ある日、患者さんに施術結果や今後の見通しを説明する場面を想像してみてください。
たとえば、説明のための仮の例として、次の二つの言い方があったとします。
- 「この施術を受けても、症状が改善しないケースが20%あります」
- 「この施術を受けた方の80%が、症状の改善を実感しています」
数字としては、どちらも同じ割合を表しています。
しかし、患者さんが受ける印象はかなり変わる可能性があります。
前者は「改善しないかもしれない」という不安に目が向きやすく、後者は「改善する可能性がある」という前向きな印象を持ちやすくなります。
フレーミング効果とは、同じ内容や事実であっても、それをどのような「枠組み(フレーム)」で伝えるかによって、人の受け取り方や判断が変わる現象です。
ただし、実際のホームページや広告で「80%が改善」などの数字を使う場合は注意が必要です。
その数字が本当に自院のデータなのか、何人を対象にしたのか、どの期間で調べたのか、どのように確認したのかを説明できる状態で使わなければなりません。
根拠のない数字を使ってしまうと、フレーミング効果の活用ではなく、患者さんに誤解を与える表現になってしまいます。
施術家として患者さんに何かを説明するとき、症状の状態を伝えるとき、通院頻度や料金を説明するとき、私たちは常に言葉を選んでいます。
その言葉の選び方、つまり「フレーム」の作り方は、患者さんの安心感、納得感、意思決定に影響することがあります。
今回は、フレーミング効果の基本から、学生の勉強、臨床での患者対応、治療院経営や集客への活かし方まで、できるだけ分かりやすく解説していきます。
目次
フレーミング効果とは何か
フレーミング効果(Framing Effect)とは、同じ情報であっても、どのような見せ方・伝え方をするかによって、人の評価や判断が変わる現象です。
簡単に言うと、「中身は同じでも、言い方によって印象が変わる」ということです。
ここでいう「フレーム」とは、情報を見るときの枠組みや視点のことです。
人は情報そのものだけを見て判断しているわけではありません。
「何が強調されているか」「どの順番で説明されているか」「得する話として伝えられているか、損する話として伝えられているか」によって、受け取り方が変わります。
たとえば同じ検査結果でも、「大きな問題はありません」と言われるのと、「少し気になる点があります」と言われるのでは、患者さんの気持ちは違ってきます。
どちらも事実に基づいていたとしても、言葉の枠組みが変わることで、不安になることもあれば、安心して前向きに取り組めることもあります。
フレーミング効果には、いくつか代表的なパターンがあります。
① 肯定的フレームと否定的フレーム
同じ事実を「得られるもの」として伝えるか、「失うもの」として伝えるかで印象が変わります。
たとえば、先ほどの例でいうと、次の二つは同じ割合を表しています。
- 「改善しないケースが20%あります」
- 「80%が改善を実感しています」
前者は「失敗」「不安」「リスク」に目が向きやすい言い方です。
後者は「改善」「期待」「前向きさ」に目が向きやすい言い方です。
行動経済学では、人は利益よりも損失に強く反応しやすい傾向があるとされています。
これは、プロスペクト理論で説明される「損失回避」とも関係します。
ただし、「不安を強調すれば必ず行動してもらえる」という単純な話ではありません。
フレームの効果は、状況や相手の性格、説明される内容によって変わります。
そのため、臨床では患者さんを怖がらせるためではなく、理解しやすくするために使うことが大切です。
② 強調点の違いによるフレーム
同じ商品やサービスでも、「どこを強調するか」で印象は変わります。
有名な研究では、同じひき肉を次のように表示した場合で、受け手の評価が変わることが示されています。
- 「脂肪分25%」
- 「赤身75%」
どちらも同じ成分比率を表しています。
しかし、「脂肪分25%」と言われると脂肪に目が向き、「赤身75%」と言われると赤身の多さに目が向きます。
その結果、同じ商品でも「赤身75%」と表示された方が、良い印象を持たれやすくなります。
