血(けつ) | 東洋医学における生理物質③

東洋医学

この記事では、東洋医学における「生理物質」である(けつ)について解説していく。

 

血の生理

 

血の生理として以下を記載していく。

  • 血の生成
  • 血の作用・運行

 

血の生成

 

『血』の素材は営気津液である。

後天の精(水穀の精微)から営気と津液が作られる

 

血の生成には大きく分けて以下の2つがある。

  • 飲食物からの生成
  • 精からの生成

 

飲食物からの生成

飲食物から得られる後天の精(水穀の精)の陰分である営気と水分である津液が合わさり、栄気の気化作用により血となる。

心は五行ではに属し、その火の力で血を赤くする。

血は肺の呼吸作用により新鮮さが保たれる。

 

精からの生成

腎に蓄えられている精(先天の精・後天の精)は、血の構成成分となる。

また、血は全身に精を運ぶ役目があるので、精と血の関係を精血同源(せいけつどうげん)と呼ばれる。

 

 

血の作用と運行

 

血の作用

血の作用は「滋養」と「神の維持」である。

 

滋養

営気とともに脈中を流れ全身を栄養して滋養する。

滋潤と栄養が正常⇒顔面は赤く潤い、筋肉は充実し、皮膚や毛髪は潤沢で通夜がアリ、感覚が鋭敏で運動能力も俊敏。

 

神の維持

「神」とは生命活動そのものである。つまり血は、生命活動そのものを維持するためにも重要ということ。

血は精神活動にも欠かせなく、血が満ち、血の流れが順調であれば、精神が充実し意識が明瞭となる。

関連記事⇒『神・神気(しん・きんき) | 東洋医学における生理物質⑤

 

 

血の運行

血は(全身の各臓腑や組織・器官に必要とされる栄養を供給するために)脈中を走行し絶えず全身をめぐっている。

血はに属しているので、単独では動くことが出来ない。そのため、心気肺気の推動作用が必要。

また、血が脈外に漏れずに運行するためには「営気の固摂作用」と「脾気の統血作用」が必要となる。

血の運行が正常であるためには、推動作用と固摂作用の間に調和と平衡が維持されなければならない。

血は営気とともに血中をめぐると夜、臥床時に五臓の肝に戻る。これを肝の蔵血作用(ぞうけつさよう)と呼ぶ。

また、肝は活動時に「蔵血されている血を必要なところに必要な分だけ送る作用」もある。

※肝は「将軍の官」である。

 

  • は「ポンプ作用」と「肺の呼吸作用」により全身に血を送る
  • は「血が脈から漏れ出ないようにすること(=統血)」と「血の生成
  • は「血を貯めておく機能(=蔵血)」があり、血量の調節をする。また、血を流れをスムーズにする。

 

血の病理

 

血の病理としては以下が挙げられる。

  • 血の不足による病態(虚血)
  • 血の運行失調による病態(血瘀)

 

血の不足による病態(虚血)

 

虚血(きょけつ)とは「血の不足(や滋養減退)によって生じる病態」を指す。

具体的には以下の場合などで生じる。

  • 脾胃虚弱で飲食物から十分な栄養を得られず、血の生成が不足する場合
  • 慢性疾患により徐々に血が消耗される場合
  • 大量に出血し血の新生が追い付かずに補充出来ない場合

※臓腑や経絡は血よって滋養されているため、全身の栄養が不足し、様々な生理機能が衰退して虚弱の兆候があらわれる。

 

症状は血に関する臓腑、中でも「蔵血作用のあるの機能」・「血脈を作るの機能」に異常が現れやすい。

また、これらの臓腑の五行に属する器官に出やすい。

 

肝の症状

肝の症状は以下などが出やすい。

  • 五官では「」なのでかすみ目・視力減退
  • 五体では「」なので筋の痙攣・痺れ
  • 五華では「」なので爪の変形

上記は五行色体表を参照。

心の症状

心では以下などが出やすい。

  • 五官では「舌」なので色が蛋白色
  • 五体では「血脈」なので顔面蒼白・めまい
  • 五華では「面色」なので瘀血

上記は五行色体表を参照。

肝・心の症状から、何となく「貧血」をイメージすると想像つきやすい。

 

血の運行失調による病態(血瘀)

 

血瘀

血瘀(けつお)とは「血の循環が遅滞して流れが悪くなっている病態」を指す。

一方で瘀血(おけつ)とは「血瘀のためにできた病理産物」を指す。

※瘀血により、新たな瘀血を生じることもある。

上記の様に血瘀と瘀血は同義語ではないのだが、一般的には混同して用いられることも多く、どちらかと言うと「瘀血」という用語が使われる傾向にある。

 

さまざまな原因により瘀血が生じ、特に気の流れとの関係が重要である。

気は陽に、血は陰に属し、気血は陰陽の関係があるので相互に依存しあう。

 

気は血に対して推動作用があり、血は気に対して滋養作用がある。

このため「気の不足(気虚)により推動作用が低下し、血の流れが悪くなり瘀血が生じたもの」を気虚血瘀と呼ぶ。

また「気の流れの悪さ(気滞)により瘀血が生じたもの」を気滞血瘀と呼ぶ。

 

他に「外傷・寒邪・血虚・血熱など」も血瘀の原因となる。

 

症状では重要なのは固定の刺痛腫塊チアノーゼ

腹診では左下腹部に抵抗や硬結がある少腹急結(小腹急結)

 

血熱

血熱とは「体に無駄な熱がこもって血に波及し血のめぐりが加速した病態」を指す。

情志が鬱結(特にイライラ)したり、辛いものや味の濃いものを過食したりして体内に熱がこもる。

血熱では熱症状(発赤や発熱)だけでなく、血の異常なめぐりによる出血、熱により体の陰液が損傷され陰虚と同じような症状として潮熱五心煩熱盗汗などが出る。

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