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五臓(肝・心・脾・肺・腎)+心包 | 臓象①

東洋医学
五臓(肝・心・脾・肺・腎)+心包 | 臓象①

この記事では、臓象における「五臓((肝・心・脾・肺・腎臓)+心包」について解説している。

 

五臓それぞれの生理機能の間には、一定の均衡、協調関係や制約しあう関係がある。

 

また、五臓と身体の一部との連絡、あるいは五臓と精神・情諸活動との関係を通じて、体内と体外は連絡しあっている。

 

これにより相対的なバランス、協調を維持している。

 

目次

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肝は「将軍の官」⇒謀慮に出ず

 

肝の形態と位置

  • 右脇にあって第9胸椎に付着している。
  • 形は七葉からなっていて出入り口はない。
  • 重さは二斤四両。

 

肝兪のイラストは以下になる。

 

肝の生理機能

 

肝は疏泄を主る

疏泄(そせつ)とは「よどみなく、隅々まで行き渡る」という意味。

肝が五行のに属するため、曲直の性質であるということから肝にはこの様な働きがある。

 

情志の調節:

疏泄機能が正常であれば、気や血の流れが良いので情志(精神の情緒)の調節もよく、気持ちも明るくなる。

疏泄機能が失調し、気のめぐりが亢進した状態を疏泄の太過といい、急躁怒りっぽいなどの症状が現れる。

また、疏泄が失調し、気のめぐりが滞った状態を疏泄の普及といい、抑うつ感気分が落ち込むなどの症状が現れる。

 

気の運動(気機)の調節:

疏泄機能が正常であればが円滑に流れ臓腑や機関が正常に機能し、生理物質の作用も十分に発揮することが出来る。また血の流れもスムーズである。疏泄の失調により、気のめぐりが悪くなれば気滞を、血のめぐりが悪くなれば血瘀を、津液のめぐりが悪くなれば痰湿を引き起こす。

 

脾胃の働きの手助けと胆汁の分泌の調整:

疏泄機能は「脾の昇清」と「胃の降濁」を助ける。

また、疏泄機能は胆汁の分泌を管理している。

胆汁には、脾胃の消化を助ける働きがあるため、疏泄が失調すると、腹部の症状が出現する。

 

月経の調整:

疏泄機能は、衝脈任脈という子宮に関係する経絡から血を子宮に送る作用に関わるので月経とも関係が深い。

そのため、疏泄機能が失調すると月経痛月経不順などの症状が起こる。

 

「疏泄機能の異常」と「異常により生じる現象」は以下の通り。

疏泄機能の異常 現象
気の流れへの影響 気持ちがふさぐ、怒りっぽくなるなど
血の流れへの影響 月経の異常、目の充血など
脾胃の働きへの影響 下痢、便秘など
胆汁の流れへの影響 黄疸、口が苦い
精神活動への影響 鬱々とする、怒りっぽい、不眠など
月経への影響 月経痛、月経不順など

 

 

肝は血を蔵す(肝臓血)

「静かに休んでいるとき」や「睡眠時」は最低限の血を各部分に送り、残りは肝に貯蔵しておく。

一方で「激しい運動などで沢山瘀血が必要になったとき」は、それに応じて必要なところに沢山の血を送る(将軍の肝)。

※夜眠くなるのは体中をめぐっていた血が肝に戻るためである。

 

肝に蔵されている血は肝陰としての働きがあり、肝の疏泄機能である肝陽の亢進を抑える役割がある。

※蔵血と疏泄が正常に機能することにより、肝の陰と陽のバランスが取れることになる。

 

肝に蔵されている血(肝血)が不足すると、転筋しびれなどが起こり、疏泄が亢進しやすくなる(疏泄の太過)。

 

疏泄が亢進すると、蔵血と疏泄のバランスが崩れ血の貯蔵が出来なくなり出血症状(嘔吐喀血衄血崩漏)などが起こる。

※衄血(じくけつ)=鼻血のこと

※崩漏=不正性器出血のこと

 