「脂肪分20%含有」と「脂肪分80%カット」は同じ意味ではありません。「80%カット」は、何か基準になる商品と比べて80%減らしたという意味になるため、「20%含有」とは自動的に一致しません。食品表示や広告表現では、このような違いに注意が必要です。
治療院でも同じです。
「痛みを取る施術」と伝えるのか、「日常生活を楽にするための施術」と伝えるのかで、患者さんが受け取る印象は変わります。
どちらが正しいという話ではなく、何を強調するかによって、相手が注目するポイントが変わるということです。
③ 言葉そのものがフレームになる
同じ状態を説明するときでも、使う言葉によって患者さんの受け止め方は変わります。
たとえば、次の二つの言い方を比べてみてください。
- 「骨盤が歪んでいます」
- 「骨盤まわりに左右差が少し見られます。一緒に整えていきましょう」
前者は、患者さんによっては「自分の体は大きく壊れているのでは」と不安になるかもしれません。
後者は、現状を伝えながらも、これから一緒に改善していける印象を与えやすい表現です。
フレーミング効果を臨床に活かすとは、患者さんをうまく誘導することではありません。
患者さんが自分の状態を理解し、納得して、前向きに判断できるように言葉を整えることです。
フレーミング効果を明らかにした有名な実験・研究
① カーネマンとトヴェルスキーの「アジア病問題」(1981年)
フレーミング効果を有名にした代表的な研究が、心理学者のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)とエイモス・トヴェルスキー(Amos Tversky)による1981年の研究です。
この研究は、意思決定の研究ではとても有名で、フレーミング効果を説明するときによく紹介されます。
実験では、「600人が死亡すると予測される珍しい感染症が流行している」という架空の状況が示されました。
そのうえで、参加者に二つの対策プログラムのどちらを選ぶかを考えてもらいました。
【利得フレームでの提示】
- プログラムA:200人が確実に助かる
- プログラムB:3分の1の確率で全員が助かるが、3分の2の確率で誰も助からない
この条件では、参加者の約72%が「確実に200人を救える」プログラムAを選びました。
【損失フレームでの提示】
- プログラムC:400人が確実に死亡する
- プログラムD:3分の1の確率で誰も死なないが、3分の2の確率で全員が死亡する
この条件では、参加者の約78%が「不確実でもリスクを取る」プログラムDを選びました。
プログラムA/C、B/Dは、期待値の上では同じ内容として説明されることが多い選択肢です。しかし、「助かる人数」として伝えるか、「亡くなる人数」として伝えるかによって、人々の選択が大きく変わりました。つまり、人は数字だけで冷静に判断しているのではなく、情報の見せ方にも影響を受けているということです。
ただし、近年では「本当に完全に同じ意味として受け取られているのか」について議論もあります。
たとえば、「200人が助かる」という表現は、人によっては「少なくとも200人が助かる」と受け取る可能性があります。
そのため、この記事では「完全に同じ内容」と断定せず、「期待値の上では同じと説明されることが多い」という表現にしています。
② マクニールらによる医療分野のフレーミング研究(1982年)
フレーミング効果は、医療の意思決定でも確認されています。
マクニール(McNeil)らは1982年に、外来患者238人、大学院生491人、医師424人を対象に、肺がん治療の選択に関する研究を行いました。
内容は、手術と放射線治療のどちらを選ぶかというものです。
ここで重要なのは、同じ治療成績でも、次のように伝え方を変えた点です。
- 「手術後1ヶ月の生存率90%」
- 「手術後1ヶ月の死亡率10%」
数字としては同じ情報を含んでいます。
しかし、「死亡率」として示された場合には、手術の印象が悪くなり、放射線治療を選ぶ人が増えました。
研究全体では、生存率フレームでは18%が放射線治療を選んだのに対し、死亡率フレームでは47%が放射線治療を選んだと報告されています。
