2019年11月(令和元年)に開催された『第8回あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師などの広告に関する検討会』で、広告規制に関する様々な議論が行われた。
これらを把握しておかないと「今までOKだと思っていた表記が、実はNGだった」ということにもなりかねない。
この記事では、特にポイントとなりそうな項目をピックアップして記事にしている。
是非、今までの常識と照らし合わせながら、情報をアップデートしてみてほしい。
目次
開業している施術所の名称に関して(接骨院はOKだが○○院はNG)
皆さんの近所に「○○治療院」「○○整骨院(接骨ではなく整骨)」という名称の施術所を見かけることはあるのだろうか?
この度、広告規制で施術所の名称について整理がなされた。
具体的なOK・NGは以下の通り。
- 「接骨院はOK。
- 「治療院」「整骨院」はNG。
「治療」という用語については後述するが、「整骨」という用語自体、柔道整復師が広告できる用語として、歴史をさかのぼっても掲載されていないことからNGという判断となっている。
詳しくは以下を参照。
「治療」・「診」という文言もNG
結構、「○○治療院」という名称の施術所は、柔道整復師のみならず、鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師の施術所でも見かけることがある。
例えば以下な感じ。
- ○○鍼灸治療院
- ○○マッサージ治療院
しかし、そもそも「治療」という用語は(昔はどうだったかは定かではないが、今現在は)医師にしか使うことが許されていないようだ。
そして、鍼灸あん摩マッサージ指圧・柔道整復術が提供しているのは「医業類似行為」であるにもかかわらず、「医療」を提供していると誤解させてしまう可能性があるとの判断から、NGとなっている。
詳しくは以下を参照。
余談として「診」というワードも医師が用いるため広告規制の対象となっている。
「治療」・「診」という用語を広辞苑・大辞林第三版で調べると以下のように掲載されている点も、NGであることの裏付けとして提示されている。
広辞苑 | 大辞林第三版 | |
治療 | 病気やけがをなおすこと。また、そのために施す種々のてだて。療治。 | 病気を治すこと。療治。 |
診察 | 医師が患者の体を調べて、病状・病院などをさぐること。 | 医師が病状を判断するため、患者に質問したり体を調べたりすること。 |
診断 | 医師が患者を診察して病状を判断すること。 | 医師が患者を診察し、病状を判断すること。 |
診療 | 診察と治療 | 医師が患者を診察し、治療すること。 |
上記から分かるように診察・診断・治療・診療という用語はどれもNGとのこと。
「診」が含まれている用語はNG。
※例えば休診日・往診日・初診料・再診料などはNG
従って、例えば患者宅に訪問するのであれば「訪問出張」や「往療」という用語を用いる。
「医療保険取り扱い・健康保険取り扱い・各種保険取り扱い」はNG
外観(外壁や窓・看板など)に「医療保険取り扱い」、「健康保険取り扱い」、「各種保険取り扱い」などと保険がきくアピールしている施術所は多い。
しかし、これらは全てNGとのこと。
詳しくは以下を参照。
ただし、この表記については「別に利用者を惑わせている訳ではない」という意見が業界から上がっていたりもする。
一方で、以下なケースも存在する。
- 最初は保険扱いにして、途中から言葉巧みに実費施術に移行させる。
- 保険が使えると思って施術所にとりあえず入れてしまってから、全員保険が使えるわけでないことを伝え、実費施術を提案する。
そのため、反論をするなら「対策も合わせて国に提示すること」が必要だと感じる。
インターネット上のウェブサイトに関する考え方
以前は「ウェブサイトは広告の規制対象ではない」とされていたが、時代の流れとともに一部規制対象となる可能性が浮上した。
具体的には「基本的には広告規制対象とせず、関係団体の自主的な取り組みを促す」とした上で、部分的に規制が入るといった感じ。
ここでは、ウェブサイトに「掲載NGな例」と「掲載OKな例」に分けて記載していく。
ウェブサイトに「掲載NG」な例
ウェブサイトに掲載NGな例としては以下が挙げられる。
- 内容が虚偽にわたる、または客観的事実であることを証明することが出来ないもの。
- 他との比較等により自らの優良性を示そうとするもの。
- 内容が誇大なもの又は施術所にとって都合が良い情報などの過度な強調を示すもの。
- 早急な施術を過度にあおる表現または費用を過度に協調を示すもの。
- 科学的根拠が乏しい情報に基づき、利用者の不安を過度に煽るなどして、施術所へ不当に誘導するもの。
