東洋医学概論のキーワード集。
国家試験に向けてこれだけは 最低限覚えよう。
第1 章 基礎理論
天人合一思想
人体の形と機能とが、天地自然と相応しているとみる思想。
天地人三才思想
天の陽 気と、地の陰気とが調和することによって、人の気が生成されるとする思想。
大宇宙・小宇宙
- 大宇宙:人の生命体。または、自然界のこと。
- 小宇宙:人体の内部の仕組み。または、自然界を大宇宙と見たとき人体のこと。
心身一如
精神と肉体は一体であるという考え方。東洋医学独特の考え方。
反対語に近いのは「 心身二元論 」
陰・陽
右は陰 。自分が南を向いたときに太陽が西右に沈むから。
左は陽 。自分が南を向いたとき に 太陽が東左から昇るから。
関連記事⇒『陰陽学説、何が陰で、何が陽? 覚え方を解説』
陰陽論の特徴
陰陽論の特徴は以下の4つ。
- 対立と制約
- 相互依存
- 消長平衡
- 相互転化
対立と制約
陰陽は相反するもので、相手を制約している。
しかし、自分に足りないものを補ってもらう関係でもある。
相互依存
相対する別の一方が存在することによって自己の存在がある。
陰陽どちらか一方だけで、存在することはありえない。
消長平衡
陰陽は制止した不変の状態ではなく、不断の運動変化がありそれによりバランスを保っている。
量的な変化の過程。
相互転化
陰または陽が極まったときに全く反対のものになること。
量的な変化の結果による 質的な変化 。
五行論
- 木・・・性質は曲直
- 火・・・性質は炎上
- 土・・・性質は稼穡
- 金・・・性質は従革
- 水・・・性質は潤下
五行色体表を覚えるのは鉄板。
関連記事⇒『五行学説を詳細解説!! 「五行の色体表」は丸暗記しないと国試に落ちる(PDFダウンロードもできるよ)』
また、五行の「相生関係」・「相克関係」を色体表から導き出せるように!!
関連記事⇒『五行学説とは | 「相生・相克・相乗・相侮の関係」も解説!!』
第2 章 東洋医学の人体の考え方 + 第 3 章 東洋医学の疾病観
先天の精
- 両親から受け継いだ精(生命の根源の物質)のこと。
- 腎にしまわれる。
- 後天の精によって補給する。
- 気に変化すると原気 となり、 臍下丹田にあつまる。
- 生殖や成長に重要な役割を果たす。
- 房事過多により消耗する。
後天の精
- 飲食物より得られる精のこと。
- 脾胃で造られ、気や血の素となる。
- 先天の精を補給する。
神気(神)
( 広義) 魂・神・意・魄・志 などがあるが、色体表の五神と何が対応しているかが国試では重要。
神
(狭義 ) 精神活動・知覚活動などを 主り、心が関係する。
現代でいうところの脳の働きである。神(心)が乱れると、不眠や幻想、言語障害などが起こる。
気
気には原気 ・ 宗気 ・ 営気 ・ 衛気がある。
原気
先天の精が気に変化したもの。
後天の精によって補給され、臍下丹田にあつまる。生命活動の原動力となる。
腎が深く関わる。
宗気
後天の精と天の気(酸素)が交わって、胸中 (膻中) にあつまる気。
心と肺と関係が深い。
不足すると、結脈・代脈 (整脈)が起こる。
営気
後天の精から得られる 陰性の気(水穀の精気) 。
脾で造られ 血とともに脈中をめぐる 。
一日に人体を50周めぐる。
衛気
後天の精から得られる 陽性の気(水穀の悍気)。
脈外をすばやくめぐり、 体温保持・ 腠理の開闔・ 外邪からの防御作用がある。
昼間に陽の部を25 周、夜間に陰の部を25 周する。
気の作用
気の作用には以下がある。
推動作用・温煦作用・防御作用・固摂作用・気化作用
推動作用
一切の生理的活動および 新陳代謝をする働き。
全ての気に備わる。
温煦作用
組織を温め、体温を保持する働き。
衛気・原気 と関係が深い。
防御作用
外邪の侵入を防御する働き。
衛気と関係が深い。
固摂作用
血が脈外へもれないようにしたり、汗や尿、精液がむやみに漏れ出るのを防ぐ働き。
- 営気・脾気 の固摂作用の低下⇒血が脈外へもれる。
- 衛気の固摂作用の低下 ⇒汗が出る。 自汗など。
- 腎気の固摂作用の低下 ⇒精液が漏れ出る(遺精)。失禁。
気化作用
先天の精が原気に 変化した り、 後天の精から血や津液を作り出したりする働き。
血・津液
血
後天の精から作られ、 津液と営気が素材となる。
営気とともに脈中を流れる 。
脈外にもれないようにしているのは、脾気と営気の固摂作用である 。