この研究で大切なのは、専門家である医師もフレーミング効果の影響を受けうるという点です。患者さんだけでなく、説明する側の専門職も、言葉の枠組みに影響される可能性があります。だからこそ、臨床では「正確さ」と「伝わりやすさ」の両方が大切になります。
施術家が患者さんに説明するときも、同じことが言えます。
「どの言い方が患者さんにとって理解しやすいか」「不必要に怖がらせていないか」「選択に必要な情報をきちんと伝えているか」を考えることが重要です。
③ レビンとゲイスによる属性フレーミング研究(1988年)
アイオワ大学のアーウィン・レビン(Irwin P. Levin)とゲイリー・ゲイス(Gary J. Gaeth)は、食品の評価においてフレーミング効果がどのように働くかを調べました。
研究では、同じひき肉を次の二つの表現で示しました。
- 脂肪分25%
- 赤身75%
どちらも同じ成分比率を表しています。
しかし、「赤身75%」と書かれた肉の方が、より好意的に評価される傾向がありました。
さらに面白いのは、実際に肉を食べた後では、この表示による影響が弱まったことです。
つまり、言葉の印象は大切ですが、実際の体験がその印象を上書きすることもあるということです。
これは治療院にも当てはまります。
ホームページの言葉やコース説明は、来院前の印象づくりに役立ちます。
しかし、最終的に患者さんの判断に大きく関わるのは、実際の施術体験、説明の分かりやすさ、対応の誠実さです。
言葉だけで良く見せるのではなく、実際の体験と一致した表現を使うことが大切です。
日常生活で感じるフレーミング効果
例① スーパーの食品表示
スーパーで食品を選ぶとき、次の二つの表示を見たら、どちらが魅力的に感じるでしょうか。
- 「カロリー30%オフ」
- 「通常品の70%のカロリー」
どちらも、通常品と比べるとほぼ同じ情報を伝えています。
しかし、「30%オフ」と言われると、減った分に目が向きます。
一方で、「70%のカロリー」と言われると、まだ残っているカロリーに目が向くかもしれません。
このように、同じ数字でも、何を強調するかによって印象は変わります。
例② 天気予報の伝え方
週末の天気予報で「降水確率40%」と聞いたとします。
ある人は「雨が降らない確率が60%もある」と前向きに受け取るかもしれません。
別の人は「4割も雨が降る可能性がある」と不安に感じるかもしれません。
さらに、気象キャスターが「週末は傘が手放せないでしょう」と言うのか、「晴れ間も期待できます」と言うのかでも、受ける印象は変わります。
数字は同じでも、言葉のフレームが、感情や準備行動に影響することがあります。
施術家・学生・治療院経営者への応用
【臨床・患者対応】症状説明のフレームが患者さんの受け止め方を左右する
臨床の現場でフレーミング効果が関係しやすいのが、症状の説明です。
同じ検査所見や施術の見立てを伝える場合でも、どのような言葉で伝えるかによって、患者さんの不安や納得感は変わります。
「骨盤がかなり歪んでいます。このままでは腰だけでなく、膝や足首にも影響が出てくるかもしれません。放置すると大変なことになります」
「骨盤まわりの左右差が少し見られます。この部分を整えていくと、立ち仕事での疲れ方が変わってくる可能性があります。一緒に状態を見ながら進めていきましょう」
どちらも、身体の状態について説明しようとしている点では同じです。
しかし、フレームAは患者さんの不安を強める可能性があります。
もちろん、重大なリスクがある場合には、正直に伝える必要があります。
ただし、必要以上に怖がらせる表現は、患者さんを「怖いから通う」という状態にしてしまうことがあります。
一方、フレームBは、現状を伝えながらも「これから一緒に良くしていける」という方向に目を向けやすい表現です。
患者さんの自律的な判断を支えるためには、恐怖ではなく、理解と納得を助ける言葉を選ぶことが大切です。
【臨床・患者対応】セルフケアの指導をより伝わる言葉にする
セルフケアの指導でも、フレームの違いは関係します。
たとえば、同じストレッチを説明する場合でも、次の二つでは印象が変わります。
- 「姿勢が悪いと将来困りますから、毎日ストレッチをしてください」
- 「このストレッチを続けると、椅子から立ち上がる時の『よっこいしょ』が減ってくるかもしれません」
