【イラスト解説】外側腋窩隙(QLS:クアドリラテラルスペース)・内側腋窩隙・上腕三頭筋裂孔 の位置・構成組織

整形外科 - 疾患まとめ(整形外科)

この記事では、外側腋窩隙・内側腋窩隙・上腕三頭筋裂孔に関して、イラストを交えながら位置・構成組織(+通過する神経・動脈・静脈)を解説している。

 

とくに外側腋窩隙(QLS:クアドリラテラルスペース)は肩周囲へのアプローチを考えるうえで欠かせない部位なので、ぜひ確認しておいてほしい。

 

外側腋窩隙・内側腋窩隙・上腕三頭筋裂孔とは

 

外側腋窩間隙・内側腋窩隙・上腕三頭筋裂孔の概要は以下になる。

 

外側腋窩隙(QLS:quadrilateral space)

外側腋窩隙は「大円筋・小円筋・上腕二頭筋長頭・上腕で構成される四角形の間隙」であり、後上腕回旋動・静脈や腋窩神経が通る。

 

内側腋窩隙(triangular space)

内側腋窩隙は「大円筋・小円筋・上腕三頭筋長頭で構成される三角形の間隙」であり、肩甲骨回旋動・静脈が通る。

 

上腕三頭筋裂孔(triceps hiatus)

上腕三頭筋裂孔は「大円筋・上腕三頭筋長頭・上腕骨で構成される三角」であり、上腕深動脈と橈骨神経が通る。

 

これらをまとめたイラストが以下になる。

 

 

こんな症状に効果的!

 

ここから先は外側腋窩隙(QLS)と上腕三頭筋裂孔にフォーカスし、これらを通過する腋窩神経・橈骨神経が絞扼された際の症状を記載していく。

 

上記を知ることで、これら症状を訴える患者に対しては、この部位の滑走性を良くしてあげれば即自的に症状を改善させられることになるので、ぜひ覚えておいてほしい。

 

外側腋窩隙(QLS:quadrilateral space)

 

もし肩後面から外側の疼痛が見られたらQLSにて腋窩神経が絞扼されて症状が出現している可能性がある(=四辺形間隙症候群)。

 

以下がQLSである。

 

従って疼痛誘発テストとしてQLSに起因する症状かどうかを検証すると良い。

 

テスト①症状誘発部位の圧痛を確認

疼痛部位に圧痛があるかどうかを確認する。

もし圧痛が見られれば「その部位」に原因が存在する可能性があるが、圧痛がみられなければ別の部位(今回のケースではQLS)に問題がある可能性が出てくる。

 

テスト②肩甲骨を固定した状態で、他動外転時の疼痛誘発を確認

肩甲骨を固定した状態で、他動外転時をすると、QLSの狭小化が強調される。

従って、QLSでの問題であるならば疼痛誘発or増強がみられる。

このテストでは以下が生じている。

  • 小円筋⇒QLSにて腋窩神経を後方から圧迫
  • 大円筋⇒QLSにて腋窩神経を前方から圧迫
  • 上腕三頭筋⇒QLSにて腋窩神経を下方から圧迫

 

テスト③肩関節の水平屈曲(=水平内転)強制での疼痛誘発を確認

肩関節の水平屈曲(=水平内転)を強制すると、「QLSの狭小化」のみならず「腋窩神経への伸長ストレスを加えること」が出来る。

このテストでは以下が生じている。

  • 小円筋⇒QLSにて腋窩神経を上方から圧迫
  • 上腕三頭筋⇒QLSにて腋窩神経を下方から圧迫
  • 腋窩神経への伸張刺激

※腋窩神経に対する「絞扼+伸張」で疼痛を誘発させる。

 

 

治療

「QLSの狭小化による腋窩神経の絞扼」「QLS周囲軟部組織と腋窩神経の滑走障害」が症状の原因だと特定できた場合、その治療方法は無数に存在する。

ストレッチング・等尺性収縮後弛緩(Ib抑制)・相反抑制(Ia抑制)・軟部組織モビライゼーションなどである。

自身の特異な手技を施行し、効果判定をしてみよう。

QLS原性疼痛であれば、きっと症状が改善(ROM制限がある場合、それも改善)しているはずである。

 

(この記事の内容からは外れるが)大円筋・上腕三頭筋も同様に、攣縮が生じた状態で挙上していくと、QLSの狭小化につながるので、これらも評価⇒治療することは重要となる。

なので、小円筋・大円筋の等尺性収縮を用いたROMexで肩関節挙上可動域が改善される理由となる。

 

 

上腕三頭筋裂孔(triceps hiatus)

 

上肢を挙上した際に上腕後面に疼痛を訴える場合がある。

その場合は「上腕三頭筋裂孔による橈骨神経絞扼」により「後上腕皮神経の知覚領域に症状が出ている可能性」も疑ってみよう。

 

上腕三頭筋裂孔は橈骨神経が通過する部位であり、以下となる。

三頭筋裂孔で橈骨神経の絞扼や滑走障害がが生じた場合、(橈骨神経由来の)後上腕皮神経の知覚領域に症状が出現する場合がある。

 

※後上腕皮神経の知覚領域は以下の通り。

 

繰り返しになるが、上肢挙上時に上記部位の知覚異常が生じていた場合「三頭筋裂孔による絞扼障害」を疑う。

この場合も、上肢挙上に肩関節後面に疼痛を訴えるケースも多いが、上記イラストを診てもらえば分かるように、後上腕皮神経の知覚領域は肩関節よりも末梢にあるため区別できる。

このケースでも、前述したQLSの様に「症状誘発部位に圧痛が無いか」を確認することも有用となる(圧痛が無ければ、症状部位事態には問題が無く、別部位の関連痛である可能性が高くなる)。

 

治療

このケースでは、三頭筋裂孔を形成している大円筋や上腕三頭筋長頭に対する柔軟性改善・筋スパズムの是正がといったアプローチが奏功ことになる。

 

 

まとめ

 

上肢挙上時に疼痛を訴える場合、どの部位に疼痛が生じるかを確認することは基本となる。

そして、「イレギュラーな部位の疼痛」として以下を覚えておき、症状出現部位や圧痛所見(が無ければ絞扼由来な可能性が高い)、症状誘発テストなどで鑑別・治療していくと治療成績は格段と高まる。

  • QLSにおける腋窩神経絞扼 + 腋窩神経前枝の(三角筋前・中部における)滑走障害
  • 三頭筋裂孔における後上腕皮神経の絞扼

 

関連記事

 

ここで紹介した内容以外にも「関連痛によって生じる疼痛」としては以下などを紹介しているので合わせて観覧してみてほしい。

 

⇒『肩関節の関節包後下方からの関連痛←QLSの狭小化にも関与!

⇒『腋窩神経前枝の滑走障害【触診・治療方法も解説】

⇒『結滞動作で起こりやすい「外側前腕皮神経」領域の知覚障害!

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