夜、臥床時に肝に戻り、活動時に必要に応じて全身に送られる(肝の命令により。将軍の官)。
津液
体内の正常な成分。
津が陽性で、液が陰性。
臓腑
臓
神気を内に蔵している実質器官のため陰に分類される。
肝・心・脾・肺・腎・心包がある。
腑
飲食物を受け入れ、消化して次の器管に送り、排泄などに関係する中空器官のため陽に分類される。
胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦がある。
奇恒の腑
形態は腑 に似るが、性質や働きは臓 に似ているもの。
骨・髄・脳・脈・胆・女子胞 がある。
関連記事⇒『臓象:奇恒の腑(胆・女子胞・脈・脳・髄・骨)』
肝 |
・第 9 胸椎に付着 ・「将軍の官、謀慮出づ」 ・五行では木の性質(曲直) ・足厥陰肝経 ・表裏関係は胆 ・「疏泄を主る」: すみずみまでゆきわたらせる意、転じて肝の不調によりおこる症状は怒りっぽい・イライラする。 他の症状は目が赤い・胸脇苦満・脈弦・口苦などである。 ・血を蔵す |
心 |
・第 5 胸椎に付着 ・「君主の官、神明出づ」 ・五行では火の性質(炎上) ・手少陰心経 ・表裏関係は小腸 ・意識的・無意識的活動(神を蔵す)を主り、現在の脳の役割に近いので心の不調によ |
脾 |
・第 11 胸椎に付着 ・「倉廩の官、五味出づ」←これは表裏関係の胃も一緒 ・五行では土の性質(稼穡) ・足太陰脾経 ・泥状便=脾の病 ・「運化を主る」: 水穀から後天の精や血、営衛の気などを吸収し、全身に送り出す元であること。不調により、下痢や便秘が出る。 ・「昇清を主る」: 水穀から吸収したものを胃から肺へ送ること。転じて、臓腑などが下へ下がらないようにする働きがある。不調により、下痢・便秘・内臓下垂・全身倦怠が出る。 ・「統血を主る」: 血が脈外からもれないようにし、順調にめぐるようにする働き。不調により出血・血便・血尿・不正性器出血がおこる。 |
肺 |
・第 3 胸椎に付着 ・「相傅の官、治節出づ」 ・五行では金の性質(従革) ・表裏関係は大腸 ・「宣発作用」: 濁気をはき出す、津液や気を全身にめぐらす、腠理の調節。不調により咳嗽・くしゃみ・鼻閉・無汗・自汗。 ・「粛降作用」: 清気(空気)を吸い込んだりそれにより気道をきれいしたり、津液を腎・膀胱に下ろしたりすること。不調により咳きこむ・喘息が出る。 ・「水の上源」: 胃から運ばれた津液を全身に散布すること。不調により浮腫が出る。 |
腎 |
・第2腰椎に付着 ・「作強の官、伎巧出づ」 ・五行では水の性質(潤下) ・足少陰腎経 ・表裏関係は膀胱 ・「納気を主る」: 吸気を臍下丹田まで入れる深い呼吸に関わること。不調になると浅い呼吸や呼吸困難となる。 ※「呼吸=肺」のイメージが強いが、腎もサポートしているので注意! ・生殖、老化は腎が関係する |
心包 |
・第4 胸椎に付着(心包兪というのはない!厥陰兪) ・「臣使の官、喜楽出づ」 ・手厥陰心包経 ・表裏関係は三焦 ・働きは「心の守衛」 |
関連記事⇒『臓象:五臓(肝・心・脾・肺・腎)+心包』
胆 |
・第10 胸椎に付着 ・「中正の官、決断出づ」 ・表裏関係は肝 ・足少陽胆経 ・奇恒の腑の一つ |
小腸 |
・第 1 仙椎に付着 ・「受盛の官、化物出づ」 ・表裏関係は心 ・手太陽小腸経 ・「清濁の泌別を主る」: 胃からの消化物をまだ使えるものと使えないものに分ける。使えるものは脾の昇清作用によって再利用。使えないものは水物は前の膀胱に、固形物は後の大腸へ送る。そのため、小腸の熱病は尿が赤くなる。 |
胃 |
・第12 胸椎に付着 ・「倉廩の官、五味出づ」←これは表裏関係の脾も一緒 ・足陽明胃経 ・「降濁作用」: 消化した水穀を下の小腸へ下ろすこと。胃に熱を持つと消穀善飢を起こすことがある。 |
大腸 |
・第4 腰椎に付着 ・「伝導の官、変化出づ」 ・表裏関係は肺 ・手陽明大腸経 |
膀胱 |
・第2 仙椎に付着 ・「州都の官、津液蔵す」 ・表裏関係は腎 ・足太陽膀胱経 |
三焦 |
・第1 腰椎に付着 ・「決瀆の官、水道出づ」 ・表裏関係は心包 ・上焦・中焦・下焦の 3 つに分かれる。 |
関連記事⇒『臓象:六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)』
外感病因(六淫)と内傷病因(七情)
外感病因(六淫)
