この記事ではMMT(manual muscle testing:徒手筋力検査)について肢位別に記載していく。
この記事を観覧すれば、以下について理解することが出来る。
- このMMTは、どの肢位で実施するのか(国試対策で使える知識)。
- 効率よく同じ肢位で可能なMMTを効率よく実施したい場合(卒後の臨床で使える知識)
なおMMTの肢位は「抗重力位で可能な5・4・3のテスト肢位」になる。
※この肢位が基本肢位であり臨床上でも重要となる。
座位
「座位でのMMT」としては以下が挙げられる。
関節 | 運動 | 主動作筋 |
肩甲骨 | 外転と上方回旋 | 前鋸筋 |
挙上 | 僧帽筋(上部線維)・肩甲挙筋 | |
肩関節 | 屈曲 | 三角筋(前部線維)・烏口腕筋 |
肩甲骨面挙上 | 三角筋(前・中部線維)・棘上筋 | |
外転 | 三角筋(中部線維)・棘上筋 | |
肘関節 | 屈曲 | 上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋 |
前腕 | 回外 | 回外筋・上腕二頭筋 |
回内 | 円回内筋・方形回内筋 | |
手関節 | 掌屈 | 橈側手根屈筋・尺側手根屈筋 |
背屈 | 長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・尺側手根伸筋 | |
手指 |
MP屈曲 |
虫様筋・背側骨間筋・掌側骨間筋 |
PIP屈曲 | 浅指屈筋 | |
DIP屈曲 | 深指屈筋 | |
MP伸展 | 指伸筋・示指伸筋・小指伸筋 | |
外転 | 背側骨間筋・小指外転筋 | |
内転 | 掌側骨間筋 | |
母指 | MP屈曲 | 短母指屈筋 |
IP屈曲 | 長母指屈筋 | |
MP伸展 | 短母指伸筋 | |
IP伸展 | 長母指伸筋 | |
橈側外転 | 長母指外転筋 | |
掌側外転 | 短母指外転筋 | |
内転 | 母指内転筋 | |
対立運動 | 母指対立筋・小指対立筋 | |
股関節 | 屈曲 | 大腰筋・腸骨筋 |
屈曲ー外転ー外旋 | 縫工筋 | |
外旋 | 外閉鎖筋・内閉鎖筋・上双子筋・下双子筋・大腿方形筋・梨状筋・大殿筋 | |
内旋 | 小殿筋・中殿筋・大腿筋膜張筋 | |
膝関節 | 伸展 |
大腿四頭筋 (大腿直筋・内側広筋・外側広筋・中間広筋) |
足関節 | 背屈ー内返し | 前脛骨筋 |
内返し | 後脛骨筋 | |
底屈または背屈を伴う内返し | 長腓骨筋・短腓骨筋 | |
足趾 | MP屈曲 | 虫様筋 |
PIP屈曲 | 短趾屈筋 | |
DIP屈曲 | 長趾屈筋 | |
MP伸展 | 長趾屈筋・短趾屈筋 | |
母趾 | MP屈曲 | 短母趾屈筋 |
IP屈曲 | 長母指屈筋 | |
IP伸展 | 長母指伸筋 |
背臥位(仰臥位)
「背臥位(仰臥位)でのMMT」としては以下が挙げられる。
関節 | 運動 | 主動作筋 |
頭部屈曲 | 屈曲 | 前頭直筋・外側頭直筋・頭長筋 |
頸部 | 屈曲 | 頸長筋・前斜角筋・胸鎖乳突筋 |
回旋 | 大後頭直筋・下頭斜筋・頭最長筋・頭板状筋・頭半棘筋・頸半棘筋・頸板状筋・頭長筋・前斜角筋・中斜角筋・後斜角筋・胸鎖乳突筋・頸回旋筋・僧帽筋・肩甲挙筋・頸長筋 | |
体幹 | 屈曲 | 腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋 |
回旋 | 腰方形筋・外腹斜筋・内腹斜筋 | |
骨盤 | 挙上 | 腰方形筋・外腹斜筋・内腹斜筋 |
肩関節 | 水平内転 | 大胸筋 |
腹臥位(伏臥位)
「伏臥位(伏臥位)でのMMT」としては以下が挙げられる。
関節 | 運動 | 主動作筋 |
股関節 | 外転 | 中殿筋・小殿筋 |
屈曲位からの外転 | 大腿筋膜張筋 | |
内転 | 大内転筋・短内転筋・長内転筋・恥骨筋・薄筋 |
側臥位
「側臥位でのMMT」としては以下が挙げられる。
関節 | 運動 | 主動作筋 |
頭部 | 伸展 | 大後頭直筋・小後頭直筋・下頭斜筋・頭板状筋・頭最長筋・頭半棘筋・上頭斜筋・僧帽筋・頭棘筋 |
頸部 | 伸展 | 頸最長筋・頸半棘筋・頸腸肋筋・頸板状筋・僧帽筋・頸棘筋 |
体幹 | 伸展 | 胸腸肋筋・胸最長筋・胸棘筋・胸半棘筋・胸棘間筋・腰方形筋・胸回旋筋・多裂筋・腰回旋筋・腰腸肋筋・腰棘間筋・胸および腰横突間筋 |
肩甲骨 | 内転 | 僧帽筋(中部線維)・大菱形筋 |
