「あはき療養費検討専門委員会」の議事録要約(2026年1月30日開催)

制度・社会情勢

この記事は、2026年1月30日に開催された「あはき療養費検討専門委員会」の議事録要約である。

 

令和8年度改定に向けた3.09%の改定率や物価高騰への対応、特に訪問施術における不正な「ビジネス化」やマージン問題への対策、受領委任制度の在り方について議論が行われた。

 

目次

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1. 会議の概要

 

日時・議題

令和8年(2026年)1月30日に開催され、「あはき療養費の令和8年度改定の基本的な考え方(案)」について議論が行われた。

 

新座長の選任

遠藤委員の退任に伴い、新たに安川文朗委員が座長に選任された。

 

 

2. 事務局からの説明(令和8年度改定に向けた論点)

 

令和6年度改定の振り返り

往療料が見直され、複数患者に対する同一日・同一建物への施術等に対応する「訪問施術料」が創設された。

 

令和8年度の改定率

診療報酬本体の改定率がプラス3.09%(賃上げや物価高騰対応を含む)と決定されたことが報告された。

 

主な検討事項

令和8年度改定の主な論点として、「訪問施術制度の在り方(見直しの要否)」、「物価高騰等への対応」、「料金の包括化(出来高算定の見直し)」が提示された。

なお、オンライン請求の導入については柔道整復の動向を見るため、今回は大きな論点としない方針が示された。

 

 

3. 施術側からの意見(物価高騰と経営の厳しさ)

 

コスト上昇への対応要望

小林委員より、使い捨ての鍼が1本12円から15円に値上がり(25%増)するなど衛生用品全般が高騰している実態が報告された。

施術料金は公定価格(上限・下限が固定)であるためコスト吸収が難しく、診療報酬のプラス改定(3.09%)と同様の賃上げ・物価高騰対応を強く要望した。

 

厳しい経営状況

往田委員より、施術者の75%が月商50万円以下という厳しい経営実態が報告された。

また、逢坂委員からも、個人事業主が多くを占める視覚障害を持つ施術者の生活が物価高騰で非常に圧迫されているとの切実な声が上がった。

 

4. 訪問施術ビジネスと不正対策に関する議論(最大の焦点)

 

制度の悪用と過剰請求の懸念

往田委員より、令和6年の訪問施術料導入によって、施設内の複数患者全員から訪問費用を算定できるようになり、不適切な囲い込みが起きていると指摘があった。

 

 

マージン(紹介料)の問題

一部の施設で、患者紹介の対価として施術側から施設側へ「事務取扱手数料」等の名目で1人当たり月5,000円程度の金銭が支払われている実態が暴露された。

往田委員は、特定の施設に施術が偏る(集中する)場合の支給制限や、施設への金品提供の明確な禁止を提案した。

 

保険者側の強い危機感

幸野委員は、介護施設等を複数経営する事業者が患者を囲い込み、青天井である医療保険のマッサージを過剰に利用させる「訪問マッサージビジネス」が横行していると強く批判し、これを社会問題として厳しく規制すべきだと主張した。

幸野委員の要請に対し、往田委員はマージン契約等の証拠(エビデンス)の提出を今後検討することになった。

 

不正検知の難しさ

橋本委員からは、後期高齢者のあはき不正請求(水増し等)が数件発生しているものの、患者本人が気付きにくく家族の通報頼みになっている現状が報告され、システムを用いた不正検知の開発を進めていることが共有された。

 

 

5. その他の議論(包括化、同意書、受領委任制度)

 

医師の同意書の問題

幸野委員より、医師が患者に頼まれるまま安易に同意書を出しているケースや、ビジネス事業者が患者に代わって同意書を取得するケースが問題視された。

往田委員は、「医師による適当な治療手段がない」という要件ははり・きゅうのみの要件であり、マッサージには適用されないため、保険者の調査においては現行制度の正確な理解に基づく対応を求めた。

 

料金の包括化について

幸野委員は、訪問施術の動向把握や不正対策を先に行わなければ、包括化は稼働率重視の「粗療(雑な施術)」を助長する危険性があると指摘した。

角本委員は、現在すでにある「長期・頻回警告通知」による制限の実態を踏まえて議論すべきだと述べた。

 

受領委任制度への参加

小林委員より、患者の立替負担(償還払い)を減らすため、全ての保険者に受領委任制度へ参加してほしいとの要望が出された。

これに対し幸野委員は、受領委任制度が患者の目を盗む不正の温床になっている面があり、不正対策が徹底されることが先決であると反論した。

一方で往田委員は、受領委任制度の本来の目的は保険者間で情報を共有し不正を防ぐことにあるため、全保険者が参加して仕組みを作るべきだと主張した。

 

 

参考資料

 

参考資料は以下となる。

 

外部リンク:第35回社会保障審議会医療保険部会 あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会議事録(2026年1月30日)

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