東洋医学の『病理と病証』総まとめ

東洋医学

この記事では、病理と病床について記載していく。

 

目次

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八綱病証

 

八綱とは陰・陽・表・裏・寒・熱・虚・実の8種類を指す。

 

病証は、弁証とも言い患者の状態が今どのような状態にあるのかを弁別あるいは識別することである。

 

四診により得られた情報を陰・陽・表・裏・寒・熱・虚・実を基本として総合的に分析し、病変部位(表裏)と性質(寒熱)、疾病過程における正気と邪気の盛衰(虚実)などの状況を解明するのが八綱病証である。

 

陰陽は、他の六綱を統括し、表・熱・実は陽に、裏・寒・虚は陰に統括される。

  • 病位の深浅(病位)⇒表証・裏証
  • 疾病の性質(病情)⇒熱証・寒証
  • 正邪の盛衰(病勢)⇒実証・虚証

 

 

病位の違いでとらえる(表裏)

 

外邪が体表部から体内へ(表→裏)と侵襲した際、その位置するところによって病態が異なる。表証、裏証、半表半裏証に分類される。

 

表証:

身体再浅の部位。皮膚・皮下表層や四肢、頭部、肩背部を指し、この部位に病が存在する時で、外感病の初期である。

  • 発熱:六淫の邪気が皮毛、肌表に影響し、衛気が正常にめぐらなくなり、それが鬱することにより発熱が起こる。
  • 悪寒:衛気が肌表に行き渡らず、肌表が正常な温煦を得られないために起こる。
  • 頭痛・項強・腰背痛・四肢関節痛:邪気が鬱滞して、気血の流れが悪くなることにより起こる。
  • 脈浮:外邪が肌表・腠理を侵襲することで衛気が外邪と抗争するために起こると考えられる。

 

裏証:

身体最深の部い。腸管他隣接臓器類を指し、この部位に病が存在する時で、発病後一定の経過を経て現れるもの。

  • 悪熱:発熱して熱を嫌がること。邪気が裏に入って熱に化けるか、裏に熱が溜まってしまった場合に起こる。寒気はない。
  • 口渇:熱が血に入ったために起こる。
  • 腹部症状:邪気が裏に入ったため様々な腹部症状が起こる。
  • 舌苔厚:邪気が強い場合にみられる。
  • 脈沈:邪気が裏にあり、気血を内に閉じ込めてしまったときにあらわれる。

 

半表半裏証:

表裏の中間位で、横隔膜に隣接する臓器類のある部位を指す。病が表位を過ぎて、裏に達していない時にあらわれる。

  • 往来寒熱(寒熱往来):「寒」は悪寒・寒気を指し、「熱」は発熱を指す。「往来」は交替するという意味で、悪寒と発熱が交互に出現する症状である。外邪を感受し、正気と邪気が半表半裏で抗争することのより起こる。この場合、邪気はそれほど盛んではないが、正気もそれほど強くない。そのため邪気は裏には入れず、正気も邪を表に駆逐できず、勝敗を決定できないために起こる。
  • 胸脇苦満:「苦」とは「のびやかでない」という意味。「胸脇苦満」とは、胸脇部が腸満して塞がりのびやかでない症状をいう。両脇部には少陽胆経と厥陰肝経が分布するため、肝胆経の気機が失調した時にあらわれる。腹診では、肋骨弓の下縁に指を入れようとしても苦満感や圧痛があって入らないものをいう。
  • 口苦:肝胆の病証であらわれる。
  • 脈弦:肝胆の病証で、脈気の緊張によってあらわれる。邪気が肝に滞って疏泄機能が失調し、気機が不利になると、脈気が緊張してあらわれる。

 

 

疾病の性質によってとらえる(寒熱)

 

寒熱は、身体の陰陽の平衡状態を反映したものである。

陰盛あるいは陽虚は寒としてあらわれ、陽盛あるいは陰虚は熱としてあらわれる。

 

寒証:

自覚的には冷える感じ、他覚的には冷たく感じるもの。

気不足により身体を正常に温煦できなくなると、寒がり温まるのを好む。四肢が冷える・顔面蒼白などがあらわれやすい。寒邪により脾の運化機能が低下すると下痢、陽虚により水液を温められないと小便の色は澄んで、量は多くなる。

脈遅:寒邪または陽気不足により血の運行が遅滞してあらわれる。

 

熱証:

自覚的には熱感があるもの、他覚的には熱い感じのもの。

熱邪や陽盛陰虚のため症状は熱を帯びるものが主である。熱が盛んとなって津液を損傷すると口渇や大便秘結、小便が赤濁し量が少なくなるなどの症状が現れ、熱は上に昇りやすいので顔や目が赤くなる症状が現れる。

煩燥:もだえ苦しむこと。熱が心神に影響すると起こる。

脈数:心の鼓動が加速され、血行も速くなるためあらわれる。

 

 

3)正邪の盛衰によってもらえる(虚実)

 

虚実は、正邪の盛衰の状態をみる。

正気不足であれば虚証としてあらわれ、邪気が盛んであれば実証としてあらわれる。

 

虚証:

正気が虚弱なためにあらわれる病理的な状態を総称したもの。

邪気に対する正気の抵抗力が低下しているため、正邪の間に激しい闘争はみられない。また、虚証は陰・陽・気・血・津液・臓腑のそれぞれ異なった虚損の状態を包括しており、以下の言い方をする。

陰が虚損→陰虚

陽が虚損→陽虚

気が虚損→気虚

血が虚損→血虚

虚証体質:骨肉がすんなりしてか細く、胃腸が弱く、無力的、筋肉に弾力性がない、呼吸や五声が弱い、喜按

 

実証:

生命力が旺盛で、急性病などにみられる邪気が充実している状態。正気も旺盛で抵抗力も強いので、正邪の闘争が激しい。

停滞による病証に多くみられる。

気が停滞→気滞

血の停滞→瘀血(血瘀)

津液が停滞→痰飲

実証体質:骨肉がしっかりしている、胃腸が丈夫、筋肉に弾力性がある、呼吸や語勢があらい、拒按

 

 

4)陰陽

 

陰陽は、八綱を統括する。病理の性質に基づいて、すべての疾病を陰陽に分類し、鑑別することができる。

 

陰証:

生体反応が沈滞、減弱している病情。裏証、寒証、虚証が含まれる。

顔面蒼白、言葉が少ない、気分が沈鬱して活気がないなど。

 

陽証:

生体反応が発揚、増強している病情。表証、熱証、実証が含まれる。

顔面紅潮、言葉が多い、活気があるなど。

 

陰陽の偏盛によって生じる寒熱証

陰陽の偏盛によって生じる熱証および寒証は、どちらも実証(実熱証・実寒証)である。

 

  陽の偏盛(実熱証) 陰の偏盛(実寒証)
病機 陽気の偏盛は、生体機能を異常亢進させ、熱証を生じる。 陰気の偏盛は、生体機能を抑制し、寒証を生じる。
症状

・壮熱(高熱が出て、寒気はない)

・顔色の紅潮

・目赤

・寒気

・手足の冷え

・顔色は青白い

 

陰陽の偏衰によって生じる寒熱証

陰陽の偏衰によって生じる寒証および熱証は、どちらも虚証(虚寒証・虚熱証)である。

 

  陽の偏衰(虚寒証・陽虚証) 陰の偏衰(実寒証・陰虚証)
病機 陽気が欠乏し生体の各機能が減退し、寒症状があらわれる。気も虚している。 陰の欠乏により、陽気が優位になり生体機能が亢進し熱症状があらわれる。
症状

・寒さを嫌う

・手足の冷え

・下痢、小便の量が多い

潮熱(一定の時間になると発熱する、特に夜間)

・五心煩熱(胸中の煩熱、掌心・足底の熱感)

・盗汗(寝汗)・口渇・舌質紅

 

 

気・血・津液の病理と病証

 

気血津液は、人体を構成する基本物質であり、臓腑、器官、組織などが生理的な活動を行うための基礎である。したがって、疾病により気血津液に変調が生じると、臓腑、器官、組織にも変調が起こり、臓腑、器官、組織に変調が生じると、気血津液に変調が生じる。

 

 気の病理と病証

 

人体の誕生から成長、生理活動は気の活動による。そのため、気に変調を生じると人体にも影響をおよぼす。

 

気の不足(気虚)

気の生成不足と消耗過多、機能減退の病的状態で、気虚になる原因としては先天的に元気が不足、飲食物の摂取が不足して、後天の気が補充されない、心身の過労、房事の不摂生、大病や長期にわたる病気などがある。

症状:

推動作用の低下(精神の萎縮・停滞、倦怠感、無力感、めまい)

防御作用の低下(風邪に罹りやすい、症状が治りにくい)

固摂作用の低下(出血、多汗、多尿、遺精)

脾の機能とくに昇清作用の低下(胃下垂、腎下垂、脱肛、子宮脱などの内臓下垂)

衛気の機能低下(自汗)…腠理の開闔の調節ができず普段何をしていなくても汗をかいている。腠理が開きっぱなし。

衛気のめぐりが悪くなると、自汗や盗汗(寝汗)などの発汗が過度になり体力の消耗を招く。衛気の防御作用が低下すれば、外邪が侵襲しやすくなる。

※原気不足(息切れ)

 

気の停滞(気滞)

気滞とは気の運行(気機)が滞っている病態のことで、主に営気と衛気の運行が失調して起こる。原因は、情志の乱れ、外邪(とくに寒邪、湿邪)の侵襲、飲食物の不摂生、津液や血などによる経絡の流注の阻害、打撲、捻挫などにより引き起こされる。

営気の運行の失調

気血が運行する通路である経絡に外邪が侵襲すると、血とともに脈内をめぐる営気に影響し、経絡に関係する臓腑や器官の機能に障害があらわれる。

寒邪による場合は痛みが発生しやすく、湿邪による場合は痺れや麻痺などの症状が発生する。

 

気の運行の失調

衛気がめぐりすぎると腠理の開闔の調節ができず、発汗が抑制され体温調節がうまくいかず発熱や煩悶(苦しみもだえること)などの症状が生じる。腠理が闔じっぱなし。

 