 

肝の生理特性

 

肝の生理特性は昇発条達である。

これは、肝が五行の木の性質(曲直)から来ているものである。

 

昇発

昇発とは「上へ、外へ気のめぐりの方向性」を表し、疏泄の太過になると頭痛やめまいなどの症状が起こる。

 

条達

条達とは「生理物質を隅々まで行き渡せること」であり、疏泄の不及になると気滞を中心とした症状が起こりやすくなる。

 

関連領域

 

肝はに開竅する(五官:目)、肝の液はである(五液:涙)

肝の蔵血疏泄機能が正常であれば、物をよく見る事が出来る。涙は目から出るので肝の液である。

例として、疲労時やストレスが強い時のか「すみ目」や「目の渇き」

 

肝はと主る(肝主筋)、肝の状態はに反映する(五華:爪)

筋とは「骨・関節とつながり、運動を受け持つもの(筋肉・腱など)」。

肝の働きが正常であれば、の配分もうまくいくため筋の柔軟性も動きも正常である。

爪は筋の余り(筋余)とされ、筋の延長である。そのため、肝の状態が爪に現れる。

三余:髪は血の余り血余、歯は骨の余り骨余、爪は筋の余り筋余

 

肝はを蔵す(肝臓魂)

判断力や計画性、思索、評価・謀慮などの精神活動を支配する。

身体の活動を円滑に行わせたり、休息を指揮する。

 

肝臓の志は(五志:怒)

肝の特性が昇発であるため、疏泄の太過により気が過剰に上昇し怒という情志として現れる。また、怒が急激あるいは長期間続くと肝の機能失調が起こる。これを怒が肝を傷るという。

 

肝の味は(五味:酸)

酸味を適度に摂取すると肝を栄養する。

 

「肝」における正常 or 病的 な状態は以下の通り。

正常な状態 病んでいる状態

・四肢の筋肉が力強く運動し、頭に血が上り過ぎないため体の動作がスムーズにでき、適切な行動がとれる。

・熟睡が出来る。

・爪に弾力があり、つやが良く、程よく赤みを帯びている。

・良くものが見え、また物を判別することが出来る

・涙で、目がほどよく潤ている

・イライラしたり、オドオドしたりして適切な行動がとれなくなったり、筋に力がなくなったりひきつれて痛くなったりして動作がスムーズにできなくなる。

・夢を多く見たり、寝言を言うようになる。

・爪の色やつやが悪くなったり、変形したりする。

・目が疲れやすくなったり充血したりする。

・目が乾燥したり、逆に涙目になったりする。

 

 

 

心は「君主の官」⇒神明出づ

 

心の形態と位置

  • 横隔膜の上にあって第5胸椎に付着している。
  • 形は、赤い蓮の花のつぼみの形をしている。
  • 重さは十二両。

 

心兪のイラストは以下になる。

 

心の生理作用

 

心は血脈を主る(心主血脈)

心には血の運行を推進するポンプとしての働きがある。血が脈内を運行できるのは、心気と営気の推動作用である。

心の正常な拍動は、気の中では宗気によって行われ、宗気が充実していれば心の収縮力や心拍数、推動作用が正常に維持され血は脈内を絶え間なく循環して全身に栄養を与えることが出来る。よって宗気の失調などにより心の機能が悪くなると心悸・怔忡・不整脈などが起こる。

※心悸(しんき)は動悸と同義。

※怔忡(せいちゅう)とは「動悸が重症化した状態」である。

 

心は神志を主る

神志とは、生命活動を維持する機能、精神・意識・思惟活動を主宰する機能のことを言う。

 

生命活動の維持:

心には心拍や呼吸、行動、感覚などあらゆる生命活動を維持する機能と深く関わっている。

 

精神活動の主宰:

心には五神の」中の「神」という精神活動を統率・制御するものが蔵されていると考えられているため、昔、精神疾患は脳の病ではなく心の病と考えられてきた。

また、腎に蔵されている精も精神活動には重要な役割がある。

ただし、現在の中医学では心や腎だけでなく、脳の病とも捉えている。

現在は「精神活動=脳」だと判明しているが、昔は「心が精神活動を主っている」と考えられていた。

 

心の生理特性

 

全身の陽気を主る

心は五行では「火」に属し、五臓の中では「腸中の陽」であり、君主の官である。

そこで心の陽気=心火は君火とも呼ばれ、意味は「君主のような威光をもつ火」ということから、君主が弱ると国も弱くなるように心火が弱ると体中が弱ると考えられていた。

このことから、心火には全身を温める作用があると考えられる。

 

臓腑を統括する

心は君主の官であり、神を蔵していることから全身の臓腑の管理をしていると考える。

 

 

関連領域

 

心はに開竅する(五官:舌)、心の状態は面・色に反映する(五華:面色)

華とは色艶の意味。顔面部は血脈が豊富なため、心の状態が顔面に現れる。

舌は顔面同様に血脈が豊富なため、心の状態がに現れる。

 

心の液はである(五液:汗)

汗の源も血の源も津液であるため、血の流れを支配している心は汗とも関係がある。

例)夏の汗かきすぎ⇒血液が濃くなる⇒心に負担をかける

 

 

「心」における正常 or 病的 な状態は以下の通り。

正常な状態 病んでいる状態

・脈が規則正しく、力強く働く。

・顔の色つやが良く、柔軟で動きが良い。普通に話すことができ、味を正確に感じる。

・必要なときに、適度に汗が出る。

・心悸(動悸)、脈が弱くなる、不整脈(結代脈)

・顔のつやが無くなり、顔色が白くなる。

・舌が白くなり、むくんでいるような状態や痩せたような状態になる。味覚異常・言語障害が出る。

・無汗・自汗・盗汗

※自汗(じかん)とは「汗が出やすい状態」を指す。

※盗汗(とうかん)とは「寝汗をかいてしまう状態」を指す。

※心は舌を主っていることから、味覚にも影響を与える(ただ、五役において「心=臭」であり「脾=味」なので混乱しないように)。

 

 

補足:心包

 

心包は「臣使の官」⇒喜楽出づ

 

心包の位置

  • 心包は、別名膻中、心包絡ともいう。
  • 心包は第4腰椎に付着する。

 

厥陰兪のイラストは以下になる。

 

 

心包の働きは以下の2つである。

  • 心が直接邪を受けると死に至るため、心を包んで保護し、心の代わりに邪を受ける。
  • 心が最も信頼する器官(臣使の官)であるため、心の命令(情や神)を外に伝えたり(喜楽出づ)、外から入ってくる情報をチェックする。

 

心包は心の外側を囲んでいる組織であり、心に代わって邪を受け、心を保護する作用がある。例えば、熱邪が心に侵襲する場合は、まず心包が外邪の影響を受ける。また、心の陽気は一度心包に集められてから全身に散布されるように、心包むは心に代わって機能する。

~新版東洋医学概論P95より引用~

 

 

脾は「倉廩の官」⇒五味出づ

 

脾の形態と位置

  • 脾は第11胸椎に付着している。
  • 形は、袋状で胃の上に覆いかぶさっている。
  • 重さは二斤三両。

 

脾兪のイラストは以下になる。

 

脾の生理作用

 

脾は運化を主る。

運とは運送・運輸を、化とは消化・吸収を意味する。

運化とは、飲食物から水穀の精微を取りだすことと、それを心や肺に運ぶ作用のことをいう。

 

飲食物を水穀の精微に変化させる:

飲食物の消化吸収には胃と小腸も関わるが、全身をめぐる気や血の大本である水穀の精微を作り出すのは「脾の運化作用」が重要である。このため、脾は気血生成の源と言われる。