- 公序良俗に反するもの。
- あはき師方、柔整師法以外御広告関連法令で禁止されるもの。
どれも抽象的で、表現の程度も様々なだが「患者さんの声」「患者さんの評価」などはは虚偽か本物かを証明できない(実際には知人に書いてもらっているものも混在する)などもあたりするのでNG
また、「○○資格(あはき柔整以外の資格)保有」や「経歴(色んな講習会に参加してきた、有名な先生に師事してきた、有名病院で○○年以上働いてきた)」なんかも、受け手のイメージで「自らの優位性を示そうとするもの」と捉えられたらNGとなる可能性がある。
抽象的で具体例が示されていないので想像を膨らます必要があるが、想像を膨らませすぎると様々な表現がNGとなってしまう。。。
ただ、「早急な施術を過度にあおる表現または費用を過度に協調を示すもの」や「科学的根拠が乏しい情報に基づき、利用者の不安を過度に煽るなどして、施術所へ不当に誘導するもの」はイメージしやすく、こういう表現だけには注意したい。
例えば景品法違反として引っかかったMJG接骨院のような事例は、今後(景品法違反というだけでなく)広告制限の違反としても扱われる可能性がある。
関連記事
⇒『【倒産】MJG接骨院の給料未払い破産の「経緯」と「今後」 | 猿でもわかるように解説』
「自費施術を行う施術所」がウェブサイトに掲載OKな例
あくまで「自費施術を行う施術所」に限定した話になるが、ウェブサイトに掲載OKな例が記載されていて以下の通り。
- 表示させる情報の内容について、利用者が容易に紹介できるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること。
- 自費施術に係る通常必要とされる施術内容、飛揚、費用の支払い方法に関する事項について、情報を提供すること。
- 自費施術に係る主なリスク、副作用などに関する事項について情報を提供すること。
残された課題
今回議論が分かれて、再検討される内容として以下が挙げられる。
- 施術者の技能・専門性・施術方法
- 適応疾患・適応症状・負傷名
- 料金表示
- もう少し突っ込んだウェブサイトに関する内容
そして①~③は今現在、広告規制の対象となっているため、今後の議論次第では、規制の対象外となる可能性がある点は、対象者に希望を抱かせる点ではないだろうか。
急に出てきた「非医業類似行為」という用語
あとは「非医業類似行為を業とするもの」に関する広告制限にも言及している。
恐らくは、整体師などの無資格者を指しているのだろうが・・・
「掲載NGな広告」として以下の項目を上げている。
- 内容が虚偽にわたる、又は客観的事実であることを証明することができないもの。
- 他との比較等により自らの優位性を示そうとするもの。
- 内容が誇大なもの又はサービスを提供するところいとって都合が良い情報の過度な強調を示すもの。
- 早急なサービスを過度にあおる表現又は費用の過度な強調をするもの。
- 化学的な根拠が乏しい情報に基づき、利用者の不安を過度にあおるなどして、店へのサービス利用を不当に誘導するもの。
- あはき師法、柔整師法、景品表示法等の広告関連法令に抵触する内容を含むもの。
- 公序良俗に反するもの。
ただし、あくまで「自主的な取り組みを促す」という趣旨であり、掲載していたら即指摘されたり、違法扱いされる類ではないと思われる。
上記は「非医療類似行為」に関してなため、鍼灸あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師にフォーカスしたものではないと思われるが、最近は「接骨院と整体院が合体した施術所」みたいなモノも増えており、その様な施術所は上記にも注意する必要がある。
※最近では(景品法違反という意味ではあるが)MJG接骨院も指摘さている。
また、これらの中には「今後は医療類似行為にも適応されそうな内容」も多く含まれているため、あまり過剰な表現を用いていると「自分で自分の首を絞める」ということになりかねないので注意が必要だ。
ちなみに、この資料で、初めて聞く用語が出てきた。
それは「非医業類似行為」という用語だ。
文脈から考えて、恐らくは、整体師などの無資格者を指しているのだろうが・・・
ちなみに念のため、「非医療類似行為」という用語について厚生労働省に問い合わせて記事にしている。
興味がある方は合わせて観覧してみて欲しい。
関連記事:
⇒『突然出てきた『非医業類似行為』って何だ? (+医業行為・医業類似行為との違い) | 厚労省に問い合わせてみた』
参考・引用文献
⇒『第8回あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師などの広告に関する検討会』