とは別の話です。

 

分かりやすい説明は大切ですが、「説明の順番を変えれば症状が改善する」といった表現は不適切です。

🔑 補足注意

表示順効果・位置効果は、あくまで意思決定や理解を助けるための知識です。治療効果、施術技術、医学的判断とは分けて考える必要があります。

 

効果の大きさは、現場で確認する

 

メニュー設計や表示順の研究では、研究室の実験では効果が見られても、実際の購買や現場では効果が小さくなることがあります。

 

治療院経営でも同じです。

 

ホームページの並び順を変えたからといって、必ず予約数が増えるわけではありません。

実践的なOK例

予約率、問い合わせ率、フォーム離脱率、初回説明後の納得度などを確認しながら、小さく改善していくことが大切です。実際の反応を見て、少しずつ調整しましょう。

 

よくある誤解

 

誤解:メニュー依存性とは、メニュー表の並び順だけのこと

これは誤解です。

学術的な menu dependence は、選択肢の組み合わせによって選び方が変わることを指す場合があります。

飲食店や治療院のメニュー表だけに限定される言葉ではありません。

この記事で扱っているのは、より具体的には「表示順効果」「位置効果」「選択肢の見せ方の影響」です。

 

誤解:先頭に置けば必ず選ばれる

これも誤解です。

先頭や末尾に置かれたものが選ばれやすくなる研究はありますが、常に先頭が有利とは限りません。

選択肢の内容、価格、患者の関心、画面の見え方、比較のしやすさによって結果は変わります。

 

誤解:中央に置けば必ず標準コースとして選ばれる

中央に置かれた選択肢が選ばれやすい傾向はあります。

しかし、中央に置くだけで選択が決まるわけではありません。

患者は、料金、施術時間、悩みの深さ、信頼感、説明の分かりやすさなど、複数の要素で判断します。

中央に置くことは、あくまで補助的な要素の一つです。

 

誤解:治療院経営に使えば売上が必ず上がる

表示順や位置の工夫は、患者が選択肢を理解しやすくする助けになります。

しかし、それだけで売上や継続率が必ず上がるわけではありません。

患者対応、施術の質、説明の誠実さ、予約のしやすさ、院内体験、口コミなど、経営成果には多くの要因が関係します。

⚠️ 誤解を避けるための補足

行動科学の知識は、患者を思い通りに動かす魔法ではありません。患者が理解しやすく、納得して選びやすい環境を整えるための考え方です。

 

まとめ:「何を並べるか」と同じくらい「どう並べるか」が大切です

 

表示順効果・位置効果を一言でまとめるなら、人は選択肢の中身だけでなく、その並び順・位置・見せ方にも影響されるということです。

 

学生であれば、教科書やチェックリストの順番に学習が引っ張られていないかを見直してみてください。

 

目次の順番だけでなく、出題頻度・苦手度・臨床での重要度から学習計画を組むことが大切です。

 

臨床では、問診票や説明の順番が患者の理解に影響する可能性があります。

 

情報をただ並べるのではなく、患者が自分の状態を整理しやすい順番に整える視点が役立ちます。

 

治療院経営では、施術メニュー、料金表、症状一覧、予約フォーム、ホームページの構成など、さまざまな場面で「どの順番で見せるか」が関係します。

 

ただし、その目的は患者を誘導することではありません。患者が比較しやすく、納得して選べる状態を作ることです。

💡 最後のポイント

明日からできる第一歩は、自分の問診票・施術メニュー・ホームページを見直し、「この並び順は患者にとって分かりやすいか?」と確認することです。小さな順番の見直しが、患者の理解と安心感を支えるきっかけになります。

 

参考文献一覧

 

  1. Dayan, E., & Bar-Hillel, M. (2011). Nudge to nobesity II: Menu positions influence food orders . Judgment and Decision Making, 6(4), 333–342. DOI: 10.1017/S1930297500001947。 何を確認できる資料か:レストランメニューの掲載位置が注文率に与える影響、特に先頭または末尾が中央より選ばれやすい傾向を確認できる資料です。
  2. Rodway, P., Schepman, A., & Lambert, J. (2012). Preferring the one in the middle: Further evidence for the centre-stage effect . Applied Cognitive Psychology, 26(2), 215–222. DOI: 10.1002/acp.1812。 何を確認できる資料か:中央に配置された選択肢が選ばれやすい中央ステージ効果について確認できる資料です。
  3. Simonson, I. (1989). Choice based on reasons: The case of attraction and compromise effects . Journal of Consumer Research, 16(2), 158–174. DOI: 10.1086/209205。 何を確認できる資料か:選択肢の構成や文脈が判断に影響する妥協効果・魅力効果について確認できる資料です。
  4. Schuman, H., & Presser, S. (1981). Questions and Answers in Attitude Surveys: Experiments on Question Form, Wording, and Context . Academic Press. 何を確認できる資料か:質問順序、回答選択肢、設問文の違いがアンケート回答に与える影響を確認できる資料です。
  5. Novotny, P. J., Dueck, A. C., Satele, D., Frost, M. H., Beebe, T. J., Yost, K. J., Lee, M. K., Eton, D. T., Yount, S., Cella, D., Mendoza, T. R., Cleeland, C. S., Blinder, V., Basch, E., & Sloan, J. A. (2022). Effects of patient-reported outcome assessment order . Clinical Trials, 19(3), 307–315. DOI: 10.1177/17407745211073788。 何を確認できる資料か:医療領域の患者報告アウトカムにおいて、評価順の影響が常に大きいとは限らないことを確認できる資料です。
  6. Ip, M. M. H., & Chark, R. (2023). The effect of menu design on consumer behavior: A meta-analysis . International Journal of Hospitality Management, 108, 103353. DOI: 10.1016/j.ijhm.2022.103353。 何を確認できる資料か:メニュー設計が消費者行動に与える影響をメタ分析で整理し、実購入への効果は限定的な場合があることを確認できる資料です。
  7. Tipoe, E., Adams, A., & Crawford, I. (2022). Revealed preference analysis and bounded rationality . Oxford Economic Papers, 74(2), 313–332. DOI: 10.1093/oep/gpab018。 何を確認できる資料か:古典的な顕示選好分析が安定・整合的選好を仮定していること、また行動モデルでは menu dependence を含む文脈依存的選択が検討されていることを確認できる資料です。
  8. Thaler, R. H., & Sunstein, C. R. (2008). Nudge: Improving Decisions about Health, Wealth, and Happiness . Yale University Press. 何を確認できる資料か:選択アーキテクチャやナッジの基本的な考え方を確認できる代表的な書籍です。

 

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⇒『行動経済学用語119選|治療院経営に使える認知バイアス大全

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