正常歩行を整理しよう!!【国試対策】

専門用語(国試関連)
正常歩行を整理しよう!!【国試対策】

この記事では、正常歩行に関する解説をしている。

 

歩行の専門用語

 

歩行は連続した動作であり、歩行観察は歩行の機能単位、すなわち歩行周期(gait cycle)に着目して行われる。

 

歩行周期とは一方の足が地面についてから、再び同じ足が地面につくまでの期間で、以下に分けられる。

  • 立脚期(stance period)
  • 遊脚期(swing period)

 

通常の歩行(walking)では立脚期がその約60%、遊脚期が約40%を占める。

 

また、立脚期は両側の足が地面についている両脚支持(double limb support)と、片方の足だけが地面についている単脚支持(single limb support)からなり、立脚期60%の中で、最初と最後の10%前後が両脚支持となる。

 

両脚支持の時間は歩行速度が速くなればなるほど短くなり、それが0%となってどちらも足の地面についていない状態が生じたときから、歩行を走行(running)と呼ぶ。

 

 

正常歩行パターンの特徴

 

歩行障害を見分けるためには、まず正常な歩行パターンをしっかり理解することが必要である。

 

そのためには、正常歩行パターン時の各歩行周期相における床反力ベクトルと各関節の位置関係を歩行周期に沿って理解し、そのときに働く筋肉を知ることが重要である。

 

以下、正常歩行パターン時の変化を歩行各周期に沿って記載ていく。

 

立脚相

 

床接地

  • 健常者では通常、床接地は踵から行われる。
  • その時股関節は屈曲した位置にあり、また膝関節は最大伸展位、足関節は中間位にある。
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  • 床反力ベクトルは股関節の前方を通り、股関節を屈曲させる方向に働くため、これに寄港するように股関節伸展筋群(大殿筋とハムストリングス)が股関節安定のために収縮する。
  •  
  • また、床反力ベクトルは膝関節に対しては膝関節モーメントを発生させるが、ハムストリングスの働きがそれを打ち消す。
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  • 足部には底屈モーメントが働くが、足部背屈筋群(前脛骨筋など)により中間位の保持される。

 

荷重応答期

荷重応答期の役割は、前方への推進力を維持しながら、かつ接地後の衝撃を吸収することである。

 

股関節は伸展を続け、それは立脚後期まで維持される。股関節伸展筋は床反力ベクトルに対して収縮する。

 

膝関節モーメントも発生しているが、これに対しては大腿四頭筋が遠心性収縮をしながら打ち消している。

 

また、足部については底屈モーメントが発生し軽度底屈位になる。この動きは足部背屈筋群による遠心性収縮により制御されている。

 

立脚中期

立脚中期相は対側の下肢が前方に振り出されているときであり、単脚で全体重を支えている。

 

床反力べトルは股関節軸上を通り、股関節伸筋群の収縮は消失する。

 

膝関節については、床反力のベクトルが後方から前方を通るように変わり、大腿四頭筋の収縮はそれに伴い消失する。膝関節は伸展するが、それは膝関節包後方と靭帯により受動的に制御され、さらに下腿三頭筋(の腓腹筋)の遠心性収縮によっても制御される。

 

足関節においては外的足背屈モーメントが発生するが、足部底屈筋群(下腿三頭筋など)によって打ち消される。

 

立脚後期

体幹部は、立脚後期相ではあたかも転倒するかのように支持脚を越えて前方に進み続ける。

 

股関節の伸展モーメントは腸骨大腿靭帯によって受動的に打ち消される。この時、股関節は最大伸展位にある。

 

膝関節については、床反力ベクトルは前方からわずかに後方を通る位置に変化している。

 

踵が地面から離れるときに足関節は最大背屈位となり、その後足関節背屈モーメントが生じるが、足関節底屈筋群の収縮により制御される。この期間通、足関節は底屈し続ける。

 

前遊脚期

前遊脚相の目的は、下肢を前方へ振り出すことで、このとき対側下肢は床接地相および荷重応答相にある。

 

股関節はこの時最大伸展位から屈曲し始め、その後遊脚相全般にわたって屈曲し続ける。股関節屈筋群(腸腰筋・大腿直筋の共同収縮)は求心性に収縮する。

 

床反力が膝関節の後ろを通るため、膝関節には屈曲モーメントが生じるが、これは大腿四頭筋の収縮により制御される。すなわち大腿四頭筋(の大腿直筋)は股関節に対しては求心性収縮により作用すると同時に、膝関節に対しては遠心性収縮により作用する。

 

足関節については、最大底屈位となるまで、底屈筋群が求心性に収縮し続ける。

 

 

遊脚相

 

遊脚前期

この相で重要なことは、下肢を持続して前方へ振り出すことである。

 

股関節は前遊脚相で屈曲モーメントが働いていたことと、股関節屈筋群の求心性収縮が続いているため屈曲を続ける。遊脚前期では、主に股関節の求心性収縮によって振り出しが加速される。

 

膝関節は最大屈曲位まで屈曲し続ける。この屈曲は前遊脚相に生じた股関節屈曲と振り出しにより受動的に生じている。

 

足関節では、足部を背屈させるように足関節背屈筋群が求心性に収縮している。

 

遊脚中期

遊脚中期相では、下肢は引き続いて前方に振り出されているが、それは前遊脚相と遊脚前期相に生じた力による振り子運動である。

 

この時期では遊脚前期相で生じた推進力の結果として、受動的であるが股関節は屈曲し続ける。

 

膝関節は重力により受動的に伸展され始める。

 

足関節は足関節背屈筋群を収縮させ続けながら中間位を保つ。

 

遊脚後期

遊脚後期相では、次に来る床接地に備えて十分な安定性を確保するために、それまでの推進力を制御する必要がある。

 

股関節と膝関節においてはハムストリングスの強力な遠心性収縮が股関節を運動を減速させ、膝関節伸展を制御する。従って、股関節は最大屈曲した後に伸展し始めて床接地へ移行する。

 

足関節背屈筋群は床接地時に足関節を中間位に保てるように引き続いて活動している。

 

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