大手接骨院チェーンMJG接骨院が景品表示法違反を発端に、経営破綻にまで陥ってしまった。
負債総額は、約44億円。
平成24年に1店舗目をオープンし、わずか6年(令和元年)には176店舗にまで急拡大させた新気鋭のMJG接骨院に何があったのか?
今回は、この経緯についてまとめていく。
目次
以前から消費者センターに相談が寄せられていたMJG
ある時、実家にいる父と電話で話していると以下のような話題になった。
結局父は、保険適応内の施術だけ数回受けたのみで、高額な実費治療は受けずに、通うのを辞めた。
しかし「慢性疼痛に悩まされ藁をもすがる思いでMJG接骨院へ訪れた人」の中には、うまい口車に騙されて高額施術に後悔している人が存在することは容易に想像できる。
事実、「MJG接骨院が景品表示法違反」がニュースになった際、埼玉県の消費生活支援センターを中心に株式会社MJGの高額な施術メニューへの解約などの相談が寄せられているとの情報が記載されていた。
景品表示法違反から破綻へ
MJGホームページには「破産に至るまでの経緯」が報告されている。
破産までの時系列は以下の通り。
- 木﨑優太氏が平成 24 年 3 月 2 日にMJG接骨院1店舗目を設立。
- オリジナルの『PIM バランス整復』を提供し、『インナーマッスルと筋肉のバランスを整える』メニューが、幅広い顧客層に受け入れられ、以降、順調に業容を拡大。
- 平成 29 年にはフランチャイズ形式での出店も開始。
- しかしながら、平成 29 年からの急激な出店拡大によって、過剰債務を負担し、財務体質が悪化。
- 令和元年 11 月 18 日、埼玉県より、景品表示法第 5 条第 1 号(優良誤認)違反を理由とし、同法第7条第1項の規定に基づく措置命令を発せられた。
- 同命令により、金融機関からの新規融資が行われず、資金繰りに窮する事態に陥った。
- さらに、今般の新型コロナウィルス感染症の拡大による外出自粛により、来客数が大幅に減少したことで更なる売上高の低下に至った。
- その結果、本年 3 月 13 日に支払いをすべき給与も遅配が発生し、今後も運転資金を確保する目途が立たないため、破産申し立てに至った。
順調に店舗を増やしていたMJG接骨院
平成24年に1店舗目をオープンさせ、そこから僅か4・5年で合計 178 店舗(直営店 99 店舗、フランチャイズ店 79 店舗)の拡大とは凄いハイペースだ。
平成24年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 |
1店舗 | 14店舗 | 36店舗 | 94店舗 | 178店舗 |
やり方がどうだったかはともかくとして、誰にでもできることではないし、凄いとは思う。
PIM整復バランスとは
MJGは「従来の接骨院の強みである保険適用(健康保険・自賠責保険)の施術」に「独自のオリジナル自費メニュー」を融合したビジネスモデルが売りだったようだ。
そして、独自のオリジナル自費メニューが『PIM整復バランス』というものらしい。
PIMの略は以下の通り。
- P:
骨盤調整(土台である骨盤を、カイロプラクティックドクターが開発した調整ベッドで調整)
- I:
インナーマッスル(インナーマッスルに対し、ハイボルトを使い鍛えて、今後ゆがみにくい体づくりをしていく)
- M:
筋肉(体のゆがみにより硬くなった筋肉を緩めることで、痛みを除去する)
また、施術前後に写真を撮ることでビフォーアフターを提示し、施術の有用性をアピールしていたりもしたようだ。
今でこそMJGを叩いている人は多いが、少し前に病院・訪問で患者さんから「骨盤調整・骨盤のゆがみ」というキーワードを用いて話しかけられることが急激に増えた。
また、柔道整復師・あん摩マッサージ師さんが「実は、骨盤調整を学びたいと思っている」と耳にする機会も増えた。
昔から上記のワードを耳にすることはあったが、この数年でかなり増えた感じ。
これは、MJGの影響が強かったのではと今更ながら思う。
景品表示法第 5 条第 1 号(優良誤認) 違反 が引き金に
前述した経緯からは「コロナウィルスにとどめを刺されたかのような印象」を受けてしまうが、前年から給料未払いが続いていることから、実際は「景品法違反」が終わりの始まりだったと考えている人が多い。
いったいMJG接骨院の「どの様な表現」が景品表示法違反に該当したのだろうか。
具体的には以下の通り。
- 客観的な情報に基づかず、他者から高評価を得ているかのように表示していた
- 表現に合理的な根拠がなかった
①客観的な情報に基づかず、他者から高評価を得ているかのように表示していた
具体的には以下の様な表現が該当。