気の昇降出入の失調(気機の失調)

人体の組織器官は気の昇降出入の運動(気機)により、平衡を維持している。気機が失調すると五臓六腑などに多くの病証を引き起こす。

例)肺の宣発・粛降作用の失調→津液の停滞や気血の停滞→煩悶、咳嗽、痰

脾の昇清作用の失調→食欲不振、下痢、内臓下垂

胃の降濁作用の失調→噫気、呑酸、嘔吐など

 

 

血の病理と病証

 

血は、営気と津液で造られることから、血の病は営気と津液の生成に左右される。血の変調は、心・肝・脾と関係している。

 

血の生成不足と消耗過度による血虚(血虚)

血虚は、栄養不良、脾胃の機能低下による血の生成不足、情動の過度の乱れ、過労や房事過多、慢性病などによりおこる。

症状:

視力減退・目眩(めまい)・立ちくらみ・顔色が白い→血虚のため頭部や目を滋養できなかったり、顔面部の血が不足しておこる。

手足の無力感→血虚のため筋に血がうまく行き渡らないため。

心臓の拍動異常・健忘・不眠→血虚のため、心を滋養できないため。

 

 

血の運行失調(血熱、血寒、血瘀)

 

①血熱は情動の変調や、暑・火の邪気を受けたり、味の濃いものの多食、過度な飲酒などにより血に熱が鬱積して起こる。

症状:発熱、口渇、口苦、便秘などの熱症状。

 

②血寒は寒邪の感受や寒性の飲食物の過度な摂取により起こる。

症状:手足の厥冷などの寒症状。

 

③血瘀は寒性の変調が長引いた場合や、外傷による血の運行失調、打撲や捻挫などによって血の鬱滞(瘀血)を生じて起こる。

瘀血とは体内の血が滞り流れないものをいい、血癖とは癖血により起こる一連の病態のこと。

症状:疼痛、チアノーゼ、腫瘤

疼痛 固定制で刺すような痛み 気血の運行の滞りにより痛みが起こる
チアノーゼ 唇や爪の青紫色 皮膚や粘膜の血行鬱滞のために起こる。
腫瘤 痛みを伴う腫瘤 瘀血が局部に凝縮するため

 

 

 

津液の病理と病証

 

津液の不足

津液の不足には飲食物の摂取不足や不摂生、辛くて熱いものの過度の摂取、情緒不安定、脾胃の機能低下などにより津液の生成不足によるものと、発汗過多、治療の結果による津液の消耗と発散過多によるもの、下痢や頻尿による津液の排泄過多がある。

 

津液の代謝と運行の失調(津液の停滞、痰飲、内湿)

体表部でも体内部でも津液の運行が失調すると水腫(浮腫)が現われる。痰飲とは身体のどこかしらの部位に津液が停滞したことによって発生する病証のことをいう。「痰」は粘稠なもので濁ったもの、「飲」は粘りけがなく澄んだもの。

 

 

臓腑病証(臓腑弁証)

 

臓腑の機能失調は、内因や外因、不内外因などにより気血津液の過不足や、その運行の阻
害、陰陽の失調によって引き起こされる。

その失調は、所属している経脈の気血の状態に影響をあたえ、その経脈上に感覚の異常や、機能の異常など様々な変調を生じさせる。

 

五臓の病証

 

心の病証

復習:

心は神を蔵する→精神活動に関係する。

心は血脈を主る→血を全身にくまなく運行する。

心は舌に開窪する→心に蔵されている神が、思ったこと、考えたことを外に出す時は言語によって表現するため、心は舌と関係する。また、舌は味覚も主るため心と関係する。

 

心の共通症状:

  • 心悸→動悸がして不安を伴う病証心気が虚衰すると、血脈の運行を維持しようとして心の鼓動に過剰な負担がかかるために起こったり、熱症状や血虚症状により心を滋養できなかったり、瘀血により心の鼓動が影響を受けるために起こる。
  • 胸悶→脇部の不快な苦しさ。胸中の宗気の推動機能低下や熱が胸にこもることにより起こる。
  • 不眠・多夢→心が蔵する神の乱れにより起こる。
  • 健忘→今何をしているか分からないなど精神に関わるもの。老化による健忘は、腎の病証。心が蔵する神の乱れにより起こる。
  • 譫語(せんご=うわごと)→筋道のない言葉を話すこと。心が蔵する神の乱れにより起こる。

 

心気虚

先天の不足や情動の失調、慢性病(久病)、老化などにより心気が不足となる虚弱病証である。

症状は、心の症状の他に気虚の症状の、息切れ・自汗・倦怠感がある。

 

心血虚

長期にわたる心気虚(心気虚の重症化)、突然の重い病により心の陽気が不足して起こる虚寒病証である。

症状は心の症状の他に陽虚の症状である四肢の冷え、畏寒、気虚の症状である息切れ・自汗・倦怠感を伴う。

 

曲虚

思慮過度や熱病による血の損傷、出血多量による血の減少、飲食不節などにより血不足のため心が血の栄養を受けられないために起こる。

症状は、心と血虚の症状が現れる。

 

心陰虚

心を滋潤・滋養する作用を持つ心陰が不足し、心の神を主る機能が減退するもの。心陰不足のため心陽が偏盛するので、陰虚症状が出る。

確認!!陰虚の代表的症状を挙げよ!!