外感病因(六淫)は風・暑・湿・燥・寒・火の六つを指す。
外邪とも言う。
風 |
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暑 |
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燥 |
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寒 |
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火 |
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内傷病因(七情)
怒(木)・喜(火)・思(土)・悲(金)・憂(金)・恐(水)・驚(水)・ 飲食不節・労倦・房事過多
不内外因
飲食不節・労倦・房事過多・外傷(旧教科書の記載)
三毒説
水毒・食毒・血毒
経絡病証
経絡病証はとにかく経絡の流注が大切。
奇経八脈
督脈・任脈・衝脈・帯脈・陰維脈・陽維脈・陰蹻脈・陽蹻脈。
独自の経穴を持つのは 督脈(背部側) ・任脈(腹部側) 。
関連記事『【計365穴】正経十二経(+督脈+任脈)をイラスト付きで完全網羅!!!』
その他
八綱
陰陽・表裏・寒熱・虚実の八つ
表裏
病(邪)が深いところにあるか浅いところにあるか。
深いところにある方が進行している。
寒熱
体内の陰陽が偏盛したり、偏衰したりして熱の状態になるか冷え(寒)の状態になるか。
疾病の 性質・病情ともいう。
虚実
邪気と正気の戦いの現れ。
虚は正気の不足 ・ 実は邪気の亢進。正邪の盛衰・病勢ともいう。
陰陽
陰陽は表裏・寒熱・虚実を総合したもので、裏・寒・虚は陰に、表・熱・実は陽に分類される。
気虚
気が減退した状態。
息切れ・自汗・倦怠感。
気の五つの作用(推動・温煦・固摂・防御・気化)が低下する。
但し、 温煦作用 が低下すると冷えが出るので陽虚。陽虚は気虚が進んだ状態。
血虚
脾胃の機能低下などにより栄養が吸収されずに起こる。
めまい・立ちくらみ・顔色萎黄などが出る。
陰虚
五心煩熱・盗汗・夜間潮熱・口渇が症状。
第4 章 診断論
四診法
四診法は望診(神技)・ 聞診(聖技)・ 問診(工技)・ 切診(巧技)を指す。
望診(神技)
視覚を使う。 顔色 ・ 舌診 ・ 皮膚の色などを診る。
聞診(聖技)
嗅覚・聴覚を使う。五香 五臭 ・ 五声・五音
問診(工技)
患者や付添人にたずねる。
寒熱 ・汗・飲食(五味)・二便・疼痛・月経・睡眠・五主・五液 ・五労
切診(巧技)
脈診 ・ 腹診 ・ 切経
四診法にまつわるキーワード
顔面の五臓配当
- 額―心
- 左頬―肝
- 右頬―肺
- 鼻―脾
- 顎―腎
舌の五臓配当
- 舌尖―心 (肺)
- 舌辺―肝胆
- 舌根―腎
- 舌中―脾
潮熱
一定の時刻に出る発熱。 陰虚証では夜間潮熱。
往来寒熱
悪寒と発熱が交互に繰り返すもの。 半表半裏証。
自汗
自然と出る汗。気虚で見られる。
盗汗
寝汗。陰虚証で見られる。
頭痛
- 太陽経頭痛(後頭部):(足太陽膀胱経の流注上)
- 陽明経頭痛(前額部):前額部あるいは眉間にかけて痛む(足陽明胃経の流注上)
- 少陽経頭痛(側頭部):両側または一側の側頭部が痛む。(足少陽胆経の流注上)
- 厥陰経頭痛(頭頂部):頭項部が痛む(足厥陰肝経の一部が頭頂部へ行き、督脈と交わる)
※頭頂部痛と厥陰経が結びつきにくいので整理!
喜按・拒按
- 喜按・・・虚証
- 拒按・・・実証
祖脈
浮脈・沈脈・遅脈・数脈・虚脈・実脈
六部定位脈診
左手
・左寸口部=心(沈)・小腸(浮)
・左関上部=肝(沈)・胆(浮)
・左尺中部=腎(沈)・膀胱(浮)
右手
・右寸口部=肺(沈)・大腸(浮)
・右関上部=脾(沈)・胃(浮)
・右尺中部=心包(沈)・三焦(浮)
腹部の五臓配当
- 臍の上 ―心
- 臍の左―肝
- 臍の右―肺
- 臍の下―腎
- 臍―脾
胸脇苦満
肝胆の病。半表半裏証。
小腹不仁(臍下不仁)
腎の病。
小腹急結(少腹急結)
左下腹部の抵抗や硬結。瘀血証で見られる。
虚里の動
心尖拍動
虎口三関の脈
脈診ではないことに注意!
小児の望診法で示指を見る。(新教科書には記載なし)
メモ
- 奇数は陽
- 左側は陽
- 凸 は陽
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