- 全国の患者様から選ばれてNo.1お客様『評価』★★★★★
- 全国の接骨院でMJG接骨院は三冠達成!第1位
- 痛みが辛い患者様が選ぶ全国の接骨院技術部門
- 第1位安心安全な骨盤矯正全国の患者様が選ぶ骨盤矯正
- 第1位むち打ち治療に強い接骨院全国の医師が選ぶむち打ち治療
※遅くとも平成30年11月1日から令和元年10月24日までの間に表示されていたと判断
表現に合理的な根拠がなかった
具体的には以下の様な表現が該当
- 『やせプログラム』では、『複合高周波EMS』を用いて、鍛えにくい身体の奥の筋肉『インナーマッスル』をはじめとする全身の筋肉を、楽に、しっかりとトレーニングします。
- 腹筋6000回の効果?特許取得の複合高周波『ダブルインパクト波形』
- 『ダブルインパクト波形』は、従来の複合高周波をさらに進化させた驚異の波形です。EMS初の50万ヘルツという高周波で、より深くまで通電。『インナーマッスル』をしっかり鍛えるとともに、アウターマッスルにも同時に強く働きかけ両方をトレーニングできます。
- 数字に見る、楽トレ後のサイズダウンの変化
- 高周波EMSの『楽トレ』で筋肉量を減らすことなく脂肪燃焼と筋肉自体の引き締めが行われた結果、体重の変化は少ないにもかかわらずバランスの良いサイズダウンと体脂肪量の減少という、健康的なシェイプアップに成功しました。
※遅くとも平成30年11月1日から令和元年10月24日までの間に表示されていたと判断
a
本件役務を一般消費者に提供するに当たり、自社ウェブサイトにおいて、例えば、遅くとも平成30年11月1日から令和元年10月24日までの間、「全国の患者様から選ばれてNo.1お客様『評価』★★★★★」、「全国の接骨院でMJG接骨院は三冠達成!」、「第1位痛みが辛い患者様が選ぶ全国の接骨院技術部門」、「第1位安心安全な骨盤矯正全国の患者様が選ぶ骨盤矯正」、「第1位むち打ち治療に強い接骨院全国の医師が選ぶむち打ち治療」等と表示するなど、あたかも、本件役務について顧客や医師からの評価が非常に高いものであるかのように表示していたこと。
実際には前記の表示は、平成30年10月に、同社が調査会社に委託しインターネット上で収集した同社を含む整骨院10者に関するイメージ調査の結果であり、無作為抽出方法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されているとはいえないものであった。また、当該調査は、腰痛等の痛みが辛い患者を対象とする調査や、医師資格を保有するか否かの確認をしたうえでの調査ではなかった。さらに、10者のうち同社を除く9者の中には、同社の関連の者が2者含まれている。
b
本件役務のうち「やせプログラム」と称する役務(以下「やせプログラム」という。)を一般消費者に提供するに当たり、自社ウェブサイトにおいて、例えば、遅くとも平成30年11月1日から令和元年10月24日までの間、あたかも、「やせプログラム」を受けるだけで食事指導等も必要とせず容易に体脂肪の減少と身体の全体的な引締め効果が得られるかのように表示をしていたこと。
埼玉県が「やせプログラム」の内容について、景品表示法第7条第2項の規定に基づき、同社に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料の提出がされた。しかし、当該資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められなかった。
~「接骨院を経営する事業者に対する措置命令について」より引用~
ここまで規模の大きい有名な会社であっても、景品表示法違反の措置命令(罰金でも営業停止でもない)レベルで破綻してしまうのだという教訓になった。
※柔道整復師・鍼灸あん摩マッサージ師の経営者さんは、広告・宣伝には十分気を付けよう。。
MJGの今後
MJGは、現在閉店状態ではあるが、今後どのようになるかも決まっている。
どうやらの以下の会社にお店は譲渡されるらしい。
株式会社 aprecio
上記は、東証2部上場の『株式会社MCJ』の子会社であるとのこと。
破産したMJGと、譲り受けるMCJ。
どちらも名称がメチャクチャ似てるので紛らわしい。
MJCのHPによると、株式会社 aprecioはは「インターネットカフェ、スポーツジムの運営を本業とする事業会社」とのこと。
ただし、譲渡されるのは直営店19か所と研修所1か所のみで、他の直営店はたたみ、フランチャイズ店は株式会社 aprecioとオーナーで新たな契約を交わす必要があり、その内容に不満がある場合は契約解除される予定。