 

心火亢進

心火亢進とは、心陽が亢進したもので五志の異常、六淫の邪の熱化、刺激物の過度の摂取、温熱性の漢方薬の長期摂取などが原因となる。多くは、実熱証である。

尿赤:小便が赤くなったり濁ったりするもの。心と表裏関係にある小腸に熱が伝わったために起こる(確認!!小腸と尿の関係を述べよ!!)。

口舌の瘡:心は舌に開竅しているため、熱の状態が舌や口に現れる。

 

心臓の阻滞

瘀血が原因となるため、疼痛は胸部の刺痛が出る。

 

 

肝の病証

復習:

肝は疏泄を主る→「円滑でよどみなく、すみずみまで行き渡らせる。」ことから転じて、気機の調節、脾胃の運化機能の調節、情動の調節などに関与する。

肝は血を蔵する→肝は血の貯蔵庫で、夜、臥床時血が肝に戻る。目が覚め、体を動かすと、血を配分する。(将軍の官)

肝は目に開竅し、筋を主る→肝は目や筋を滋養する。

肝の志は怒→怒りすぎると、肝病を引き起こす。逆に、肝病に罹ると怒りやすくなったり、ビクビクしたりする。「ビクビクする」は、肝と表裏関係の胆の病でもある。

 

肝の共通症状:

  • 易怒→肝の伸びやかにすることを好むという性質が失調するため。
  • 目疾→眼の疾患。証によって目の充血や、目の乾燥などが出る。

 

肝気の鬱滞(肝気鬱血)

肝の疏泄機能が失調し、気のめぐりが鬱滞した状態である。長期間のストレスを受けたり、気分がふさいでいると、気のめぐりが悪くなり精神状態に影響して悪循環を形成しやすい。実証である。

精神抑鬱:肝の疏泄機能は情志を調節しているので、疏泄が失調すると精神抑鬱が生じる。

胸脇苦満:季肋下部に充満感があり、肋骨弓の下縁に指を入れようとしても苦満感や圧痛があって入らないもの。肝胆の病変に多い。

月経異常:女子胞から起こる衝脈、任脈は月経周期や胎児の成育を正常に保つために、気血が正常にめぐっていなければならない。疏泄機能の失調により気のめぐりの悪さと蔵血機能や将軍の官としての機能も失調しているので奇経にも影響をおよぼす。

梅核気:ヒステリー球(咽部神経症)。のどに梅の種が詰まっているかのような異物感があるが、吐こうと思っても吐き出せず、飲み込もうと思っても飲み込めない病証。情緒の不安定によって肝気が鬱血し、気鬱から痕が生じ、痰と気が咽喉で交わり阻滞することによって発症する。

 

肝火の亢進(肝火上炎)

肝の陽気が過剰に亢進して火と化し、この火が経に沿って上逆(上炎)して起こる病症である。実証である。

原因としては、酒やタバコ、辛い物の過度の摂取、激しい怒りにより肝が傷つき生じるものなどがある。

頭痛・目の充血(目赤)・顔面が赤い:肝火が頭部や目に激しく昇るために起こる。

耳鳴り・口苦:肝と表裏関係にある胆に熱が波及するとこの症状が起こる。

心煩・不眠・多夢:肝火が相生関係の心神に飛び火し起こる。

 

肝陰虚

肝陰(肝を滋潤し濡養する作用がある、肝陽に相対する意味で使う)が不足したために、肝の滋養、滋潤作用が低下して起こる虚熱病証。

腎陰は生体の各臓賄・組織器官を滋養・滋潤する作用があるので、腎陰が不足することにより肝陽を抑えることができず、結果として肝陰虚を起こすことがある。

肝病の症状と陰虚症状が出る。

 

肝陽の亢進(肝陽上亢)

肝陰が不足して陰が陽を制御できなくなると、肝陽が亢進する。肝と腎とは源が同じ(きわめて密接な関係)なので、腎陰が不足すると肝陰も不足して肝陽の亢進を引き起こす。陽が亢進を主とした症状が現れるので実証のように見えるが、本質は陰虚である。

症状は、上実下虚(上部で陽気が下部で陰気が盛んになる状態)の症状が現れやすい。

上実:めまい・頭痛・耳鳴り・目の充血:肝腎の陰が不足し、肝陽が亢盛となり起こる。いらいら・怒りっぽい(易怒):肝の伸びやかにすることを好むという性質が失調するため。

下虚:腰や膝がだるくて力が入らない:腎が虚した時の主症である。腎陰虚と肝が主る筋も栄養されにくいため、この症状が出る。陰虚が本質であるので、陰虚症状も出る。例えば五心煩熱・盗汗・(夜間)潮熱・口渇。

 

