気(き) | 東洋医学における生理物質②

東洋医学

この記事では、東洋医学における「生理物質」である(き)について解説していく。

 

気の生理

 

気の生成

 

気には、父母から受け継いだ「先天の精気」、飲食物から得た「後天の精気(=水穀の精微)」、さらに大気(空気)から得た清気の三つが結びついて生成される。

気の種類と分布

 

人体の気はいくつかに分類され、組成や分布及び機能の特徴に応じてそれぞれ固有の名称がつけられており以下が挙げられる。

  • 原気
  • 宗気
  • 営気
  • 衛気

+正気邪気清気濁気

 

上記をまとめて「真気」と呼ぶ。

 

 

原気(=元気・先天の気)

原気(げんき)は、五臓ではとの関係が深い。

生命活動の原動力(食欲・性欲など)となる。

両親から受け継いだ「先天の精」が気に変化したもので、臍下丹田(せいかたんでん)に貯えられている。

原気は「後天の精」によって補給される。

原気の機能は人体の成長発育を促し、各臓腑・経絡を温めて生理機能を促進しているため、原気が満ちていれば疾病に罹りにくい。

 

宗気

宗気(そうき)は、五臓ではとの関係が深い。

宗中(膻中)に集まる気で、「肺によって取り込まれた清気」と「脾胃によって生成された後天の精」が結びついて生成される。

宗気の作用は以下の2つである。

  • 気道を通り呼吸を行うこと(そのため、発生や呼吸の強弱は宗気の盛衰を反映しやすい)
  • 心に働き気血を運行させること(そのため、心拍の強さや律動性は、宗気の盛衰を反映しやすい)

 

営気

営気(えいき)は、五臓ではとの関係が深い。

営気は「と一緒に脈中をめぐる気」を指す。

脾胃の働きによって得られた陰性の栄養分「水穀の精」からなる。

営気の作用は以下の2つである。

  • 栄養すること(全身の血中をめぐって臓腑や経絡を養う)。
  • 血の構成成分となる(これにより血が脈外に漏れないようにしている)。

 

衛気

衛気(えき)は、五臓では肺との関係が深い。

営気が脈内をめぐるのに対して、衛気は脈外をめぐる

脾胃の働きによって得られた陽性の栄養分「水穀の精」からなる。

衛気は活動性が高く、動きが非常に速い

衛気の作用は以下の3つである通り。

  • 体表を保護して外邪の侵入を防ぐこと。
  • 肌肉皮毛を調節して汗の排泄を制御し、体温を一定に保つこと。
  • 腠理の開闔(そうりのかいごう)を調節して、汗の排泄を制御し、体温を一定に保つこと。

昼間に『陽の部(経絡の陽経)』を25周、夜間に『陰の部(経絡の陰経)』を25周する。

衛気の力が弱くなる(虚する)と体表を守れないため、邪気が侵入しやすくなる。

例えば衛気の力が弱まって、風邪(ふうじゃ)が入ってくることで風邪(かぜ)をひくなど。

 

営気は内を守るので陰に属し、衛気は体表で防御するので陽に属する。

営気と衛気は常に調和しあう必要がある。営衛の調和が保たれ始めて、正常な腠理の開闔や体温の維持、外邪に対する防御能力の維持が出来、昼に活発で夜に眠くなるという生活リズムが可能となる。

営衛の調和が崩れた状態では、腠理の開闔がうまくできず外邪に犯されやすくなり悪寒や発熱、無汗あるいは多汗などのほか、営衛のめぐりが悪くなるために昼に活力が無く夜眠れないなどの症状が現れる。

 

正気

邪気の対立概念として、邪気から体を守る機能(抵抗力・回復力)を指す。

 

臓気・経気

各臓腑・経絡を構成する最も基本的な物資。

 

邪気

疾病の発病因子。

 

清気

「水穀の精微」中の清らかな成分、または大気中の正常な精微物質。

この場合「自然界の清気」と表現される。

 

濁気

体にとって不必要になった物質。

 

気の作用

 