MCJは接骨院や鍼灸院、整体サロンなどを経営するMJG(東京都新宿区。4月に破産手続き開始決定)から一部事業を取得することを決めた。取得するのは店舗19カ所、研修所1カ所。取得価額は1億3000万円。エンターテイメント事業拡充の一環。MCJは子会社のaprecio(東京都中央区)を通じて複合カフェやタイ古式マッサージ、24時間フィットネスなどを手がけており、こうした会員ビジネスや店舗運営のノウハウを生かせる新事業を模索していた。取得日は非公表。
~M&Aオンラインより引用~
ちなみに、aprecioに譲渡された店の看板名が何になるかは不明だが、改めてフランチャイズ契約を結んだ際は、MJGの商標やノウハウを利用してもOKとのこと。
aprecio との間で新たにフランチャイズ契約を締結するご意向を有するフランチャイジーの皆様に対しては、aprecio より別途新たなフランチャイズ契約(以下「新 FC 契約」といいます。)が提案される旨伺っております。この点、新 FC 契約におきましては、これまでのような aprecioによるフランチャイジーの皆様の加盟店の運営受託はなされませんので、フランチャイジー様ご自身で必要な従業員等を雇用いただき、また、店舗を賃借いただいた上で自ら店舗運営を行っていただく必要があるとのことですが、引き続き MJG の商標やノウハウをご利用いただくことが可能になります。
~MJGホームページより引用~
裏を返せば、aprecioと再契約せずに事業を継続する場合は、MJGの商標を用いたり、大々的にPIMバランスなどのノウハウをアピールすることはできなくなるようだ。
Q:
新 FC 契約を締結せず、独立を考えています。
旧 FC 契約の競業避止義務は免除されるのでしょうか。
A:
MJG 社の破産管財人として免除させていただきます。
ただし、今後、「MJG」や「PIMバランス」といった名称を使用することはできなくなりますので、速やかに変更ください。
~MJGホームページより引用~
新たなお店では、既存の回数券は使えない
ちなみに、今回の破産は景品法違反が引き金となっているが、そこへ至るまでに消費者庁へ何件ものクレームが入っており、それらクレームが積み重なって、今回の破産に繋がっている。
そして、クレームの中には前述した「痩せプログラム」に関しての他に、『高額な回数券を売られた」というものも含まれていたようだ。
この回数券に関しては「不満を感じている人」や「有難く使用してきた人」など色々だとは思うが、いずれにしても、この回数券は新たなお店では使用できないことになっている。
また、返金も不可とのことだ。
Q:
回数券(プログラム)を購入しましたが、返金されますか。
A:
誠に遺憾ではございますが、破産者が販売していた回数券(以下、「プログラム」といいます。)については、返金は行われない見通しです。
Q:
どうして返金がされないのですか。
A:
プログラムの約款には、一定の要件を満たせば、破産者による返金が行われることが規定されています。そのため、破産者は、一定の場合にプログラムの購入者に対して返金債務を負います。しかし、実際には、破産者の資力が著しく不足しているため、返金債務を弁済することができません。すなわち、大変遺憾ながら、破産者が返金債務を負う場合であっても、実際に返金される見通しはないこととなります。
Q:
プログラムは今後使えますか。
A:
MJG 整骨院・整体院は一部が aprecio 社の元で事業を継続します。
この承継された店舗において、一定期間(2020年7月10日までの期間)、お客様が購入されたプログラムと同等のサービスが利用可能となる予定です。
ただし、aprecio 社は、プログラムそのものを引き継ぐわけではありませんので、同社からプログラムについての返金はなされません。また、2020年7月11日以降は同社において上記サービスが利用できなくなりますので、ご留意ください。
~MJGホームページより引用~
有効期限が、まだ2カ月ちかく残っているが、近所のMJG接骨院は、5月30日現在もお店は閉店状態であり、患者さんが7月11日までに使い切ることが出来るとは到底思えない。。
関連動画。MJG接骨院に関するものが続々投稿!国会でも話題に!
YouTube動画でもMJG接骨院に関するものが続々投稿されており、共産党は該当する国会中継の様子をアップしている。
以下は、板野友美にもフォーカスを当てつつ、アニメでMFG接骨院について分かりやすく解説している。
以下2つは、記事作成の参考動画になるので、興味がある方はチェックしてみてほしい。
以下の国会中継4分~数分間で、MJG接骨院の話題になっている。
関連記事
今回MJG接骨院が違反と判断された「景品法」については以下の記事で詳しく解説しているので合わせて観覧してみてほしい。