肝血虚

脾胃虚弱による血の生成不足、過度の出血、慢性疾患による血の消耗が原因となる。各臓腑・組織・器管は肝に蔵されている血に栄養を受けているので、血虚によりその栄養が受けられず全身的な血虚による症状が現れる。

目の乾き・かすみ:肝は目に開窪するため、血虚により蔵血作用が低下することにより起こる。

めまい:血虚のため頭部や目を滋養できない。

不眠・多夢:血虚のため心神にも影響し起こる。

筋肉のひきつり・拘急:筋を栄養できないため。拘急とは痙攣して自由に屈伸ができないこと。四肢のふるえ:筋を栄養できないためと脾胃の機能低下のため。また、次項の内風も関係する。

月経の経血量が少ない・閉経:血が不足し、衝脈・任脈に血が充足しないために起こる。

 

肝風

内風とは、疾病の変化の過程で現れる風証をいう。六淫の外邪と区別するため、内風という。

怒りなどの情志の異常により肝陽が亢進したり、極度の陰虚になったり、血虚による筋への栄養不足などにより起こる。

症状は、めまい、痙攣、振戦、拘急などの動揺現象が出る。

 

 

脾の病証

復習:

運化作用→水穀を消化して、全身に運ぶ元となる。

昇清作用→水穀の精微を胃から上の肺へ送ることと臓腑・器管が下がらないようにつなぎ止めておくこと。③統血作用→営気を脈中に送り、血が脈外へ漏れずに、順調にめぐるようにする働きのこと。

脾は四肢を主る

脾は肌肉を主る。脾の状態は唇に現れる。脾は口に開竅する。

※脾の共通症状:食欲不振、大便の異常

 

脾の共通症状:

  • 食欲不振
  • 大便の異常

 

脾気虚

飲食不節、先天的な虚弱体質、慢性疾患、労倦や情動の失調などが原因となり脾気の機能失調を起こす。表裏関係の胃気にも影響が出たときは脾胃虚弱という。

食欲不振・食後の膨満感:脾気虚弱のために運化機能が低下することにより起こる。

泥状便:形にはならずにドローっとした、ゲル状の便のこと。脾気虚や脾胃虚弱の特徴的症状。

胃下垂・脱肛・子宮脱などの内臓下垂:昇清作用の低下により起こる。

血便・血尿・崩漏(不正性器出血)・鼻血などの出血:統血作用の低下により起こる。気虚症状の息切れ・自汗・倦怠感も出る。

 

脾陽虚

脾気虚が進行して脾陽不足となり起こる虚寒病証である。そのため、気虚症状と冷え症状が出る。便も泥状便より進んだ、未消化物の下痢を起こす。脾陽虚が腎陽に影響したり、逆に腎陽虚から脾陽に影響したときは五更泄潟(夜明け前の下痢・鶏鳴下痢)を起こす。

 

脾陰虚

脾陰とは脾の血や脾の津液のことで、労倦や情志の失調によりこれらが不足した状態を脾陰虚という。脾の症状と陰虚症状が出る。

 

脾胃湿熱

脾胃に湿が長期にわたって滞ったり、油っこいものや甘いものの偏食、酒を常飲していると、脾胃の損傷と鬱熱(気が滞って熱化したもの)生じ脾胃湿熱が起こる。虚実挟雑証という虚も実も混ざり合っていて複雑な病態なので慢性化しやすい。

 

脾胃の昇降失調

脾の昇清作用と胃の降濁作用のバランスが崩れたものであるから、これらの作用の失調した症状が現われる。脾胃の気機の流れが悪くなって「心下痞」という胃脘部の自覚的痞えも現れる。

昇清作用の失調:下痢

降濁作用の失調:悪心、嘔吐、噫噴気

 

 

肺の病証

復習:

肺は気を主る→肺は気を全身にめぐらす働きがある。

肺は呼吸を主る→肺は呼吸をすることにより、清気と濁気の交換をする。

肺は宣発・粛降を主る→体内の濁気の排出・津液や水穀の清気を全身に散布する。腠理の開闔を調節して汗の排出を調節する宣発作用、清気を体内に取り込む・津液や水穀の清気を下に向けて散布する・肺の清潔を保つ粛降作用が肺の働きとしてある。

水道通調(肺は水の上源)→体内の津液の散布や運行、排泄は肺の宣発・粛降作用によって調節されていること。

肺は皮毛を主る→肺は鼻に開竅する。肺の病は声に現れる。

 

肺の共通症状:

  • 咳嗽・痰

 

肺の宣発・粛降の失調

外邪の侵襲や痰湿の停滞により気道を通じる機能、水道を通じる機能が失調する。宣発作用の失調により呼吸不利(呼吸が普通でなくなること)により、咳嗽・くしやみ・鼻閉がおこる。

無汗:出るべき時に汗が出ないこと。宣発作用の失調により衛気が鬱滞して腠理の開闔ができないために起こる。

粛降作用が失調すると、肺気がつまったり上逆して喘息や気急(咳こむこと)を起こす。

宣発・粛降作用の失調により水道通調がうまくいかなくなると、津液代謝が悪くなり浮腫や痰の停滞を起こす。

外邪によるものは悪寒・悪風・発熱などの表証の症状を伴う。

 