前者は「やらないと困る」という不安や義務のフレームです。
後者は「できるようになると嬉しいこと」に目を向けるフレームです。
患者さんの生活の中にある「変わったら嬉しい瞬間」を言葉にすると、セルフケアの意味が伝わりやすくなります。
ただし、セルフケアを続けられるかどうかは、言い方だけで決まるわけではありません。
痛みの程度、生活環境、時間の余裕、理解度、家族の協力、施術者との信頼関係など、さまざまな要因が関係します。
フレーミングは、あくまで行動を支える一つの工夫として考えるのが現実的です。
【治療院経営・集客】ホームページとSNSのコピーに使えるフレーム設計
治療院のホームページやSNSを見た人は、短い時間でそのページの印象を判断します。
そこで関係するのが、言葉のフレームです。
たとえば、同じように体の悩みを持つ人へ向けた言葉でも、次の二つでは印象が違います。
- 「痛みで悩む方へ」:問題に焦点を当てたフレーム
- 「日常を取り戻したい方へ」:望む生活に焦点を当てたフレーム
「痛みで悩む方へ」は、今のつらさに目を向ける言葉です。一方で「日常を取り戻したい方へ」は、患者さんが本当に望んでいる生活に目を向ける言葉です。どちらが合うかはページの目的によりますが、患者さんの気持ちに寄り添う表現を選ぶことが大切です。
予約キャンセルに関する説明でも、フレームを工夫できます。
「キャンセル料が発生します」とだけ書くと、罰則の印象が強くなります。
一方で、「早めにご連絡いただけると、その枠を別の患者様にご案内できます」と添えると、患者さんの行動を「ルール違反を避けるため」ではなく、「他の人への配慮」として伝えられます。
もちろん、キャンセル料のルール自体は明確にしておく必要があります。
大切なのは、ルールを隠すことではなく、なぜそのルールがあるのかを分かりやすく伝えることです。
【治療院経営】料金・コース案内のフレーム
料金の改定は、患者さんにとって「損をする情報」として受け取られやすいものです。
しかし、伝え方を工夫することで、同じ価格変更でも受け止め方が変わることがあります。
「〇月より料金が改定されます」
「〇月より施術時間を延長し、施術後のセルフケア指導も充実させた新プランへ移行いたします」
後者は、価格が変わることだけでなく、患者さんが受け取れる内容にも目を向けてもらう言い方です。
料金を見直すときは、「なぜ変更するのか」「何が変わるのか」「患者さんにとってどのような意味があるのか」を丁寧に伝えることが大切です。
ただし、実際には内容が変わっていないのに、価値が増えたように見せる表現は避けるべきです。
フレーミングは、事実を分かりやすく伝えるための工夫であり、実際以上によく見せるための道具ではありません。
【学生の勉強】国試対策でもフレームを使う
フレーミング効果は、学生の勉強にも活かせます。
同じ結果でも、どのように受け取るかによって、その後の行動が変わるからです。
たとえば、模試で正答率が60%だったとします。
- 「40%も間違えた」と考える
- 「60%は正解できている。残り40%の課題が見えた」と考える
前者は、焦りや自己否定につながりやすいフレームです。
後者は、次に何をすればよいかを考えやすいフレームです。
苦手科目も、「自分はこの科目が苦手だ」とだけ考えるとつらくなります。一方で、「まだ伸びしろが大きい科目だ」と捉えると、少し向き合いやすくなります。言い換えるだけで魔法のように成績が伸びるわけではありませんが、勉強を始める心理的なハードルは下がりやすくなります。
試験勉強では、前向きなフレームだけでなく、課題を見つけるフレームも必要です。
「できているところ」を確認することも大切ですし、「抜けているところ」を見つけることも大切です。
フレームを意識すると、必要以上に落ち込まず、かといって現実から目をそらさない学習計画を立てやすくなります。
施術家がフレーミング効果を使うときの大切な視点
フレーミング効果を知ると、「言葉を工夫すれば患者さんを動かせる」と考えてしまうかもしれません。
しかし、施術家として大切なのは、患者さんを操作することではありません。
患者さんが自分の体の状態を理解し、納得して、主体的に選べるように支えることです。
