精(せい) | 東洋医学における生理物質①

東洋医学

この記事では、東洋医学における「生理物質」である(せい)について解説していく。

 

精の生理

 

精とは「生命の根源」と解釈されており以下の2つに分類される。

  • 先天の精
  • 後天の精

 

 

先天の精

 

先天の精とは以下を指す。

 

両親から受け継いだ精のこと。

 

「先天の精」は、出生後、にしまわれる。

 

足りないと、体の発育知能の発達が遅れたり、寿命が短くなるとされている。

 

「(後述する)後天の精」により補充される。先天の精が腎の気化作用により気に変化すると原気となる。原気は、腎と臍下丹田に集まって人体の基礎として働く。

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先天の精は、生きていくうえで徐々に減っていく。

したがって、後天の精で補ってあげる必要がある。

 

 

後天の精

 

後天の精とは以下を指す。

 

飲食物より得られる栄養物質のこと。

 

「後天の精」は「水穀の精(or 水穀の精微)」と同義である。

 

「後天の精」は脾胃(ひい)で作られる。

 

「後天の精」は陰と陽に分けられ、陰分は営気陽分は衛気になる。

以前の教科書では「営気を水穀の精気」、「衛気を水穀の悍気」と呼んでいた。

 

営気・衛気の役割は以下の通り。

  • 営気⇒津液と合わさって出来るとなり体をめぐる。
  • 衛気⇒体を防御する。

 

後天の精は、生きている限り徐々に減っていく先天の精を補給する。

そのため、飲食物をとらなければ死んでしまうという解釈されている。

 

「若い人」や「養生をしっかりしている人」は、精が盛んで生命力を含めてすべてが充実しているため、疾病になりにくい。

しかし、老いや過労などにより精が不足すると生命力が弱まり、病にも罹りやすくなる。

 

精の作用

 

精の作用は以下の5つ。

  • 生殖
  • 滋養
  • 血への化生
  • 気への化生
  • 神の維持

 

生殖

腎の機能が、ある一定程度まで充足すると天癸(てんき:生殖機能の成熟を促す物質)が産生され、生殖能力が備わる。

女子では14才男子では16才

 

滋養

組織・器官の生理機能は、精が充足していれば正常に働く。

 

血への化生

精、特に「後天の精」は血の構成成分となる(=血への化生)。

また、血は臓腑・器官に精を運び、正常な生理作用を発揮させている。

このような「精と血の関係」を精血同源という。

 

気への化生

精は気にも変化する(=気へ化生)。

精は以下に変化する。

  • 先天の精⇒原気に変化
  • 後天の精⇒栄気衛気宗気

 

精が不足すると栄気・衛気・宗気も不足する。また、気が不足すると固摂作用の低下により「精」を過度に消耗する。

 

固摂作用とは:

生理物質を正常な場所にとどめ、やたらに流失するのを防ぐ作用のことである。気は血の脈外への流出、津液の過度な排泄、精の不要な流出を防ぐように働き、その結果、正常な分泌や排泄などが維持される。

 

神の維持

精が充足すると、神(生命活動の総称・精神活動)がしっかりしている。

 

精の病理

 

精は不足になることで様々な症状が起きる(精が過剰になることは少ない)。

 

精虚

 

精虚とは、精が不足した病態のことを指す。

 

特に精虚は、に蓄えられている精が不足するので腎精不足(じんせいぶそく)とも呼ばれる。

 

原因

精虚の原因は以下の通り。

  • 飲食不足⇒「後天の精」が作られない
  • 長患(過労多産堕胎房事過多)⇒いずれも「先天の精」を消耗する。

その他に、先天の不足、出血、大量の発汗などによる。

 

症状

精虚による症状は以下などが挙げられる。

  • 成長不良⇒先天の精の不足のため生じる。
  • 不妊症・陽萎(勃起不全のこと)⇒精は生殖能を主っているため生じる。
  • 腰膝酸柔(足腰のだるさ)⇒加齢による「先天の精」の消耗により、骨を満たすことが出来ないため。
  • 耳鳴り・難聴・頭髪の脱毛・健忘⇒髄海(脳のこと)を滋養出来ないために生じる。

 

ほかに、虚弱体質、無力感などの症状が起こる。

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