運化が失調すると、食欲不振となり、飲食物から水穀の精微が作りづらくなるため、それから作り出される気・血・津液・精が不足することになる。特に、津液が体内に停滞すると痰湿という病態を起こし(生痰の源)、津液がそのまま流れ出ると軟便や下痢が起こる。

 

水穀の精微を心や肺に運ぶ:

運化には水穀の精微を心や肺に運ぶ作用もあるが、このことを特に昇清作用と呼ぶ。水穀の精微は心や肺の気を受けて気・血・津液・精に化生されて全身をめぐる。

 

脾は統血を主る:

統とは、統制あるいは制御を意味する。

脾には血を脈内に維持して血が脈外に漏出するのを防ぎ、順調にめぐらせる働きがある。統血作用が失調すると、血便や血尿・崩漏、皮下出血などの出血症状が現れる。

脾は営気を作り出すので営気の固摂作用と同じような働きがある。

 

脾の生理特性

 

脾は昇清を主る

昇は上昇運動のこと、清とは後天の精などの栄養物質のこと。

脾気には上昇させる性質があり、吸収した栄養物質を心や肺に上らせる作用を昇清という。

昇清の意味を広くとらえて、臓腑・器官が下がらないように繋ぎとめる役割が脾にある。

食べたら脾の昇清によって上昇させ、肺の宣発により、噴水のようにきらきらと全身へ行きわたらせるイメージ。

きれいなものを昇らせて、組織・器官を正常な位置に保つ働きがある。

従って、脾が弱ると、内臓が下がる(胃下垂など)

 

喜燥悪湿

「喜」は好む、「悪」は嫌うの意味で、脾は生痰の源であるため湿が溜まりやすい臓である。また、脾は五行の「土」、湿も「土」に属するため脾は湿邪に好まれる。脾に湿が溜まると、運化がうまくいかず、後天の精を作りづらくなるため脾は湿を嫌い、乾燥を好む臓器である。

 

「運化・昇清・統血の異常」と「異常により生じる現象」は以下の通り。

運化・昇清・統血作用の異常 現象
運化作用の異常  
昇清作用の異常 内臓下垂(脱肛・胃下垂・子宮脱など)、全身倦怠、慢性下痢、四肢無力など
統血作用の異常 皮下出血、血便、血尿、女性の不正性器出血など

 

 

関連領域

 

脾はに開竅し、液はである(五官:口、五液:涎)

口とは「食欲」や「味覚」の意味も含む。

涎とは、唾液の中でも特にサラサラしたものを指す。口腔内を潤し口腔粘膜を保護し、水穀を摂取する際に分泌量を増やして、嚥下や消化を助けている。

 

脾は肌肉を主り、その状態はに反映する(脾主肌肉、五華:唇)

肌肉とは「皮下組織(脂肪組織・結合組織)の総称」。

脾の働きが正常で、血が作られ、血と営気がすみずみまで行き渡ると、肌肉に張りがあり手足が良く動く。

脾は気血生成の源であるから、水穀が入る唇の色艶で全身の気血の状態が反映される。また唇の厚薄は脾の強弱を表す。

脾の働きが正常であれば、食欲や味覚が正常であり、唇の色艶もよい。

 

 

「脾」における正常 or 病的 な状態は以下の通り。

正常な状態 病んでいる状態

・営気が血と共に脈中をめぐることにより、血が脈外へ漏れるのを防ぎ、全身に栄養を与え活力となる。

・手足がきびきびと良く動く。

・味覚が正常で、食欲があり唇の色艶も良い。

・口の中が適度に潤っている。

・腹痛、下痢などの消化・吸収の異常が生じ、元気がない、全身倦怠、出血などの症状が出る。

・手足がだるく、力が入らない(四肢無力)。またやせ細り、張りも無くなる。

味覚が鈍り、食欲不振などがあり、唇の色艶が無くなったり、荒れたりする。

・口中が渇いたり、流れすぎて口中から溢れるようになる。

 

 

 