① 事実を曲げない
フレームは、「同じ事実をどう伝えるか」の問題です。
事実そのものを変えたり、実際より大きく見せたりすることではありません。
たとえば、本当に調査していないのに「90%の患者さんが満足」と書くのは、フレーミングではなく誤解を招く表現です。
施術家としての信頼は、長期的には正直な説明の積み重ねで作られます。
② 患者さんの不安を不当に煽らない
「このまま放置すると大変なことになりますよ」という言葉は、患者さんの不安を強く刺激します。本当に必要な注意喚起であれば伝えるべきですが、不安をあおって通院を促すような使い方は避けるべきです。患者さんが怖いから通うのではなく、理解して納得したうえで選べる説明が大切です。
恐怖を使った説明は、短期的には行動につながることがあるかもしれません。
しかし、長い目で見ると、患者さんとの信頼関係を損なう可能性があります。
施術家にとって大切なのは、患者さんを不安にさせることではなく、安心して判断できる材料を渡すことです。
③ 患者さんの選択を支援するフレームを選ぶ
フレーミング効果を活用する目的は、患者さんが自分にとって良い選択をしやすくなるよう支援することです。
施術者にとって都合の良い選択へ誘導することではありません。
たとえば、回数券や継続プランを提案する場合も、まず考えるべきことは「この患者さんに本当に必要か」です。
必要だと考えられる場合に、その理由やメリット、注意点を分かりやすく説明する。
この順番が大切です。
④ 自分自身のフレームも疑ってみる
フレーミング効果は、患者さんだけに起こるものではありません。
施術家自身も、自分に都合のよい見方をしてしまうことがあります。
たとえば、改善した症例ばかりが印象に残り、「自分の施術はかなり効果がある」と感じることがあります。
一方で、改善しにくかった症例や、説明がうまく伝わらなかった症例は、記憶に残りにくいこともあります。
これは、フレーミング効果だけでなく、利用可能性バイアスや確証バイアスとも関係します。
カルテや記録を振り返るときには、「良くなったケース」だけでなく、「うまくいかなかったケース」も見ることが大切です。
そうすることで、自分に都合のよいフレームだけで臨床を見てしまうリスクを減らせます。
まとめ
フレーミング効果とは、「同じ事実でも、言葉の枠組みが変われば受け取り方が変わる」という現象です。
カーネマンとトヴェルスキーが1981年に示したこの現象は、医療、教育、ビジネスなど、さまざまな場面に関係します。
そして、私たち施術家の日常的な会話の中にも、無意識のうちに入り込んでいます。
学生のうちから、「自分は今、どんなフレームで考えているのか」を意識することは、国試勉強にも臨床にも役立ちます。
「40%も間違えた」と落ち込むのではなく、「40%の課題が見つかった」と捉える。
「この科目は苦手」と決めつけるのではなく、「まだ伸ばせる余地が大きい」と考える。
このような見方の違いが、勉強に向かう気持ちを少し変えてくれます。
施術家として患者さんと関わるときも、「何を言うか」と同じくらい、「どう言うか」が大切です。
身体の状態を伝えるときに、患者さんが不安だけを感じる言葉を選ぶのか、現状を理解しながら前向きに取り組める言葉を選ぶのか。
その違いは、患者さんの施術体験や信頼関係に影響します。
ただし、フレーミング効果は万能ではありません。
言葉を変えれば必ず継続率が上がる、必ず口コミが増える、必ず売上が上がるというものではありません。
大切なのは、患者さんを操作することではなく、理解と納得を助ける言葉を選ぶことです。
今日、自分はどんなフレームで患者さんに話しかけているかを振り返ってみましょう。「怖がらせる言い方になっていないか」「患者さんが主体的に選べる言い方になっているか」を一日の終わりに確認するだけでも、言葉の使い方は少しずつ変わっていきます。
参考文献
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1981). The framing of decisions and the psychology of choice. Science, 211(4481), 453–458.
