訪問マッサージで独立開業を考え始めると、施術の技術や営業だけでなく、「請求をどう回すか」が急に重く見えてくる。
学生時代や勤務直後にはあまり意識しなかったが、実際に一人で回すとなると、患者登録、同意書管理、施術録、療養費支給申請書、返戻対応、入金確認まで、自分で背負う範囲が一気に広がるからだ。
そのときに重要になるのがレセコン選び。
しかし、ここでありがちな失敗は、「機能が多いものほどよい」と考えてしまうことである。
ひとり開業では、法人向けの多機能システムが必ずしも最適とは限らず、
むしろ以下などが重要となりやすい。
- 初期費用が重すぎないこと
- 月額が読めること
- 操作が難しすぎないこと
- 現行制度に合った帳票と管理ができること
重要ポイント:
機能が多いものを選べば安心だと思いがちである。
だが、ひとり開業では「多機能」より「無理なく回せること」のほうが大切である。
この記事で分かること
- 一人で訪問マッサージを開業する人に向くレセコンだけを絞って理解できる
- 現行制度で本当に見るべき比較ポイントが分かる
- 自己請求向けと、代行活用向けの違いが分かる
- 記事の最後で、ひと目で比較できる簡易一覧表も確認できる
目次
一人開業のレセコン選びで、まず外してはいけない視点
まず前提として押さえたいのは、
今の制度では「往療距離をうまく計算できるか」を主役の比較軸にしないほうがよい
という点である。
厚生労働省の資料では、2024年10月から、定期的・計画的な訪問については施術料と訪問に係る往療料を包括した訪問施術料へ整理する方針が示され、実際に訪問施術料1・2・3の体系が導入されている。
また、4km超加算の廃止も整理されている。
したがって、今のレセコン比較で本当に重視すべきなのは以下などである。
- 訪問施術料1・2・3の判定
- 同意期限管理
- 再同意や施術報告書の扱い
- 現場での入力しやすさ
- 請求書類の出力のしやすさ
一人開業では、さらに比較軸を絞る必要があり、具体的には以下などが挙げられる。
- 第一に固定費の軽さ
- 第二にパソコンが得意でなくても回せること
- 第三に自己請求でいくのか
- 代行を使うのかが明確であること
- 第四に開業直後の少ない請求件数でも損をしにくいこと
逆に、多拠点の本部管理や大人数の施術者管理が前提の機能は、開業初期には過剰になりやすい。
そのため本記事では、機能の多さよりも、ひとりで続けやすいかを中心に見ていく。
ユーキロク
ユーキロクは、ひとり開業と非常に相性がよい候補の一つである。
公式サイトでは、鍼灸・マッサージ施術所向けのクラウド型レセコンとして、月額3,850円から、初期費用0円で始められることが示されている。
しかも、単なるレセプト作成だけではなく、電子カルテ、訪問予定、顧客管理、売上管理まで一つにまとめて使える構成になっている。
訪問専門にも、来院+訪問の混合型にも対応すると案内されているため、「最初は訪問中心だが、将来は院内施術も混ぜたい」と考える人にも合わせやすい。
一人開業でユーキロクが強い理由は、価格と機能のバランスが非常に取りやすいことにある。
開業直後は、患者数も請求件数もまだ多くない一方で、管理業務はむしろ手探りになりやすい。
そうした時期に、別々の表計算ファイルや紙のメモで予定、カルテ、請求を回すと、すぐに抜け漏れが出る。
その点、ユーキロクは「最初から最低限必要な実務を一つに寄せる」という考え方と相性がよい。クラウド型で、PC・スマホから使える点も、一人で外回りしながら確認したい場面に向いている。
弱みを挙げるなら、訪問専業の超特化型というよりは、訪問にも来院にも使える総合型である点だ。
つまり、「訪問専門として、とにかく現場運用を極限まで研ぎ澄ましたい」という人には、好みが分かれる余地がある。
ただし、ひとり開業の段階では、そこまで尖った専用性よりも、まずは全体を無理なく回せることの価値のほうが大きい。
そう考えると、ユーキロクはかなり有力である。
一言ポイント
迷ったらまず候補に入れやすい、ひとり開業向けの優等生である。
らくちょく
らくちょくは、訪問マッサージ業向けの保険請求ソフトとして、ひとり開業でもかなり検討しやすい存在である。
公式では、入会金5,500円、月額5,820円で、スタッフ数や複数治療院でも定額で使えるとしている。
また、直接請求ができること、WEB上で入力できること、治療院では印刷中心で運用しやすいことを強みとしている。
