朝日新聞2019年12月14日に以下のタイトルな記事が掲載された。
~視覚障害の生計保護・職業選択の自由~
視覚障害がある、あん摩マッサージ指圧師の生計が脅かされないため、障害のない人が資格を取るための学校設立は認めない。
こんなルールを定めた半世紀以上前の法律は「職業選択の自由」を保証する法律に違反するのかが東京地裁で争われており、16日に判決が言い渡される。
16日 地裁判決が出る!
提訴したのは学校法人 平成医療学園(大阪市)。
2016年、運営する横浜医療専門学校で視覚障害者がいないマッサージ師の国家資格を取るためのコース新設を国に申請したが認められず、この処分取り消しを求めている。
国が認めなかった根拠は「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などに関する法律(あはき師法)だ。東京五輪が開かれた1964年(昭和39円)の法改正で、国は視覚障害者のマッサージ師の生計の維持が著しく困難とならないよう、当分の間は、視覚障害者以外の人の学校設立を制限できる」とした。
はり師、きゅう師に同様の制限はない。
平成医療学園は、この制限が資格を取りたいと養成コースを作りたい学校側の「職業選択の自由」を制限していると指摘。法改正から55年経過し、障碍者雇用促進法などの法整備が進んで視覚障害者を取り巻く雇用環境が当時と大きく変わっていると主張している。
裁判結果は?⇒学校敗訴:マッサージ学校の新設制限は合憲
で、16日の再判決は「マッサージ学校の新設制限が合憲」となり、平成医療学園が敗訴した。
国は今でも視覚障害者としてマッサージ師は大きな役割を占めていると考えているようだ。
そして地裁は判決でも、「基本的には国の裁量を尊重せざるを得ない」と指摘している。
今回の判例は喜ばしいこと。が・・・・
今回の判決に関して、柔道整復師・鍼師・きゅう師などと同様に「学校が乱立する流れ」が抑制されたことは喜ばしいこと。
一方で、すでに『治療を目的としない「ほぐし」「リラクゼーション」「いやし」「コンディショニング」という用語を用いて健康増進事業に参入している会社は多い。
『治療を目的としない』のであれば無資格者でも(表現は違えど、あん摩間マッサージ指圧師と類似しな行為ができる)というのは判例が出てしまっているので「学校乱立を抑制できれば視覚障害者(やアマシ師)が安泰というわけでは全くないだろう。
※ 例えば、(開業権を持たない)理学療法士も堂々と「整体」とう名目のもと(実費による)類似行為をしている者は多い。
なので、結局「実費治療で勝負していこうと思った場合」は、彼らが今後も競合相手であり続けることには変わりない。
訪問マッサージはどうだろう
では、マッサージ師の特権である「訪問マッサージ(医療保険を用いた施術の一つ)」はどうだろう。
今回の判決後の会見で、訴えを起こした平成医療学園の岸野雅方理事長は以下のように述べている(神奈川県WEB NEWS)
社会の状況は大きく変化しているのに、50年以上前にできた法律がまったく見直されず、判決は視覚障害者の生計の維持だけにとらわれていて、残念でならない。
専門学校に通う学生の中には、資格を取った上で、運動療法やリハビリなど高度な治療に貢献したいと考えている学生もたくさんいる。学生の将来を閉ざすことがないようにしてほしい。
で、控訴する考えを明らかにしたらしい。
気になったのは「運動療法やリハビリなどの治療に貢献したいと考えている学生もたくさんいる」という発言。
こんなのを学びたくて入学する人いるのかな?
「マッサージ師学校へ入学する時点」において、このような発想を持っているのは少数派だろう。
※もしマジで考えているとすると、入学する場所を間違えている。
ちなみに15日、訪問リハビリ関連の研修会に(訪問マッサージの現状や内情が知りたくて)参加してきた。
マッサージ師が学ぶ「手技」よりも「対象者に合わせた基本的動作能力の誘導・介助方法」や「関節可動域訓練・運動療法・動作訓練」など、どちらかというとリハビリ色の強い技術を学ぶ研修会内容だった(実技パートに関しては)。
この研修会には、就職を目的とする3年生や2年生の「鍼灸あん摩マッサージ指圧師の学生」が中心となって参加していたが、どの学生も「こんな講習会は学校では教えてもらえない」と感動している様子だった。
しかし、マッサージ師の学校は『あん摩マッサージ指圧を学ぶ学校』なので、こんな内容学ばなくて当然だろうし、学ぶ必要もないだろう。
この研修を主催した企業は「現状の訪問マッサージでは慰安目的のマッサージ施術が横行しているが、国が本来の訪問マッサージに求めているのは医療的マッサージ・運動療法・機能訓練である」と力説していた。
っとなると、「訪問マッサージ」と「訪問リハビリ」は何が違うのかが分からなくなってしまう。
なので「既に存在する訪問リハビリと何が違うのか?」と主催者側に疑問をぶつけたが、私が納得するだけの返答は得られなかった(「理学療法士・作業療法士らは頻回に訪問できないので、我々がそれをアシストしているのだ」など、ピンとこない回答をしていた)。
終わりに
繰り返しになるが、判決に関して、柔道整復師・鍼灸師・理学療法士などと同様に「学校が乱立する流れ」が抑制されたことは喜ばしいこと。
しかし『実費治療を展開する』にしても、『マッサージ指圧師のメリットである医療保険を活用する』にしても、競合相手が多いのは事実。
この点は認識しておいても損はない(今回の判決でハッピー ハッピーで終わらせるだけでなく、各々で将来について考えを巡らせておいて損はない)。