肺は「相傅の官」⇒治節出づ

 

相傅(そうふ)の「傅」は扶ける(たすける)という意味があり、肺は心の働きをたすけている。

肺の形態と位置

  • 肺は第3胸椎に付着する。
  • 肺は諸臓腑の蓋となっており、形は蓮華の花が開いたようで、八葉に分かれ、各葉には3つずつ穴があいて気が出入りする。
  • 重さは三斤三両。

 

肺兪のイラストは以下になる。

 

肺の生理作用

 

肺は宣散・粛降を主る(=宣粛作用)

※宣散は=宣発と同義。

 

宣発を主る:

宣発とは、発散し広く行きわたらせるという意味で、気や津液を上や外へ動かすということである。

宣発作用は、体内の濁気を排出したり(呼気)、脾の昇清作用によって肺に運ばれた後天の精(衛気として)や津液を全身に散布し、皮毛に到達させる働きのこと。

皮毛に到達した後天の精は衛気として全身をめぐり、腠理の開闔(そうりのかいごう)を調節し発汗を調節する。

宣発作用が失調すると呼気がうまくいかず咳嗽や呼吸不利、衛気の散布が不足すると自汗や易感冒となる。衛気が不足し腠理の開闔(そうりのかいごう)が行なえなくなることを衛表不固または衛外不固という。

※衛表不固・衛外不固は「腠理の開闔が開きっぱなしになっている状態」を指す。

 

粛降を主る:

粛降とは静粛・清潔にする、下降させるという意味で、気などを下や内へ動かすということである。粛降作用には自然界の清気を取り入れたり(吸気)、全身に送られた津液を下の臓腑(腎・膀胱)に集めたり、胃の降濁、大腸の伝導作用の補助の役割がある。また、清気を取り入れることにより気道の異物を取り除き、気道や肺を清潔に保つ。

肺は従革(じゅうかく)とも言われ、このように言われるのは脾によって送られた津液を全身にまぐらせて腎に輸送するまでの水分代謝を人体の上部で行っているからである。水分代謝における粛降作用を水の上源という。

粛降作用が失調すると、吸気がうまくいかなくなるため息切れや喘息、胃の降濁や大腸の伝導が上手くいかなくなるため便秘、通調水道が上手くいかなくなるため浮腫や多痰などの症状が起こる。

 

 

 

宣発・粛降の協調運動:

宣発と粛降は、お互いに相反する動きである。

そのため、相互に制約しあうが依存もしている。

もし宣発に異常があれば粛降にも異常が起き、粛降に異常があれば宣発にも異常が起こる。先発と粛降がともに正常であって初めて気道の通りが滑らかになり、調和の取れた呼吸のもと、ガス交換が正常に行われる。

また、気や生理物質の推動も正常に運行される。

特に血の運行に関しては、心から血脈内に出された血は肺で新鮮なものにされ(ガス交換により)て、全身にめぐらされる。

血のめぐりの主な原動力は心であるが、肺は心の働きを扶けて(たすけて)いるので「相傅の官(そうふのかん)」と言われる。また、血を新鮮なものにする際に肺に朝められる(あつめられる)ので「百脈を朝ず」とも言われる。

宣発と粛降の協調運動が失調すると胸悶や血流障害、咳嗽、息切れなどが起こる。

 

 

気を主どる

肺の気を主る作用には「呼吸を主る作用」と「一身の気を主る作用」の2つがある。

 

呼吸を主る:

肺は呼吸を通じて天の気(清気)を取り入れ、不要な気(濁気)を吐き出して体の内外の気を交換している。この絶え間ない気の交換は、気の生成を促し、気のめぐりも調節し、血の推動、津液の散布などに役立っている。また、肺の呼吸にひより気・血・津液を全身にめぐらすための調節と管理をしているので「治節出ず」と言われる。治節とは、管理する・調節するという意味である。

 

一身の気を主る:

肺は呼吸運動により全身に気をめぐらせ調整している。

肺は「一身の気を主る」とも言われる。

 

肺の生理特性

 

華蓋と嬌臓

 

華蓋とは、肺の臓腑の中で最も高い位置にあり、「他の臓腑に蓋をして保護をする役割」と「衛気をめぐらして外邪の侵襲を防御している役割」があることをいう。

 

嬌臓とは、脆弱な臓器であることを指す。カゼを引いたときに、肺に関係する鼻や喉に影響が出ることからも想像できる。

 

関連領域

 

肺はに開竅し、その液はである(五官:鼻、五液:涕)

肺は鼻を通じて清気を取り入れ、古い気(濁気)を吐き出す。

涕とは、鼻の粘膜から分泌されて鼻腔を潤す粘膜をいい、鼻水に当たる。

 

肺は皮毛を主る(肺主皮毛)

皮毛とは皮膚や汗腺、産毛(うぶげ)など身体の表面を覆う組織の総称(ちなみに、皮毛より深部にあるのが肌肉)。肺は衛気津液をめぐらせることによって皮毛に潤いを与え、これを覆う。

皮毛は衛気とともに外邪の侵入を防ぐ役割があるので、肺の働きが正常であれば環境の変化に素早く対応できる。

 

 

「肺」における正常 or 病的 な状態は以下の通り。

正常な状態 病んでいる状態

・呼吸が深くゆっくりと正しく行われ、発声もつやがあり力強い。

・皮膚や毛の色艶が良い。

抵抗力があり、簡単にカゼをひいたりしない。

鼻の気の通りは良く、呼吸や嗅覚が正常。

・呼吸の異常(痰・咳・少気・短気など)や発声の異常が起こる。

・皮膚や毛は潤いや輝きを失う。

・抵抗力が弱り、カゼを引きやすい。

・鼻がつまる、嗅覚が鈍る。

 

 

 

腎は「作強の官」⇒伎巧出づ

 

腎の形態と位置

  • 腎は第2腰椎に付着する。
  • 黒紫で石の玉の形をしており、胃の下の両側に1つずつある。
  • 重さは1斤一両。

 

腎兪のイラストは以下になる。

 

 

腎の生理作用

 

臓腑

腎は精を蔵す:

腎に蔵されている精を(腎精)といい、先天の精と後天の精の余剰分が腎にしまわれている。

腎精は生命活動の維持に深く関与するため、腎は漏れ出ないようにしている。

腎精が充実していると根気があり忍耐強さがあり(作強の官)、また細やかな動作、機敏な動作(伎巧)ができる。

 

精の機能:

腎精が充足すると天癸(てんき)がつくられ、生殖能力が備わり、子供を作ることが出来る。

男女の精が結びついて生まれた「新しい精」は、誕生後、「先天の精」として腎の中にしまわれる。先天の精は、後天の精による補充が必要である。腎精は、骨や髄を滋養するので体の発育や知能の発達(脳は髄海ともいう)に関係し、また生殖能力の低さや髄海を滋養出来ないために耳鳴り、難聴、脱毛、健忘などが起こる。

 

生命活動を調節する:

生命活動の根源でもある(原気)は先天の精が化生した物であるので、腎精が不足すると元気もつくられなくなるため倦怠感や無力感が起こる。

 

腎は水を主り、全身の水分代謝を調節する(主水)

脾の運化作用で水穀から分離した津液は、昇清作用で肺に送り宣発・粛降作用で全身に散布する。

腎に到達した津液で不要なものは尿として処理するために膀胱へ送られ、まだ使えるものは再度肺へ送られる。このため、腎は津液を主ると言われる。

腎の機能失調により津液が肺に送られなくなると痰湿となり浮腫が起こり、水液の排泄障害をきたすと、下痢・小便不利(排尿の回数が少なく、尿量の少ないもの、排尿困難の総称)、小便頻数(尿意、排尿回数が増加するもの、いわゆる頻尿)が起こる。