ひとり開業において、らくちょくの魅力は「請求に必要なところへ絞っている」点である。
開業初期は、壮大な分析機能や高度な経営ダッシュボードよりも、「今月の請求を間違えずに出せるか」「現場で入力した情報を無理なく書類に落とせるか」のほうがはるかに大切である。
らくちょくは、まさにその発想に寄っている。特に、売上連動の手数料ではなく定額であることは、収益がまだ安定しない時期には安心材料になりやすい。
注意点としては、経営全体を一元化する総合システムというより、あくまで保険請求の効率化に重心があることだ。
そのため、カルテ、売上分析、顧客管理まで重厚に一つへまとめたい人は、別の候補のほうが合う場合がある。
ただし、「ひとりで始める」「訪問マッサージの保険請求をまず安定させる」という目的なら、この割り切りはむしろ強みになる。
※開業初期は、経営分析の多機能さよりも、月末の請求を迷わず終えられるほうが価値が高い。
一言ポイント
請求をシンプルに、固定費も分かりやすく始めたい人に向く。
発揮君Rw
発揮君Rwは、「とにかく固定費を軽くしたい」という一人開業と相性がよい。
公式では、年間使用料16,800円とされ、改定時の追加料金や月額使用料が不要であること、訪問施術料自動計算や各種帳票出力に対応していること、30日間の無料体験があることが示されている。
この製品の最大の強みは、圧倒的な低価格である。独立直後は、家賃、交通費、広告費、保険、備品など、細かな固定費が積み上がりやすい。
その中で、レセコンの固定費をできるだけ低くしたいという考えは自然である。発揮君Rwはまさにその需要に合っている。
しかも、安いだけでなく、保険者データや郵便番号データ、まとめ印刷など、最低限どころか実務上必要な要素はしっかり揃えている。
ただし、注意すべき点もある。
クラウド前提でスマホや複数端末から軽快に動かしたい人、将来的にスタッフを増やして本格的な共有運用をしたい人には、他のクラウド型のほうが向く可能性がある。
つまり、発揮君Rwは「小さく始めて、安く堅実に回す」ための選択肢として非常に強いのであって、「今後の拡張性」まで最優先する場合は比較し直したほうがよい。
一言ポイント
固定費を最小化したいなら、最初に確認すべき候補である。
快癒Next
快癒Nextは、開業直後で請求件数がまだ少ない人にとって、かなり面白い選択肢である。
公式では、クラウド版で請求1枚(1人)につき1,000円の従量課金に対応しており、保険請求が少ない治療院に向くこと、保険請求がない月は無料であることが案内されている。
また、往療先でもスマホで操作できる仕組みや、制度変更時も通常入力で対応しやすいことも特徴として挙げられている。
ひとり開業の初期段階では、「毎月の請求件数がまだ少ないのに、高い月額を払い続けるのはつらい」という悩みが出やすい。
快癒Nextの従量課金は、まさにこの悩みに合う。
まだ患者数が少ない時期は固定費を抑えつつ、必要なときだけ支払う形にできるからだ。しかも、クラウドやスマホ連携も視野に入っているため、「昔ながらの重いソフト」という印象ではない。
ただし、患者数が増えて請求件数が安定して多くなってくると、従量課金は逆に割高になる可能性がある。
そのため、快癒Nextは「立ち上げ期に非常に相性がよい」が、「軌道に乗った後もずっと最安とは限らない」というタイプである。
開業後1年くらいで件数が増えてきたら、月額固定型へ乗り換えるかどうかを見直す視点も持っておきたい。
一言ポイント
開業直後の少ない請求件数と相性がよい、立ち上げ向けの一台である。
メディックス計算センター(レセプロ-R2)
一人での独立開業では、「自己請求で固定費を抑える」方向だけでなく、「請求をある程度外に任せて本業へ集中する」という方向も現実的である。
その代表候補の一つが、メディックス計算センターだ。
公式では、訪問マッサージ・鍼灸向け請求代行として、月会費10,000円、施術管理者1名ごとにアカウント料5,000円、請求代行手数料3%が示されている。
また、レセコンのレセプロ-R2自体は、無料で使えるクラウド型レセコンとして案内され、受領委任払制度対応、タブレット利用可能、同意期限管理などの機能を備えている。
このサービスが一人開業向けとして有力なのは、請求事務に割く時間と不安を減らせるからである。
独立直後は、営業、同意書、訪問、患者対応、売上確保で頭がいっぱいになりやすい。
そこへ毎月の請求実務までフルで乗せると、想像以上に疲弊しやすい。特に、返戻や書類不備への不安が強い人にとっては、「多少コストがかかっても代行を活用する」ことには十分な意味がある。
