この記事では母指圧の基本について解説している。
目次
母指圧の基本(これ知ってないと指を壊すよ)
この業界は、あん摩マッサージ指圧で一番多用される「母指」を壊して仕事を辞めていく人が非常に多い。
その人たちに共通しているのが「間違った母指の形で施術をしている」という点だ。
指圧は主として母指を使う。
「母指は他の4本指に比べて(関節が基節骨と末節骨からなるため)押圧しやすいから」とされている。
母指のタイプを大別すると以下に分類される。
- 甘手指⇒母指IP関節が反り返っている(過伸展出来る)指
- 苦手指⇒母指IP関節が少ししか反らない指
そして、どちらが指圧に向くかというより、どちらのタイプの指もその利点があるので、それを生かしての施術をすればOKだ。
甘手・苦手それぞれの利点は以下の通り。
甘手のメリット
IP関節が反るので、相手への接触面積が広く、ソフトな感触になる。
苦手のメリット
IP関節が反らないので、相手への接触面積が狭く、刺さるような感触になる。
甘手よりも苦手の方が指を痛めやすいため、MP関節をしっかり屈曲した状態で押圧するような意識が大事(これを意識できれば問題ない。後半の添付動画を参照)。
「母指圧のポイント」+「母指圧の種類」
母指圧のポイントは「母指MP関節(中手指節関節)を屈曲させた状態で押圧すること」である。
具体的には以下のイラストを参照。
母指MP関節が伸展していると、MP関節へ過剰な負荷がかかり、十分な体重圧を母指に乗せることが出来ない(にも関わらず、無理に押圧していると、指を壊してしまいかねない)。
「片手母指圧」がマスター出来たら、「両手母指圧」にも挑戦しよう
上記をマスターした上で、揃え母指・重ね母指に挑戦していく。
揃え母指・重ね母指の選択は、自身が施行しやすい方を選べば良い。
あるいは、「どちらが上手に押圧できているか」を複数の練習相手に聞いてみると、どちらの母指圧と相性が良いか認識できる場合もある。
ただし以下な違いがあるので、(基本的には使いやすい方を選択するが)クライアントの反応により、切り替えることも出来るようにしておくことをおススメする。
揃え母指圧
「面の圧」になるため、比較的「優しい圧」になる。
重ね母指
「点の圧」になるため、比較的「刺さる様な圧」になる。
母指以外の4指も支えに使おう
母指で圧するときは、母指だけに負担をかけないように、他の四指は軽く支えるようにしてバランスをとって圧するのがポイント。
この際、慣れてくると4指MP関節を過伸展させ体表にベタっとくっつけてしまう人がいるが、これだと圧が(母指だけでなく)四指に分散されてしまう。
また患者も(母指だけでなく他の)四指にも意識がいってしまいリラックス効果が半減してしまう(これが全く気にならないという人がいる一方で、気持ち悪いという人もいる)。
母指圧練習の動画を紹介
母指圧を練習するうえで理解しておくと役に立つ動画をまとめてみた。
動画の方が理解しやすい人も多いと思うので、是非参考にしてみてほしい。
正しい母指の使い方でも、絶対最初は痛くなる
正しい母指の使い方をしていても、絶対最初は痛くなる。
どんなに体重圧を意識しようが、それを支えるだけの最低筋力が必要なように、
母指に体重圧が乗ることになれていないため、関節が驚いて痛みを発するのも無理はない。
なので「それは当たり前」と認識し、自信を無くさないようにしよう。
ただし、自身の母指が痛くなっているのが以下のどちらかなのかはきちんとチェックしておいてほしい。
- 単にあん摩・指圧に適した指が出来上がっていない(繰り返すごとに数か月かけて徐々に痛くなくなる)
- 間違った指の使い方をしている(どんどん痛みが強くなる。指を壊す)。
また、「母指のIP関節(指節間関節)・MP関節(中手指節関節)」が痛くなるのは不思議ではないが、「母指のCM関節(手根中手関節)」が痛くなるようであれば、間違っている指の使い方をしている可能性があるのでチェックしてみよう。
最後に注意点
最後に、この記事に関する注意点を記載しておく。
この記事で紹介している「体重圧を利用した母指圧」は、『骨粗鬆症のリスクが無い人に対する施術』を前提としている。
上記の方に対して「ある程度の強圧」を自身の指を壊すことなく加えることが出来き、相手のニーズを満たすことが目的だ。
一方で、鍼灸あん摩マッサージ指圧学校で学ぶ母指圧は、必ずしもここに記載している方法とは限らない。
「高齢化社会である現在において、骨粗鬆症や関節変形を有している人」への施術機会が増えている点、「力加減に細心の注意を要する疾患を有している人」に対しても安全な施術をする必要がある点から、「弱圧〜中等度圧」が相手に加わるような方法を指導される可能性も高い(例えば指を寝かせて、呼吸に合わせて、心地よい圧が加わる程度に加圧するなど)。
なので上記を指導された場合においても、それが間違いなわけではないので注意しよう。
この点に関しては、関連記事として以下でも紹介しているので、誤解が生じないよう、是非とも合わせて観覧してみてほしい。
ただし上記を「ある程度の強圧」が要求する場面がある就職先で使用した場合、指を痛める危険性が高くなる。
なので、そういう就職先でも指を痛めないために、ここに記載されている方法も練習しておいてほしいということだ。
関連記事
以下の記事では、母指圧と同様に超重要な体重圧について解説している。
以下の記事では、アイヒホッフテストについて記載している。これはドゥケルバン腱鞘炎で陽性となるのだが、母指CM関節症の場合でも陽性になることがあるので、施術で痛みが出た人はついでに試してみてほしい。