肺気虚

慢性の咳嗽で肺気を損傷したり、汗のかきすぎや久病により肺気を損傷したり、脾虚により肺の生理機能が減退している病証である。腠理がゆるみ、外邪が容易に侵襲しやすい状態の衛表不固と津液の輸送機能の失調が現れる。

症状としては、気が虚しているため無力な咳や少気、宗気も虚弱なため呼吸機能の低下などが起こる。水道通調機能に影響すると、浮腫や痰を生じる。

気虚症状の自汗・倦怠感・息切れもでる。

 

肺陰虚

長期にわたる咳嗽や熱病による肺陰の損傷や他臓の陰虚の波及、燥邪などの侵襲により肺陰が損傷し、虚熱が内生し粛降機能が失調して起こる。虚熱証である。

陰分不足により咳はから咳やむせかえるような咳が出る。虚熱による乾燥状態があるので、鼻の乾き、咽喉部の乾き、かすれ声などの症状も出る。

虚熱証(陰虚証)の症状である、午後の潮熱・口渇・五心煩熱・盗汗も出る。

 

 

腎の病証

復習:

腎は精を蔵す→両親から受け継ぐ、先天の精は腎にしまわれる。

水液代謝を主る→肺が全身に散布した津液は、不要となった後、腎が集めて処理をする。

生殖、成長発育を主る→腎は骨を主るため、腎の働きが盛んになるにつれて成長し、天癸が成熟すると生殖能力が生み出される。

納気を主る→吸気を臍下丹田まで取り入れて、精を元気にして、活性化する。

・腎は耳と二陰に開竅し、状態は髪に現れる。骨を主り、骨余である歯も関係する。

 

共通症状:

  • 腰や膝のだるさ(腰膝酸軟)→腎は骨・髄を主っているため腎に病があると起こる。
  • 耳鳴り・難聴→耳は、腎が開竅するところなので腎に病があると起こる。

 

腎精の不足

先天の気の不足、房事過多、栄養の吸収不良、高齢や慢性疾患により腎精の不足が起こる。腎精不足の症候は、起こる時期によって異なる。

乳幼児期では、発育に影響して五遅や五軟が起こり、思春期では性器の成熟に影響して、男性では精液の生成の遅れや髭がうすい、女性では初潮の遅れや乳房の発達に影響する。壮年期では、陽萎や不妊症が起こり、老年期では早老化、腰膝酸軟、難聴、老眼などが起こる。

また腎と関係の深い骨・髄・脳に影響が及ぶと、発育不良、耳鳴り、難聴、めまい、歯の動揺、健忘などが起こる。

老眼:肝腎同源により、腎精が不足すると肝が開竅する目にも影響する。

 

五遅…小児に現れる5種類の発育不全のこと。立遅・行遅・髪遅・歯遅・語遅。

立遅:満1歳になっても一人で立っていられないもの。

行遅:2~3歳になっても一人で歩けないもの。

髪遅:出生時に髪の毛がなく、日が経っても生えてこないもの。

歯遅:生後10ヶ月経っても歯が生えてこないもの。

語遅:4~5歳になっても喋らないもの。

 

五軟…小児疾患の一種で、筋肉が発育不全となる病証。頭項軟・手軟・足軟・口軟・筋肉軟。

頭項軟:首がすわらないもの。

手軟:物を持ち上げたり握ったりすることができないもの。

足軟:立てないもの。

口軟:唇がうすく、噛む力がなく、常に口から水が流れ出るもの。

筋肉軟:筋肉がゆるみ動きに力がないもの。

 

腎陰虚

先天の不足、房事過多、過度の出血や脱液、驚きや恐怖などの情志の失調により腎陰が不足して起こる虚熱証である。

腎陰不足は腎だけではなく、他臓腑に陰液不足を起こすことが多い。

心に影響した場合:不眠・多夢。腎は五行では水に属し、火に属す心の熱を冷やすようにしている。心の熱を冷やせないために起こる。

肝に影響した場合:めまい・耳鳴り・目赤。

肺に影響した場合:咳嗽や声のかすれ。

虚熱証(陰虚証)の症状であるので、午後の潮熱・口渇・五心煩熱・盗汗も出る。

 

腎陽虚(命門火衰)

腎陽は命門の火や先天の火などともいわれ、生体の各臓腑・組織器管を温煦する作用を有している。そのため、房事過多や腎気虚、先天の不足、他臓からの陽虚の波及により腎陽が虚すると全身を温めることができなくなり、冷え症状が出る。

腎陽虚が脾に波及した場合は、未消化物を下痢することが起こる。

陽萎・不妊:命門の火の衰退により、生殖機能が減退するために起こる。

気虚症状の自汗・倦怠感・息切れもでる。

 

腎気虚

先天の不足、労倦、老化、慢性病などにより腎の機能が低下したもの。

腎気不固:腎気不足により腎の固摂機能が低下したもの。遺精、大小便失禁、流産しやすいなどの症状が出る。

腎不納気:腎の納気作用の低下により喘息、呼吸困難、息切れ(短気)が出る。

 

 

六脈の病証

 