もちろん、弱みは総コストである。
純粋なレセコン単体比較で見れば、ユーキロクや発揮君Rwのほうが明らかに軽い。
したがって、メディックス計算センターは「最安で始めたい人」の第一候補ではない。
むしろ、「請求を自分一人で抱え込みたくない」「営業と施術に集中したい」というタイプに向く。
独立後の疲弊を防ぐという意味では、費用だけで切り捨てにくい候補である。
一言ポイント
請求を外に寄せて、施術と営業に集中したい人向けである。
Smart Choice
だが、一人開業という観点では、この「全部入りではない」ことが逆に合う場合がある。
公式では、ライトプランが導入費0円、月額5,950円、1カ月30名までとされている。
ひとり開業の初期には、「本格的な総合レセコンをいきなり使いこなす自信はないが、手書きや表計算だけでは不安だ」という中間的な段階がある。
Smart Choiceは、その段階に入りやすい。
つまり、現場の施術や顧客対応は自分のやり方で続けつつ、申請書作成だけを一歩効率化する、という考え方である。
フル装備のレセコンより導入の心理的ハードルが低い人もいるだろう。
ただし、これは万能型ではない。
カルテ、予定、売上、経営管理まで一体で回したい人には、やはり物足りない可能性がある。
そのため、Smart Choiceは「いきなり全部は要らないが、請求だけは整えたい」という人向けと考えると選びやすい。
一言ポイント
手書きから最初の一歩だけ進みたい人に向く。
一人開業なら、結局どれを選ぶべきか
結論をかなり実務寄りに言えば、自分で請求を回して固定費を抑えたいなら、ユーキロク、らくちょく、発揮君Rw、快癒Nextの順で比較すると考えやすい。
ユーキロクは総合力、
らくちょくは定額の分かりやすさ、
発揮君Rwは固定費の軽さ、
快癒Nextは立ち上げ期の件数の少なさとの相性が魅力である。
一方で、請求を自分一人で抱え込むのが不安なら、メディックス計算センターを最初から視野に入れたほうがよい。
独立開業では「毎月の請求をきちんと出し切る」こと自体が大きな仕事になる。
ここを外注できる価値は、単純な月額比較では測りにくい。
Smart Choiceは、その中間で、「全部入りまでは要らないが、請求だけは少し整えたい」という人に向く。
つまり、ひとり開業のレセコン選びは、機能の数を比べることではない。
自分がどこまで事務を自前で持つのか、そして今の件数と今後の伸び方に合った料金体系かどうかを見ることが核心である。
独立直後は、「大は小を兼ねる」で高機能システムを選ぶより、今の自分に無理なく回せるかで選んだほうが失敗しにくい。
選び方の結論
ひとり開業では「一番高機能なもの」ではなく、「今の自分が一人で回しやすいもの」を選ぶほうが失敗しにくい。
ひとり開業向けレセコン簡易一覧表
以下に、ここまでの内容を比較しやすいよう簡易な一覧表として整理する。本文を読んだあとに見返すと、自分がどの方向で選ぶべきかが分かりやすくなる。
| 会社・サービス名 | タイプ | 料金の目安 | こんな人に向く | 一言ポイント |
|---|---|---|---|---|
| ユーキロク | 純レセコン | 月額3,850円〜、初期費用0円 | まずは自己請求を低コストで整えたい人 | 迷ったら最初に比較候補へ入れやすい。 |
| らくちょく | 純レセコン | 入会金5,500円、月額5,820円 | 請求をシンプルに回したい人 | 定額で分かりやすく、ひとり開業でも扱いやすい。 |
| 発揮君Rw | 純レセコン | 年間16,800円 | 固定費をできるだけ抑えたい人 | 最安クラスで、小さく始めやすい。 |
| 快癒Next | 純レセコン | レセプト1枚1,000円の従量課金 | 開業直後で請求件数がまだ少ない人 | 件数が少ない時期ほど相性がよい。 |
| メディックス計算センター(レセプロ-R2) | 代行込み実務向け | 月会費10,000円+アカウント料5,000円+請求代行手数料3% | 請求を外に寄せて施術と営業に集中したい人 | ソフト単体の安さより、事務負担の軽減が魅力である。 |
| Smart Choice | 申請書作成支援寄り | 導入費0円、月額5,950円、30名まで | いきなり本格レセコンは重いが、請求だけ整えたい人 | 手書き管理から一歩進みたい人に向く。 |
一覧表の見方
