「あはき療養費検討専門委員会」の議事録要約(2026年3月4日開催)

制度・社会情勢

この記事は、2026年3月4日に開催された「あはき療養費検討専門委員会」の議事録要約である。

 

1.7%という低調な経営実態調査結果が報告されたほか、高齢者施設における不適切な訪問施術ビジネスやマージン問題への対策、訪問施術制度のルール化について議論された。

 

また、オンライン診療による同意書交付の禁止方針で一致したことに加え、料金の包括化、自己施術の制限、長期・頻回施術の基準見直し(月16回から月10回への引き下げ提案等)など、多岐にわたる意見交換が行われた。

 

目次

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1. 会議の概要

 

日時・議題

令和8年(2026年)3月4日開催。「あはき療養費の令和8年度改定の基本的な考え方(案)について(その2)」を議題として議論が行われた。

 

 

2. 事務局からの説明(論点提示)

 

経営実態調査の報告

対象の約2万6,000施術所のうち、有効回答率は1.7%と低迷した。収益状況は、個人が8割、法人が2割弱であり、法人は賃上げや定期昇給を実施している傾向があるが、個人の多くは賃上げできていない実態が報告された。

 

訪問施術制度の見直し

サービス付き高齢者住宅などの施設と施術所が経営一体化し、同意書取得を代行する事例が報告された。

令和8年度診療報酬改定における訪問看護の見直し(同一建物居住者への評価細分化など)を参考に検討するとされた。

 

施術部位数による料金包括化

頻度調査のデータを見ながら検討される課題であり、粗療や稼働率重視による収入増の懸念が提示された。

 

その他の論点

明細書:患者への明細書交付の推進と、それに伴う「明細書発行体制加算」のような評価の検討。

 

受領委任制度:健康保険組合の参加率が20%程度にとどまっている課題。

 

自己施術・自家施術:療養費の支給対象外とする取扱いや、禁止規定のあり方についての整理。

 

同意書:オンライン診療による同意書交付の取扱いの明確化や、安易な発行への懸念への対応。

 

回数制限等:マッサージの1日当たりの施術回数(1日1回への明確化等)や、長期・頻回施術(現在「1年以上、月16回以上」を対象とする理由書添付等)の基準見直し。

 

 

3. 委員による意見交換:前半(実態調査・訪問施術・包括化)

 

経営実態調査について

回答率1.7%という結果に対して、施術側・保険者側双方から「実態を反映していない」「今後の料金包括化の議論の妨げになる」との指摘があった。

また、施術側からは「数字上は収益増に見えても、現場の肌感覚としては物価高騰などの影響で経営は非常に厳しい」との声が上がった。

 

訪問施術における不適切事例と対策

事例の報告往田委員より、一部の高齢者施設において、施術所から施設側へ「業務委託料」等の名目でマージンが支払われている事例や、施設と施術所が経営一体化して患者を囲い込んでいる事例の資料が提出された。

 

対策の提案往田委員は、マージン支払い等を明確に禁じること、施設内部からの告発体制の整備、特定の施設への集中度合い(集中率)に応じた減算措置などを提案した。保険者側(幸野委員)もこれに強く賛同した。

 

訪問施術制度のルール化

幸野委員から、訪問看護を参考に、1回当たりの標準時間の設定や、訪問日数・単一建物居住者数による料金の細分化が提案された。

 

「訪問施術内訳表」の復活提案

幸野委員より、実態把握と審査効率化のために往療内訳表に代わる「訪問施術内訳表」の提出義務化が提案されたが、施術側(往田委員)は事務負担の増加に見合わず、現行のレセプト記載事項で施設の偏在は把握可能だと反論し、本件は事務局預かりとなった。

 

料金包括化

実態調査の回答率が低くエビデンスが不足しているため、今回は継続課題とすべきとの意見が保険者側・有識者から出された。

 

 

4. 委員による意見交換:後半(自己施術・同意書・明細書・施術回数など)

 

自己施術・自家施術

施術期間が長期化しやすい特性を踏まえ、何らかの制限規定を導入すべきとの意見が出された。

 

オンライン診療による同意書交付

あはきの対象患者は高齢で多病を抱えていることが多いため、オンライン診療での同意書交付は不適切(そぐわない)であり、明確に禁止すべきとの意見で施術側・保険者側が一致した。

 

同意書の運用と記載内容

修正ルール:同意書の署名に関する修正・訂正ルール(訂正印や署名の義務化)を疑義解釈等で明記するよう要望があった。

 

医学的見地の記載(保険者側):患者の希望のみでの安易な同意書発行を防ぐため、医師が「適当な治療手段がない」と判断した医学的見地・理由を同意書に記載させる欄を追加するよう提案があった。

 

現行ルールの遵守(施術側):すでにはり・きゅうの6疾患等については運用ルールが確立しており、新たな記載義務はルールを複雑にするため、現行通知の遵守を求めるべきとの反論があった。

事務局も、支給基準の大きな見直しには時間が不足しているとし、運用面での検討にとどめる意向を示した。

 

明細書発行の評価

明細書交付に対して評価(加算)が設けられる場合、現行で認められている「患者がサイン・押印したレセプトのコピー交付」についても同様の評価対象とするよう要望が出された。

 

長期・頻回の基準見直し

実効性を高めるため、現在の「月16回以上」を「月10回以上」に引き下げるべきという提案(幸野委員)に対し、複数の症状を持つ患者にとって施術のハードルを上げてしまうため慎重に議論すべきとの反論(角本委員)があった。

 

 

参考資料

 

参考資料は以下となる。

 

外部リンク:第36回社会保障審議会医療保険部会 あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会議事録(2026年3月4日)

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