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「急性腰痛に温熱療法を適用する」って物理療法分かってないよね ⇒ 間違い

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稀に、少し物理療法の知識をかじっている人で以下のようなコメントをする人がいる。

 

「急性腰痛に温熱療法してる」って物理療法分かってないよね

 

しかし、このように断言すること自体、その人が物理療法を分かっていない証拠と言える。

 

目次

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一般的に急性外傷・急性症状には寒冷療法が推奨される

 

一般的に急性外傷、急性症状に対しては寒冷療法が推奨される。

 

例えば以下などはイメージしやすいのではないだろうか?

  • 足関節捻挫が生じた際にアイシングをする
  • テニス試合の直後に、痛くなった外側上顆付近の軟部組織をコールドスプレーなどで冷やしてあげる

 

「RISE」という用語もある

 

教科書レベルでも、急性外傷に対する「RISE」は以下の略であり、この点からも「急性外傷=寒冷療法」はイメージしやすい。

  • R⇒「Rest」(安静)
  • I⇒「Icing」(冷却)
  • C⇒「Compression」(圧迫)
  • E⇒「Elevation」(挙上―持ち上げておく)

 

受傷直後に患部を冷却することにより、組織の血管は収縮し腫れや炎症反応が抑制される。

また、冷却により痛みを認知する神経線維の伝導速度が遅延し、筋肉の異常な緊張や発痛物質の発生が抑制される。

 

急性外傷時の温熱療法

 

では、温熱療法はどうだろう。

炎症により発痛物質が大量に生じている段階において温熱療法を施行することは、一般的に推奨されていない。

 

 

腰痛における温熱療法

 

前述したように、一般的には「急性外傷・急性疼痛には寒冷療法が適応(逆に、温熱療法は非適応、っというかエビデンスが無い)」という認識でOKだ。

 

では(ぎっくり腰などの)急性腰痛はどうだろう?

 

腰痛に対しては「急性期でも温熱療法も適用となるケースがある」というのが正解だ。

 

温熱療法

・推奨グレードA

・エビデンスレベル

浅部の温熱療法は,急性ならびに亜急性の腰痛の軽減に有効であることがシステマティックレビューによって示されている 。また,Therma Care Heat Wrap を使った低温温熱療法は,急性の腰痛を軽減し,機能障害スコア(RDQ)。一方で,持続的な表在温熱療法とテキストによる運動指導の組み合わせは身体機能スコア(MTAP)の向上に効果的であるが,表在熱単独の効果は不明であり ,見解は一致していない。

背部痛理学療法ガイドライン P67より引用

 

一方で、寒冷療法についてのエビデンスは以下の通り。

寒冷療法

推奨グレードD

エビデンスレベル

寒冷療法は,急性の軟部組織損傷に対して運動療法と組み合わせることで効果があるとする報告 と,急性,亜急性の腰痛に対する寒冷療法の効果についてはエビデンスが不十分であるとする報告 1) があり,見解は一致していない。

背部痛理学療法ガイドライン P67より引用

 

どうやら「急性腰痛における寒冷療法・温熱療法」は、他の急性痛への解釈と分けて考えたほうが良いようだ。

 

この記事を作成しようと思った理由

 

この記事を作成しようと思った理由は、整形外科クリニックの同僚PTから以下のような質問を受けたため。

 

当院では、医師からから腰痛急性期でも普通に温熱療法の指示が出る。物理療法について理解が不十分なのではないか?

 

そういう質問を受けたため、ここで記載している内容を伝えてあげた次第である。

 

もちろん、温熱療法により疼痛悪化が生じる患者もいるため、初回物理療法時はアシスタントさんに任せっぱなしにするのではなく「万が一、痛みが悪化するようであればすぐに中止するので声をかけて」と一言添えてあげることが望ましい。

 

また、既に急性腰痛後に数日経過しているのであれば「入浴時に少しでも腰痛が緩和するか」と問診してあげるのも良いだろう。

 

意外と「(悪化せず、逆に)少し楽になる」と答える人も少なくない。

 

いわゆる「急性外傷・急性疼痛発症時の温熱・寒冷の解釈」は必ずしも腰痛に当てはまらない点は知っておいて損は無い。

 

 

余談:牽引療法のエビデンス

 

余談として腰痛・頚部痛における牽引療法の推奨グレード・エビデンスレベルも記載しておく。

 

頚部痛に関しては以下の通り。

「頚部痛」に対する牽引療法

推奨グレードD

エビデンスレベル

機械的牽引の効果を検証したシステマティックレビューにおいて,間歇牽引は急性もしくは慢性の頚部障害や根症状を伴う頚部障害,ならびに退行性変化に対して疼痛を軽減する効果が示され,一方,持続牽引については疼痛の軽減効果がないことが示されている 。また,頚椎牽引が頚背部痛に対して有効または他の治療法に比べても有効であることを示すエビデンスは不十分であり,有効でないとも言い切れない 。

背部痛理学療法ガイドライン P71より引用

 

腰痛に関しては以下の通り。

「腰痛」に対する牽引療法

推奨グレードD

エビデンスレベル

急性から慢性の腰痛において,持続または間歇牽引,短期または長期の施行期間の違いによって,症状改善度,特異的腰痛評価(ODI),復職に対する効果には全く差異がなく,さらには牽引単独が他の治療と比較して効果的であるともいえず,従来の理学療法に牽引を追加してもその効果に違いがないことが示されている。

背部痛理学療法ガイドライン P71より引用

未だに「腰痛・頚部痛に対する物理療法」の項目に牽引療法の記述がある教本もある。

しかし実際は、「推奨グレードD(無効性や害を示す科学的根拠がある)」であり、そのエビデンスレベルは「1(システマティック・レビュー/RCT のメタアナリシス)」と高い。

 

※ちなみに、現在勤務している整形外科クリニックでは牽引療法器具は置いていない。

 

※ちなみに「セラピストが徒手的に牽引して、症状の即自的変化を評価すること」は、「頚部症状・腰部症状(に関連する四肢症状も含めて)を改善するための臨床推論」を展開する上で重要となってくる。

 

推奨グレード・エビデンスレベルの解釈

 

参考として、この記事における推奨グレード・エビデンスレベルの解釈は以下の通り。

引用:背部痛 理学療法ガイドライン

 

「理学療法介入の推奨グレード分類」の解釈は以下の通り。

推奨グレード 内容
A 行うように勧められる強い科学的根拠がある
B 行うように勧められる科学的根拠がある
C1 行うように勧められる科学的根拠がない
C2 行わないように勧められる科学的根拠がない
D 無効性や害を示す科学的根拠がある

 

理学療法介入のエビデンスレベル分類の解釈は以下の通り。

エビデンスレベル 内容
1 システマティック・レビュー/RCT のメタアナリシス
2 1 つ以上のランダム化比較試験による
3 非ランダム化比較試験による
4a 分析疫学的研究(コホート研究)
4b 分析疫学的研究(症例対照研究,横断研究)
5 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
6 患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見

 

RCTやランダム化比較試験・コホート研究・横断研究などは、あん摩マッサージ指圧の1学年で学ぶ「衛生・公衆衛生」の授業で学ぶので、それと照らし合わせてみると、これらキーワードの知識も定着しやすいかもしれない。

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