肩関節包後下方の関連痛←QLSの狭小化にも関与!

整形外科 - 疾患まとめ(整形外科)

この記事では「肩関節包後下方」の関連痛について記載している。

 

以下などの症例には肩関節包の後下方が刺激されることのによる関連痛な可能性があるので、ぜひチェックして臨床に活用してほしい。

 

上肢最大挙上時になぜか上腕外側(三角筋中部線維など)に疼痛訴えあるが、三角筋に圧痛は無い。

 

 

上腕外側(三角筋中部線維の辺り)へ関連痛が生じる機序

 

肩関節包後下方の関連痛が上腕外側に生じる機序は以下の通り。

  1. 「肩関節包の後方~後下方」は腋窩神経に支配されている。
  2. 上肢挙上時には「関節包後下方の緩み」が必要となってくる。
  3. にもかかわらず、この関節包が過度に硬くなっていると、上肢挙上時の関節包への侵害刺激が加わる。
  4. 前述したように「肩関節包の後下方は腋窩神経支配」なため、腋窩神経の固有知覚領域である上腕外側に関連痛として疼痛が生じてしまう。
  5. 上腕外側に疼痛が生じているにもかかわらず、その部位(三角筋部)に圧痛が無い場合は、関節包の後下方に問題があるのではないかと考えることが出来る。

 

関連痛の作用機序

 

そもそもの関連痛作用機序の理解には以下のイラストを参考にしてみてほしい。

 

関節包に加わった侵害刺激(知覚刺激)は上行性に伝わるのだが、脊髄神経とシナプスする過程において、(同じく腋窩神経の固有知覚領域である)上腕外側の侵害刺激が入力経路との混線が起こりやすく、脳が(関節包ではなく)上腕外側に刺激が加わっていると誤解してしまうことで生じる。

 

脳は「上腕外側の侵害刺激である」と知覚しているが、実際は関節包後下方への侵害刺激が原因。

症状を訴えている「上腕外側」に様々なアプローチをしても何も変化が起きない(実際に問題があるのは関節包後下方なため)。

 

関節包への刺激⇒QLSの狭小化

 

ここまで関節包の関連痛について解説してきたが、ここから先は以下の機序を解説していく。

関節包刺激⇒小円筋攣縮⇒QLS狭小化⇒腋窩神経の知覚領域へ症状出現

 

機序

機序は以下の通り。

  1. 上肢挙上時に後下方部に侵害刺激が加わると、同じ腋窩神支配であり、かつ関節包後下方に一部が付着する小円筋にも攣縮が生じる。
  2. 小円筋に攣縮が生じていると、挙上時に小円筋による後方からの圧迫が強くなり、QLSの狭小化⇒腋窩神経が絞扼され、上腕外側に痛みが生じる可能性がある。

 

以下の記事ではQLS(外側腋窩間隙)や腋窩神経前枝について、機能障害の機序や治療も含めて解説した記事である。

同じ「腋窩神経由来の関連痛」として、是非合わせてチェックしてみてほしい。

 

 

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