胆の病証

復習:

胆は、精汁(胆汁)を蔵する→胆汁は、肝の余気がもれ集まったもので、脾胃の消化機能を助けている。味は苦く、色は黄緑色。

胆は、決断や勇気を主る→胆は、身体の中央に鎮座して、公平中立の立場で他臓腑の活動状況を監視して、その適否の決断に任ずる器管である。

 

悪心・嘔吐:胆汁の排泄が悪くなり、胃に影響すると胃気が上逆すると起こる。

口苦:胆汁の排泄が悪くなり、胆に熱を持つと起こる。

黄疸:胆汁がもれ出して起こる。

胆気が虚すると優柔不断になったり、ビクビクしやすくなったりする

 

 

胃の病症

復習:

胃受納を主る→胃は飲食物を受け入れる。

胃は水穀を腐熟する→胃は飲食物を粥状に消化する。

・胃には消化物を小腸に降ろす降濁作用がある。

 

胃寒

実寒は、寒邪が胃を犯して起こる。上腹部の冷痛、腹部拒按が症状として出て痛みは強い(実証のため)。

虚寒は、胃陽虚により起こる。上腹部の鈍痛、腹部喜按が症状として出て、痛みは食後軽減するものもある。食することにより陽気が奮い立つため。

 

胃熱

実熱は、邪熱や精神抑鬱、油っこい物・甘い物・辛い物の偏食、飲酒の習慣により胃に熱がこもって起こる。上腹部の灼熱痛、腹部拒按。

熱により胃の腐熟機能が亢進すると消穀善飢を起こす。これは、食欲が非常に旺盛で、食後すぐに空腹感を覚えることを指す。

胃中の津液を損傷すると強い口渇、胃熱により口臭、熱により陰液を損傷するため便秘を起こす。

虚熱は、胃の陰分不足である胃陰虚によるもので、受納・腐熟機能の低下を起こし、食欲不振や嘈雑(胸やけ)を起こす。

 

食滞

食物が一晩経っても消化されず胃腸に滞った状態のこと。

胃の降濁機能が落ちているので、胸や胃のつかえや呑酸、曖気、腐敗物の嘔吐などが症状として出る。嘔吐した後は、食滞が排出されるのでつかえは軽減する。

 

 

小腸の病証

復習:

小腸は胃から送られてきた糟粕を受け取る(受盛の官)→水分を膀胱に、固形分を大腸に送る。

清濁の分別を行う→胃から送られてきた糟粕の中からまだ使える清を分別する。

 

腎陽不足のため温煦機能が低下したり、寒邪の侵入により中焦の陽気が損傷されると小腸の虚寒を起こすことがある。症状は、受盛機能が低下すると食後の腹脹や嘔吐、清濁の分別機能が低下すると清濁が混じり合って未消化物を下痢する、腹鳴、腹痛を起こす。

湿熱が小腸や手太陽小腸経にこもったり、手少陰心経の熱が小腸に波及すると実熱を起こすことがある。

尿赤:膀胱に水分を降ろすときに、熱が伝わるために起こる。

口舌瘡:心が舌に開竅するため、心の熱症状として現れる。

 

 

大腸の病症

復習:

大腸は糟粕を伝化する(伝導の官)→小腸から送られてきた糟粕を転送しながら、糞便に変化させる。

大腸の病変は、糟粕の伝化機能の失調による便秘や下痢、泥状便などの便通異常がある。

 

 

膀胱の病症

復習:

膀胱は全身をめぐって不要となった津液(尿)を貯蔵し排泄する(州都の官)

膀胱の病変は、尿閉や遺尿、尿失禁、頻尿などの排尿異常として現れる。

 

 三焦の病症

三焦の働きは、水液代謝を順調に行わせることなので三焦が病むとこれに影響が出る。

すなわち、上焦では発汗異常、中焦では脾の昇清作用や胃の降濁作用の異常、下焦では排尿・排便異常が現れる。

 

 

経絡の病証(経絡弁証)

 

邪が侵入すると、経気をめぐらせるはたらきが乱れ、体表では衛気の機能が失調する。

その結果、病邪は経絡を通じてしだいに臓腑に入っていく。また逆に内蔵の病変が経絡を通じて体表に反映されることもある。

経絡弁証とは、体表の経絡およびそれが所属する臓服に関連する臨床所見にもとづいて、疾病がどの経あるいはどの臓腑にあるのかを分析し、判断する弁証方法である。

 

是動病と所生病

 

是動病 所生病
まず気が病むこと のちに血が病むこと
邪が外にある病 邪が内にある病
本経の病 他経の病
経絡の病 臓腑の病
外因による病 内因による病
外の経絡の変動によりうちの臓腑に影響して病を発するもの。屋愛は外に合って浅いが、やがて内に入ろうとするもの。 臓腑の病が外の経絡に反応を表す病のこと。所生病気は「内」に原因がある

 

 

十二経脈の病証

 

手太陰肺経

経絡走行上の病証:上肢前面外側の痛み、手掌のほてり

経絡関連病証:喘咳、胸苦しさ、胸の熱感:手太陰肺経は中焦より起こり、肺に属するため肺経が病むとこれらの症状が出やすい。息切れ(手太陰肺経の病が肺に影響し、肺気が虚すと起こりやすい)。

