この記事では、鍼灸あん摩マッサージ指圧師学校を卒業した直後に受けることが出来る
「療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件に係る特例」と「特例に関する具体的な研修」について記載していく。
この記事は、公文書『厚 生 労 働 省 保 険 局 長:はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件に係る令和3年度から令和7年度までの特例について』参考に作成しており、記事の最後に引用ソースを掲載しておくので、正式な内容を観覧したい方は、ぜひ合わせて確認してもらいたい。
目次
この特例をザックリ解説
この特例の概要をザックリと要約すれば以下となる。
近年の制度改正により施術管理者(自身で医療保険を取り扱えるよう者)になるためには「1年間の実務経験」と「2日間の必須研修」が必要となった。
しかし、令和3年〜令和7年卒業者は(制度改正の移行措置として)特例が設けられた。
それが「施術管理者要件の特例に係る実務研修」であり、この研修(約7日間)を受けることにより「1年間の実務経験」が免除される。
制度が変わった!これから保険を取り扱うには実務経験が必要!
昨年の鍼灸あん摩マッサージ指圧師卒業生(令和3年の卒業生)から、施術管理者(医療保険を取り扱える者)になるためには「1年間の実務経験」と「2日間の研修」が必要となった。
以前、『柔道整復師の制度改悪(卒後直ぐに開業し、保険取り扱いすることが出来なくなった=施術管理者になれなくなった)」という内容の記事を作成したが、それの『鍼灸・あん摩マッサージ指圧師版』が導入されたということだ。
関連記事⇒『「柔道整復師=開業できる」は間違い!?制度変更に注意せよ(実務経験?研修?)【厚労省へ問い合わせた結果】』
導入された経緯としては「卒後直ぐに開業して保険を取り扱うことにより、知識不足による不正請求を抑止するため」というのが建前となっている。
※この記事は「鍼師」「灸師」「あん摩マッサージ指圧師」に共通した特例だが、ここから先は「あん摩マッサージ指圧師」という用語に統一して記載していく(実際には鍼灸師も同じなので、鍼灸師学生さんは資格を置き換えて観覧してほしい)。
特例について深堀解説!
この記事では「特例」と表記しているが、正式名称は「療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件に係る令和3年度から令和7年度までの特例」となる。
特例内容
今までは「資格取得後は施術管理者として、医療保険を取り扱うことが出来た」のに対して、最近制度が変わり以下の2つの条件を満たす必要が出てきた。
- 1年間実務経験を「あん摩マッサージ指圧施術所で積む(接骨院・施設・病院はNG)こと
- 2日間の指定研修を受けること
しかし、今年の卒業生(僕らの1個上の先輩)も含めて数年間(具体的な期間は後述)は、特例を受けることが可能となる。
特例の具体的内容は以下の通り。
つまり前述した「①の条件」が、たった7日程度の研修を受けただけで免除されるということになる。
また、この研修の内容については「施術所が独自に決めてOK」なため、極端な話、「ほとんどをオンラインで完結させる」や「見学してもらって完結させる」など施術所の裁量に任される。
なので「条件に当てはまる施術所」があるようなら、研修を受けてもらえないか、お願いしてみても良いかもしれない。
ちなみに、不正が発覚した場合は特例が無効になるためご注意を。
申出者が受領委任の取扱いの承諾を受けた後において、虚偽又は不正に基づく別紙1「実務研修期間証明書」の発行が判明した場合又は要件通知の別紙3「施術管理者研修修了証」の交付が取り消された場合、当該証明書又は修了証に基づく承諾は無効である。
~「公文書:はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の領委任を取り扱う施術管理者の要件に係る令和3年度から令和7年度までの特例について」より引用~
特例が受けれる施術所とは
「特例を提供できる施術所」には条件があり、具体的には以下の通り。
保健所へ開設を届け出た施術所であること。なお、受領委任の取扱いを承諾されていない施術所を含むこと。
特例対象者に対して実務研修を実施した施術者は研修実施施術所において継続して1年以上実務に従事していること。また、保健所へ施術者として届出されていること。
現在若しくは過去において行政処分を受けていないこと。
~「公文書:はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の領委任を取り扱う施術管理者の要件に係る令和3年度から令和7年度までの特例について」より引用~
つまり「保健所に届け出て1年以上の施術所」は対象になれる。
それ以外のポイントは「受領委任の取り扱いを承諾されていない施術所も含む」という点。
「受領委任の取り扱いを承諾されていない施術所」について
あん摩マッサージ指圧師の就職先として、接骨院・施設・リラクゼーションサロン・整体院・整形外科クリニックなどが挙げられるが、純粋な「あん摩マッサージ指圧施術所」は多くない。
で、多くの施術所は「(あん摩マッサージ指圧の保険適用者の条件から考えて)自費施術オンリーでやっている」というケースが多いのではないだろうか?