- 固定費を抑えて自己請求を回したいなら、純レセコン勢から比較する
- 請求に時間を取られたくないなら、代行活用型を先に見る
- 開業直後の件数が少ないなら、従量課金型も候補になる
- 今の自分に合うかどうかを優先し、将来の拡張性は次の段階で見直せばよい
ひとり開業で失敗しにくいのは、今の自分に無理がないレセコンを選ぶことである。
自己請求でいくか、代行も使うかを先に整理すると、候補はかなり絞りやすくなる。
まずは自分の開業スタイルに合わせて比較軸を決めることが大切である。
余談:私はメディックス計算センターのレセコンを使用
余談として、私が使用しているメディックス計算センターについて記載して終わりにする。
私は、このレセコンしか使用しておらず比較対象が無い点には留意して参考にしてみてほしい。
開業から普段の疑問までサポート
(今もこのサービスをやっているのかは不明だが)「医療保険を用いた訪問マッサージ事業」を開業するにあたって、何をどこに届け出れば良いかを(提出用紙まで作成してくれて)全て無料でサポートしてくれた。
なので安心して開業出来た。
また開業してからも、以下は全て電話すれば教えてくれる。
- ケアマネに質問されて分からなかった制度の不明点。
- 問い合わせてくれた方が、訪問マッサージ対象者に該当するか。
- 「返礼となりそうか微妙な同意書」が病院から届いたが、この同意書内容で大丈夫か。
レセプト操作
レセプト操作は簡単だ。
しかし、どんなソフトでも何度か使って徐々に慣れていく必要がある。
メディックス計算センターでは、契約時に操作説明を受けるだけでなく、開業後で操作に困ったときも電話をすれば教えてくれる。
電話は月末月初は問い合わせが殺到して繋がらないことも稀にあるが、通常はすぐ繋がる。
※機械オンチで説明が万が一わからない場合でも、遠隔操作で対応してくれる。
レセプト業務の流れ
- 月末までに、患者にサインしてもらうための申請書を印刷する。
ひと月の訪問スケジュールを入力しておけば、自動計算で申請書が完成するので便利である。
同様に請求書や領収書も自動計算でサッと作成できる。
- 患者にサインをしてもらった申請書をメディックス計算センターへ月初に郵送する。
郵送したら、申請書や添付書類に不備がないか確認した上で、各申請先へ送ってくれる。
- 不備があれば「毎月1度届く封筒」に入って戻ってくる(修正して再度提出する)。
- 申請先からメディックスに入金されたお金を、指定した口座へ入金してくれる。
いつ、どこから入金されたか(どこからまだ入金されていないか)のデータが残るので、帳簿をつける際や、トラブルなどで履歴を確認したい時も遡れる。これは利用者が多くなるにつれ、または開業スタートから期間が長くなるにつれて、便利となる。
「請求代行込みのレセコン会社」に対する雑感
契約しているレセコンシステムに慣れると、他のレセコンに引っ越そうとした際に改めてシステムに慣れ直さなければいけない点は苦労する。
また、蓄積していた履歴も解約とともにリセットされるので、他レセコンへの引越し後に過去を遡れない。
従って「請求代行込みのレセコン会社」と契約する際は、安易に「気にらなければ、すぐ解約すれば良い」「もっと良いレセコン会社を発見したら引越しすればよい」などとと安易に考えず、レセコン選びは慎重になるべきだと感じる。
また現在は、レセコンが必須な時代ではなくなった。
私が開業した当時は「直前に施術した患者宅」から「次の施術患者宅」までの距離に応じて『往療料(交通費みたいなもの)』が変わっていたため、この距離を自動計算してくれるレセコンは必須であった。
しかし現在、往療料は施術料に包括されたため、この面倒な計算はしなくて良くなった。
従って、以前のように「訪問マッサージをするならレセコン会社に入るのが必須」という時代ではなくなった。
そうなると、特に「開業初期で軌道に乗るかどうかもわからないうち」や「患者を大量に施術せず、少人数だけを施術して細々と続けていきたい」と考えているなら、間接業務は全て自身で行うという選択もアリだと思う。
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この記事は、私が独断と偏見で「一人治療院に適したサービス」として選択したレセコンについて解説している。
一方で、以下の記事は全てのレセコンサービスについて網羅している。
従って、「全てのレセコンを把握してみたい」「自分でサービスを整理したい」という方は合わせて観覧してみてほしい。