 

手陽明大腸経

経絡走行上の病証:喉の腫れ痛み(手陽明大腸経の支脈は、大鎖骨上窩で分かれた後、頚部を上るため喉にも影響が出る)。上肢外側の痛み、示指の痛み。

経絡関連病証:歯の痛み、鼻出血:手陽明大腸経の支脈は、大鎖骨上窩で分かれた後、頚部を上り、頬を貫き、下歯に入り、最終的に尾翼外方に至るためこの症状が出る。

 

足陽明胃経

経絡走行上の病証:顔面の麻痺、前頚部の腫れ、前胸部・腹部・ソケイ部・下肢前面・足背の痛み。

経絡関連病証:躁状態・鬱状態:栄養状態の不良によりこのような症状が起こる。鼻出血(鼻翼の外方で、手陽明大腸経から脈気を受けて足陽明胃経が始まる)。消化吸収の異常(足陽明胃経が病むと胃の働きに影響する)。

 

足太陰脾経

経絡走行上の病証:前胸部、腋下の圧迫感、下肢内側の腫れ痛み、母趾の麻痺。心下部の圧迫感(足太陰脾経の分かれた支脈は、上腹部より横隔膜を貫き、心中に行くために起こる)。

経絡関連病証:腹部膨満感、嘔吐、軟便・下痢、全身の倦怠感:足太陰脾経が病むと脾の働きに影響する。

 

手少陰心経

経絡走行上の病証:心臓部痛、上肢前面内側の痛み、手掌のほてりと痛み。

経絡関連病証:のどの渇き(手少陰心経の支脈は、心系から上って咽喉を挟むため。

脇の痛み)。

 

 

手太陽小腸経

経絡走行上の病証:首が腫れ、後ろを振り返ることができない、肩、上腕の激しい痛み。

頚、肩、上肢後面内側の痛み。

経絡関連病証:のど、あごの腫れ痛み、難聴:手太陽小腸経の支脈は、大鎖骨上窩から頚をめぐり、頬に上り、外眼角に至り、耳の中に入るために起こる。

 

足太陽膀胱経

経絡走行上の病証:頭頂部・後頭部痛、体幹後面、下肢後面の痛み、足の小指の麻痺

経絡関連病証:脊柱の痛み、精神異常、目の痛み、痔(足太陽膀胱経の流注上のため)。

鼻出血(足太陽膀胱経は全身を広く分布するため、外邪が侵襲すると起こりやすくなる)。 おこり(瘡=マラリヤの一種。激しい悪寒と発熱の発作を繰り返す。鼻出血に同じ)。

 

足少陰腎経

経絡走行上の病証:腰部・大腿内側の痛み、冷え、しびれ、足底のほてり。口腔内、咽頭部の炎症(足少陰腎経は気管をめぐって舌根を挟んで終わるために起こる)。

経絡関連病証:空腹感があるが食欲がない(腎陽虚により脾陽を温煦できなくなり、脾陽が衰退すると現れる)。顔色が黒ずむ(蔵している精が衰退することにより起こる)。呼吸が苦しく咳きこむ(納気機能の低下のために起こる)。血痰(腎陰虚の虚熱が肺に移ったときに起こる)。立ちくらみ、寝ることを好んで起きたがらない、心配症でびくびくする。

 

手厭陰心包経

経絡走行上の病証:心臓部痛、腋の腫れ、上肢のひきつり、手掌のほてり、季肋部のつかえ。

経絡関連病証:胸苦しさ、顔色が赤い、精神不安定:心包は心を守っているので、心の病証に似たものが出る。

 

手少陽三焦経

経絡走行上の病証:耳後~肩上部~上肢後面の痛み、第4指の麻痺、目尻から頬の痛み、難聴。

経絡関連病証:汗(三焦の水道の通路がうまく働かなくなるため)。咽頭・喉頭の炎症(手少陽三焦経が項部を通る為と思われる)。

 

 

足少陽胆経

経絡走行上の病証:目尻、側頭部、顎関節、鎖骨上窩、体幹外側、下肢外側の痛み、足の第4指の麻痺、寝返りが打てない、足外反しほてる、耳鳴り。

経絡関連病証:よくため息をつく(肝胆の気が鯵すると出る症状)。口が苦い、顔色がくすむ、カサカサして艶がない。

 

足蕨陰肝経

経絡走行上の病証:疝気(陰嚢・睾丸のひきつれ)、遺尿・尿閉(足厥陰肝経は生殖器をめぐるため)。腰が痛み、うつぶせや仰向けができない(足厥陰肝経の支脈に腰へ向かうものがあるため)。季肋部の腫れ(足厥陰肝経が流注するため)。

経絡関連病証:嘔吐(肝気が胃を犯すと、嘔吐しやすくなる)。下痢(肝気が脾の運化機能を失調させるために起こる)。のどの渇き(足厥陰肝経が喉頭をめぐるために起こる)。顔色がすすけて青黒くなる。

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