ただ、前述したように、そういった「保険取り扱いをしていない施術所(=受領委任の取り扱いを承諾されていない施術所)」も対象となる。
なので自費施術をしているあん摩マッサージ施術所でも対象施設になる(ちゃんと「あん摩マッサージ指圧施術所として保健所に届出を出している必要はあるが。。例えば整体院では施設基準を満たしていないし、許可が下りていないと思われるのでNG。自費でやっているならマッサージ師 or 整体師どちらのスタンスで開設しているのかは十分チェックしておく必要がある)。
施術管理責任者(保険取り扱いを出来る者)になるための研修に、なぜ「受領委任取り扱いを承諾されていない施術所」が含まれるのか理解に苦しむ。
推察としては「保険を扱っている施術所に限定した場合、研修を受けらる施術所が大幅に減ってしまうことが理由なのでは」と考える。
しかし上記のように整合性がとれないため、今後、特例の内容が一部改変される可能性もあるので、常に最新の情報にアンテナを張り、疑問点は厚生労働省に問い合わせることが重要だ。
ちなみに、医療保険を使った施術をメインで提供している形態の代表格ともいえる「訪問マッサージ事業所」も特例研修対象施設に該当する。
対象者
この特例を受けることが出来る「あん摩マッサージ指圧師」の対象者は以下の通り。
条件1
- 令和3年2月の国家資格合格者
- 令和4年2月の国家資格合格者←僕は来年卒なのでコレに該当
- 令和5年2月の国家資格合格者
- 令和6年2月の国家資格合格者(※令和2年4月大学入学者、若しくは平成31年4月入学視覚障害限定)
- 令和7年2月の国家資格合格者(※令和2年4月入学視覚障害者限定)
条件2
以下の順で手続き・研修を受ける必要がある。
- あん摩マッサージ指圧師の資格取得後から手続きスタート(4月上旬に資格証が届くケースが多い。これより前に研修を受講するのはNG)。
- (資格取得後に)「保健所登録+受領委任の申出(確約書を添付)」を行う(これより前に研修を受けても無効)。「受領委任の申し出」は5月末までにする必要がある。
- 特例研修(療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件に係る令和3年度から令和7年度までの特例)を受ける。
- 「受領委任の申し出に添付した確約書」に記載のある提出期限(=翌年の3月末)までに「実務研修期間証明書+施術管理者研修修了証の写し」を提出。
上記の「確約書」は以下になり「これを添付した受領委任の申し出」を行う必要がある。

画像引用:厚 生 労 働 省 保 険 局 長( 公 印 省 略 )はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件に係る令和3年度から令和7年度までの特例について
最重要注意点は以下になる。
「受領委任の申し出」は5月末までにする必要がある。
つまり、2月下旬に国家試験を受け、4月上旬に資格取得が出来たと仮定し、その翌月である「5月末まで」に受領委任の申し出をしていなければ、この特例を受けることが出来ない。
いくら特例研修を受けようが、無効。
なので、「特例対象施設を見つける」や「研修申し込みをする」というのを早めにしておくことも重要だが、それよりも重要で忘れてはならない事項が「5月末までの受領委任申し出」になる。
もちろん研修を受けた後、必要書類を「翌年3月末まで」に提出し忘れた場合も無効となるのでご注意を。
※そんな「必要書類」の一つが以下の実務研修期間証明書になる。

画像引用:厚 生 労 働 省 保 険 局 長( 公 印 省 略 )はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件に係る令和3年度から令和7年度までの特例について
「特例を受けること」でメリットがある人
この特例は、以下の人にはメリットがある。
施術管理者の権利を得るためだけに、該当施術所で1年間も務めたくない!
一方で、「医療保険なんてまどろっこしいものは不要!自費施術だけで十分!」と考えている人には無用だろう。
ただし、人生何が起こるかわからない。
例えば「途中で、自身の考えに変化が起こることも」あり得るだろう。
そんな時、「1年間も務めなければ施術管理者になれない」というのは大きな障壁となり選択肢を狭めてしまうことになるのではないだろうか?