確認できる資料:フレーミング効果の代表研究であるアジア病問題について確認できる資料です。利得フレームと損失フレームによって選択が変わる実験結果を確認できます。 - Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect theory: An analysis of decision under risk. Econometrica, 47(2), 263–291.
確認できる資料:プロスペクト理論の原典論文です。損失回避、参照点、リスク下の意思決定など、フレーミング効果の背景理解に関係する理論を確認できます。 - McNeil, B. J., Pauker, S. G., Sox, H. C., & Tversky, A. (1982). On the elicitation of preferences for alternative therapies. New England Journal of Medicine, 306(21), 1259–1262.
確認できる資料:肺がん治療において、生存率フレームと死亡率フレームの違いが、患者・学生・医師の治療選択に影響したことを確認できる医療意思決定研究です。 - Levin, I. P., & Gaeth, G. J. (1988). How consumers are affected by the framing of attribute information before and after consuming the product. Journal of Consumer Research, 15(3), 374–378.
確認できる資料:同じひき肉を「脂肪分25%」または「赤身75%」と表示した場合に、評価が変わる属性フレーミング研究を確認できます。実際に試食した後に効果が弱まる点も確認できます。 - Kahneman, D. (2011). Thinking, Fast and Slow. Farrar, Straus and Giroux.
確認できる資料:カーネマンによる一般向けの代表的著作です。プロスペクト理論、損失回避、ヒューリスティック、認知バイアスなどを幅広く確認できます。 - Entman, R. M. (1993). Framing: Toward clarification of a fractured paradigm. Journal of Communication, 43(4), 51–58.
確認できる資料:コミュニケーション研究におけるフレーミング概念の整理を確認できる資料です。行動経済学のフレーミング効果と、メディア・言説におけるフレーミングの違いを理解する補助資料になります。 - O’Keefe, D. J., & Jensen, J. D. (2007). The relative persuasiveness of gain-framed and loss-framed messages for encouraging disease prevention behaviors: A meta-analytic review. Journal of Health Communication, 12(7), 623–644.
確認できる資料:健康行動における利得フレーム・損失フレームの説得効果を検討したメタ分析です。健康メッセージの効果が文脈によって変わることを確認できます。 - Gallagher, K. M., & Updegraff, J. A. (2012). Health message framing effects on attitudes, intentions, and behavior: A meta-analytic review. Annals of Behavioral Medicine, 43(1), 101–116.
確認できる資料:健康メッセージのフレーミングが態度・意図・行動に与える影響を検討したメタ分析です。フレーミング効果を臨床や患者説明に応用するとき、効果を過度に一般化しないための根拠として確認できます。 - Mandel, D. R. (2014). Do framing effects reveal irrational choice?. Journal of Experimental Psychology: General, 143(3), 1185–1198.
確認できる資料:アジア病問題などのフレーミング効果を、自然言語の解釈や語用論の観点から批判的に検討した資料です。「完全に同じ内容」と断定しすぎないための補足根拠として確認できます。
関連記事
以下の記事では、「行動経済学・行動科学・認知バイアス」でよく使われる用語を119選まとめて紹介しています。
リンク先からは、この記事のような個別用語の解説ページにも移動できます。
さまざまな用語に触れながら、臨床や治療院経営への落とし込みを考えてみてください。