気には生命活動を維持するうえで必要な生理機能が多数あり、具体的には以下の通り。

  • 推動作用(すいどうさよう)
  • 温煦作用(おんくさよう)
  • 固摂作用(こせつさよう)
  • 防御作用
  • 気化作用

 

推動作用

様々な生理活動(血の運行)や新陳代謝を行い、人を成長・発育させる。

推動とは「推進する・前進する」という意味で、全ての気に備わっている。

 

温煦作用

人体において気は熱源にもなる。人の体温は気に温められることで維持される。

温煦作用は原気衛気と関係が深い。

 

固摂作用

「固摂作用(こせつさよう)」とは、「人体の液状物質(血や汗、尿など)が身体から外に流出しないようにつなぎとどめる働きのこと」を指す。

固摂作用は以下と関係が深い。

  • 営気(血が脈から漏れないように)
  • 衛気(汗が出過ぎないように)
  • 腎気(尿や精液が漏れないように)
  • 脾気(血が脈から漏れないように=これを「脾の血統作用」と呼ぶ)

 

防御作用

人体の体表を守り、邪気の侵入を防ぐ

防御作用は、衛気との関係が深い。

 

 

気化作用

気化作用とは、「気の運動によって生じる様々な変化のこと」で「体内における物質代謝の過程」を指す。

例えば「先天の精が原気に変化する」というのは「腎気の気化作用」と表現する。

 

 

気の運動

 

気の運動は『気機(きき)』と呼ばれ、以下の4つの運動からなる。

 

(しょうこうしゅつにゅう)

 

気の病理

 

気の病理は以下の2つに大別できる。

  • 気虚(気の不足による病態)
  • 実証(気の滞りによる病態)

 

気虚(気の不足による病態)

 

気虚は以下の3つに分類される。

気虚

気虚(ききょ)は、飲食物の摂食不足(=飲食不節)や、大病・過労・臓腑の機能低下により気の化生不足により起こる。

症状は倦怠感・自汗・短気を主とする(3主徴)。他に眩暈や懶言(らんげん)・易感冒など。

※上記の主3徴から、気虚は「暑くて気だるい感じ」をイメージすると良い。

自汗とは⇒自然と出る汗のこと(動くと一層ひどくなる)。

短気とは⇒息切れのこと。

懶言とは⇒気だるい話しのこと。

 

気陥

気陥(きかん)は、慢性ってきな気虚・過労・多産などにより、気の上昇不能が起こり内臓下垂・慢性の下痢など、下に落ちる現象が特徴である。

  • 内臓下垂には胃下垂・脱腸・子宮脱などがあり、脾の昇清作用(組織・器官を正常な位置に保つ作用)の低下が関係する。
  • 脾の運化作用(飲食物を水穀の精微に変化させて、吸収し心や肺に運ぶ作用)の低下により慢性下痢が起こる。

 

気脱

気脱(きだつ)とは、慢性的な気虚を指す。極度の過労、大量出血などにより気虚が極限にまで悪化した病態のこと。意識を失ったりなど重篤なことが多い。

 

実証(気の滞りによる病態)

 

気鬱・気滞

気鬱(きうつ)は、気機が鬱結して軽度な循環障害が起こったもの。

気滞(きたい)は、気鬱が進み程度が強くなったもの。

気鬱と気滞の境界線は曖昧なので、「気滞」という表現が用いられることが多い。

気の滞りは時に流れたり、また滞ったりするので増悪と緩解を繰り返すという特徴がある。

痛みが出現する場合は、張るような感覚の痛み(張痛:ちょうつう)が出やすい。また、気の流れが悪いので胸の不快感(胸悶:きょうもん)、抑鬱感、消化機能も低下するので腹部の膨満感などが症状としてあらわれる。

 

気逆

気逆とは気の上昇運動が過度となったもの。

情志の失調や邪気により、下降すべき気が下降せずに上昇して症状を表す病態を指す。

そのため、体の上部に反応があらわれやすく、イライラしやすい。怒りっぽい(易怒:いど)、頭痛や眩暈、曖気(あいき=げっぷ)吃逆(きつぎゃく=げっぷ)などの症状が出やすい。

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