ちなみに、医療保険の制度改変は2年ごとに行われる。
でもって、少子高齢化社会における「社会保障財源がひっ迫」により、制度改変により「改悪」は有りえる「改良」は期待できない。
そんな中、「施術管理者になるための条件」がもっと厳しくなる可能性は十分にあり得る。
人生の選択肢を広げる手段は、早めに取得しておいて損は無いのではないだろうか。
対象施設の探し方
最近は、施術管理者要件の特例に係る実務研修の対象施設になる施術所もチラホラと出てきているようだ。
数万円の受講料は取られるが、「すぐに開業したい」「接骨院・施設・病院などの職場(鍼灸あん摩マッサージ施術所以外の職場)で働くことになったため、(いくら働いても「臨床経験」としてカウントされない」といった人たちにとっては数万円で1年間という時間と資格を取得できるため、双方にとってWin-Winだと感じる。
でもって、対象施設を能動的に探すのもアリですが、12月くらいからチラホラと「特例を受けませんか?」と学校側に案内が届くケースも多い。
そのため、学校事務に(このホームページを見せるなりして)特例の存在を伝え、資料が届いたら教えてもらうようお願いしておくのもアリだと感じる。
実は、この制度はあまり知られていない。
私も、学校の事務に制度を伝えたところ「知らなかった」との答えが返ってきた。
私がこの特例を利用するために学校の「問い合わせフォーム」に記載割いた内容は以下になる。
○○学校昼間部3年の○○です。 学校で直接質問するよりも、URLを添付できる書面で質問したほうが良いと思い、今回問い合わせフォームを利用しました。
将来、訪問マッサージを開業しようと思っており、施術管理者になるために、どこかの施術所で1年間実務経験を積むことを想定していました。 ですが最近、特例があることを知りました。 特例とは具体的に「卒後に一定条件を満たした施術所で49時間の研修を受けることで、1年の実務経験が免除される」というのもです。 特例に関する公文書は以下となります。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/20210212_01.pdf
是非この制度を活用したいのですが、このような研修をしていただける○○学校関連の施術所を紹介していただきたいです。
また、学校附属施術所で、この様な研修をしていただくことは可能でしょうか?
特例を使用するかどうかで、その後の進路も大きく変わってくるので、ぜひ情報提示をよろしくお願いします。
結局、学校側は(色々な事情を根拠に)附属施術所での研修を許可してくれなかったが、「期間限定の措置である点」「医療保険を使っての開業を目的に入学した人もいる点(僕もその一人)」を考えると、受け入れてくれる学校もあるのではと感じる。
※この制度は、あん摩マサージ指圧師だけでなく鍼灸師にも該当するので、鍼灸師学校の人も交渉してみる余地があると思う。
また、上記が難しいケースであっても「卒業生の施術所で、7日間研修をしてくれないか学校側にお願いしてもらう」というのもアリだと思う。
以上を踏まえ、特例対象施術所の見つけ方としては以下などが考えられる。
- 自身で能動的にネットで見つける。
- 学校に「対象施術所からの特例研修案内」が来たら教えてもらうよう伝えておく。
- 学校の附属施術所で7日間研修を受けれないか交渉してみる。
- 開業している学校卒業生で「対象施術所になってくれる人」を、学校に探してもらう。
今後は実務経験2年の時代が到来する!?
今回紹介した特例は、柔道整復師の特例を踏襲(真似て)作られたようだ。
でもって、柔道整復師は特例のフェースを終えて次の段階へ移行している。
それは「施術管理者になれる要件として、実務経験1年⇒実務経験2年へ変更」だ。
今回の特例が柔道整復師の制度を踏襲していることから、このフェーズが終わった後の制度変更も踏襲される可能性が高い。
この様にして時代を先読みして情報を得ておくと、自身の決断にも役立つはずだ!
柔道整復師の制度変更については以下の動画も参照してみてほしい。
参考文献
この記事は以下の公文書を参考に記載している。
正確な情報を求める方は、以下のリンク先参照+厚生労働局へ問い合わせてみてほしい。
⇒『厚 生 労 働 省 保 険 局 長( 公 印 省 略 )はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件に係る令和3年度から令和7年度までの特例について』
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