 

 

腎は納気を主る

納気とは「気を納める」こと。呼吸をして肺が取り入れた清気を深く引き込んで腎に納めることをいう。腎精が活性化する。

呼吸といえば「肺」をイメージしやすいが、腎も関与している(肺を補助している)。

 

「納気作用の異常」と「異常により生じる現象」は以下の通り。

納気作用の異常 現象
納気の異常 呼吸が浅くなる、息切れや喘息、呼吸困難などが現れる。
腎気の虚損により、気虚による症状を伴うことがある。

 

生理特性

 

封臓

封臓とは以下の特性を指している。

  • 腎がを漏らさず貯える
  • 納気によって気を内に納め、水液代謝により必要な水分を維持するという役割を担っている

 

陰陽の根本

後天の精からだけでなく腎精からもつくられた血や、腎に流通する津液は他の臓腑にも配分され、臓腑の陰として機能する。

また、腎に蔵されている原気も他の臓腑に配分され、臓腑の陽といて機能する。

つまり、腎は「(全身の陰の本)」「(全身の陽の本)」である。そこで、腎陰を命門の水、腎陽を命門の火とも呼ぶことがある。

 

腎に貯蔵されている精は「たっぷりあればあるほど良い」と考えれているため、腎精の問題は、不足(虚)による問題となる。

そしてそれは、腎陰や腎陽でも同じであり陰陽の根本であるから、陰虚や陽虚は腎から波及することが多い。

腎は、他の臓と異なり「過剰になることの弊害」は少なく、むしろ加齢とともに「機能が減退していく弊害」がほとんど。

 

命門(命の様子が現れる門):

命門に関しては諸説色々あるが、難経には命門の働きとして、「生命の原動力として元気(原気)を全身にもたらす」ということが書かれていて、腎の働きと深く関係している。そのため、腎陽を命門の火、腎陰を命門の水と表現されることがある。

 

 

関連領域

 

腎は骨髄を主り、その状態はに反映する(五主:骨髄、五華:髪)。

腎精には、成長発育を促進する機能があり、骨の成長を主る。骨は髄より栄養を得て成長するため、腎精が充実していないと髄も充実しない。

脳は髄の海であるため髄がしっかりしていると脳も充実している。

歯は骨余なので、骨がしっかりしていれば歯もしっかりしている。

髪は血余といわれ、精から化生した血から滋養されている。そのため腎精がしっかりして血への化生がしっかりしていれば、髪の色・艶・量に問題ない。年を重ねると髪が薄くなる人が多くなることから腎と髪は関連があると考えられる。

 

腎は二陰に開竅する(五官:耳)

腎がしっかりしていると耳がよく聞こえる。

年を取る⇒腎が弱くなる(先天の精が加齢とともに減る)⇒耳が遠くなる

腎は強くしにくいので、なるべく弱らないよう予防することが大切。

二陰とは、前陰(小便口)と後陰(大便口)のことで、津液を主る腎は大小便の質や量にも関係する。

 

腎の液はである(五液:唾)

唾とは口腔内の津液であり、特に粘性の濃いもので歯牙の生えているところから湧き出る。吐き出さずに飲み込めば、腎精を滋養する効能がある。

 

 

「腎」における正常 or 病的 な状態は以下の通り。

正常な状態 病んでいる状態

・根気があり、細かい作業をやり抜き通す力がある。

・尿量が正常。

・骨や歯が上部。また、髪は黒々としてつややかで、よく伸びる。

耳が良く聞こえ、大便も正常である。

・活動が低下(腰や膝がだるくなるため)、生殖能力の低下、疾患に罹りやすくなる。

・頻尿やむくみ、尿閉、下痢などが症状として出る。

・発育不良、歯が抜けたり子供の歯がなかなか生えない、骨がもろくなる、髪が薄くなる、白髪などが出る。

・耳鳴り、耳の聞こえが悪くなる、下痢や便秘などが出る。

 

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