下制と内転 | 僧帽筋(下部線維) | |
内転と下方回旋 | 大菱形筋・小菱形筋 | |
肩関節 | 伸展 | 広背筋・三角筋(後部線維)・大円筋 |
水平外転 | 三角筋(後部線維) | |
外旋 | 棘下筋・小円筋 | |
内旋 | 肩甲下筋・大胸筋・広背筋・大円筋 | |
肘関節 | 伸展 | 上腕三頭筋 |
股関節 | 伸展 | 大殿筋・半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋 |
膝関節 | 屈曲 | 半膜様筋・半腱様筋・大腿二頭筋 |
立位
「立位でのMMT」は以下のみである。
関節 | 運動 | 主動作筋 |
足関節 | 底屈 | 腓腹筋・ヒラメ筋 |
徒手筋力テスト(MMT)とは
最後に、MMTについての詳細を記載して終わりにする。
MMTとは
MMTとは「末梢性麻痺の評価」などで活用するテストで、「筋力の表示法を6段階で表示する」という特徴がある。
判定基準
判定評価基準は以下の通り。
- 5:N(Nomal)100%正常⇒高度(最大)の抵抗に抗してテスト肢位を保持できる
- 4:G(Good) 75%良 ⇒中等度の抵抗に抗してテスト肢位を保持できる
- 3:F(Fair) 50%可 ⇒抵抗を加えなければ重力に抗して正常可動域いっぱいに動く
- 2:P(Poor) 25%可 ⇒重力を取り除いた状態で、関節運動が可能である
- 1:(Trace) 10%不可⇒MMT1では筋収縮はみられるが、関節運動は起こらない
- 0:(Zero) 0% ゼロ⇒MMT0では筋収縮が全く認められない(視診・触診で確認
ポイント
- MMT3は「重力に抗して全可動域を動かせること」が条件となる。
- 測定筋群に応じて患者の姿勢・肢位を適切に選ぶ必要がある。
- 筋緊張の状態を把握しながら関節の動きを評価するため「視診・触診」の能力を必要とする。
例外
MMT5・4における「等尺性収縮を加える肢位」は最終可動域である場合がほとんどだが、一部に例外がある。
具体的には以下など。
- 肩関節屈曲・肩甲骨面挙上・外転(90°可動させた状態で測定)
- 膝関節屈曲(45°屈曲位で測定)
また、足関節底屈のMMTは「片足立位でのつま先立ちが1回以上できればMMT3・10回以上出来ればMMT4・20回以上できればMMT5」と判定される。
補足:四肢大関節における代償動作
最後に補足として、「四肢の大関節MMT」における代償動作について掲載して終わりにする。
運動 | 動作筋 | 代償筋 | 代償動作 |
肩関節 屈曲 |
肩関節 前部 |
上腕二頭筋 |
上腕を外旋した状態で屈曲。 |
肩関節 外転 |
三角筋 中部 |
①上腕二頭筋 ②上腕三頭筋長頭 ③体幹側屈 |
①上腕を外旋した状態で外転。 ②上肢を内旋し後方伸展しながら外転。 ③体幹の側屈。 |
肘関節 屈曲 |
上腕二頭筋 |
①腕橈骨筋 ②円回内筋 ③上腕筋 ④手根屈筋群 |
①前腕を回内・回外中間位で屈曲。 ②運動途中で前腕回内。 ③前腕回内位で屈曲。 ④手関節を強く掌屈。 |
肘関節 伸展 |
上腕三頭筋 |
①手根伸筋群 ②指伸筋 |
①手関節を強く背屈。 ②手関節伸展。 |
股関節 屈曲 |
腸腰筋 |
①縫工筋 ②大腿筋膜張筋 |
①大腿の外旋・外転。 ②大腿の内旋・外転。 |
股関節 伸展 |
大殿筋 |
①体幹伸展筋 ②腰方形筋 ③広背筋 |
①腰椎を後方に伸展し重心を後方に移動。 ②骨盤を持ち上げ膝関節屈曲にて下肢を支える。 |
股関節外転 | 中殿筋 |
①股関節屈筋群 ②体幹側屈筋 |
①下肢を外旋しながら外転。 ②骨盤の腰部への引き寄せ。 |
膝関節 屈曲 |
ハムストリングス |
①腓腹筋 ②股関節屈筋群 |
①体重のかからない時に作用。 ②股関節屈曲により膝関節屈曲が生じる。 |
膝関節 伸展 |
大腿四頭筋 |
①内・外旋筋 ②腓腹筋 ③大殿筋 |
①股関節内・外旋を伴う。 ②立位での足関節固定。 ③同上。 |
足関節 背屈・内反 |
前脛骨筋 |
①長趾伸筋 ②長母趾伸筋 ③第三腓骨筋 |
①足指伸展を伴う。 ②母指を強く伸展しながら背屈・外反。 ③同上。 |
足関節 底屈 |
腓腹筋 ヒラメ筋 |
①後脛骨筋 ②長短腓骨筋 ③長趾屈筋 ④長母趾屈筋 |
①踵骨のはっきりした動きが認められない。 ②同上。 ③足指の強い屈曲。 ④母趾の屈曲。 |
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