先日、訪問マッサージのセミナーに参加し、今後の訪問マッサージの行く末についていくつか質問した。
その中の一つが、今回のテーマである【往療料】についてだ。
この記事では、訪問マッサージの往療料についての「解説」・「私見」・「今後の予想」を記載していく。
これまでの訪問マッサージ往療料について
訪問マッサージにおける「往療料」とは以下を指す。
でもって、数年前までの往療料は以下であった。
2km以上4km:2660円
4km以上6km:3460円
6km以上 :4260円
自宅へ出張するだけで上記の往療料が貰えるのはオイシイ。
※患者は1~3割のみの自己負担でOK。
「6km以上の往療料」ともなれば、もはや施術料並みなお金が入ってくるという事になる。
しかし、上記があまりにも高額だったためか、現在の往療料は以下のように減額された。
4km以上:2700円
そして今後の予想としては、往療料は「更なる減額」あるいは「削減」される可能性が高いと考える。
往療費は社会保障費で賄われている
先ほど、以下のように記載した。
その理由は、「往療料が患者の実費ではなく、社会保障費で賄われているから」だ。
例えば、もし仮に医療保険1割負担で良い患者な場合は、残りの9割は社会保障費で賄われることになる。
このケースな場合、往療料が2700円だったとすると以下の計算となる。
- 270円が患者負担
- 2430円が社会保障費
しかし、社会保障費がひっ迫し、今後は医療制度が崩壊するかもしれないと言われていう昨今において、今後も「往療料」というものが存続する可能性は低いのではと考える。
類似した制度である「訪問リハビリ」には往療料という概念は存在しない
訪問マッサージと類似した制度に「訪問リハビリ」がある。
訪問リハビリは、(訪問マッサージと異なり)介護保険を利用することも出来るが、(訪問マッサージと同様に)医療保険が利用されるケースもある。
でもって、訪問リハビリも「患者の自宅へ訪問してサービスを提供する」のだが、訪問リハビリに往療料というものは存在しない。
もちろん、「病院側が距離などに応じて交通費が請求できるような契約」を交わすことも出来るが、これは病院の裁量次第であり(社会保障費とは関係なく)患者の実費となる。
※まぁ、上記のようなことをしている病院は聞いたことが無い。
※「訪問看護」「医師による往診」も、同様に往療料というものは存在しない。
ただし、これは普通のことだ。
「往療費」などという用語を使っているが、要は「交通費」だ。
そして、今までは「勝手に遠い場所まで訪問をしておいて、その交通費の大部分を税金で賄うことができる」という制度だったわけだ。。
※交通費と考えた場合、1件当たり訪問するガソリン代が約2000~3000円というのは常識的に考えておかしい。
こんな制度が、今後も継続すると考えるほうが非常識だろう。
今後は「往療料」は廃止となり、「ガソリン代など訪問するための手間賃を請求したいなら、患者と各自が交渉して実費で請求する」という流れになると思われる。
※冒頭で示したように、すでに「往療料」が削られていることからも、この流れは間違っていないのではないだろうか?
「近場を訪問はしない方が得」というインセンティブも働きやすい
「遠方へ訪問マッサージに出向くほど効率が悪いので、なるべく近場を訪問して回ろう」という発想のほうが一般的だと思う。
しかし「往療料」という存在があり、この報酬が高額であるほど、「近場を訪問するのは損だ。なるべく遠くへ訪問しよう」という逆の発想へ施術家を導いてしまう可能性がある。
恐らく国は、施術家に「患者宅が遠方だけれど、往療料があるから何とか訪問してあげよう」と思ってもらうことを願って往療料という制度を作ったのかもしれない。
しかし世の中の風潮を見ていると、国とは異なったインセンティブを施術家に与えている印象を受ける。
もしそうだとするなら、「往療料廃止」とまではいかなくとも「遠方だから(往療料を算定できるとしても)訪問することを迷う程度の診療報酬」が相場としては妥当と思われる。
訪問マッサージに関する「今後のビジネスモデル」
今後は「個人が距離を利用して稼ぐ時代」は終わりをつげ、高齢者住宅のように「在宅ではなく施設へ出向いて」の施術に切り替わる可能性が高い。
国は最近「病院での入院期間を短縮させ、なるべく在宅で面倒が見れるシステムを構築しよう」と考え、地機包括ケアシステムを打ち出した。
しかし現実としては、以下な人達が増えている。
- 一人暮らしで「家族が一人もいない。自宅での一人生活も難しい。施設へ入ろう」という人の存在。
- 「在宅で介護は出来ない。施設に入所してもらおう」と思っている家族の存在。
昔は「施設に入ることに抵抗がある人」が多かったが、最近では自ら進んで施設へ入る高齢者も増えている(家族に気を遣うくらいなら、施設で自由気ままに過ごしたいという考え)。
そういうニーズにマッチした施設ビジネスも増えてきている。
以前は「施設」と聞くと「特別養護老人ホーム(介護保険サービス)」がイメージしやすかったが、最近では「介護付き高齢者住宅(実費で入所する)」など多様なサービスが出来ている。
でもって今後の訪問マッサージビジネスも「自宅」ではなく「施設」がメインターゲットとなる可能性が高い。
今まで旨味のあった「往療料」が減額されるほどに「効率よく近場を訪問すること」にメリットが出てくるからだ。
事実として、大手訪問マッサージ事業所の中には「今後は、在宅ではなく施設をターゲットにしていく」という方針を打ち出している所もある。
個人はどう戦うか
今までは「往療料」の存在が大きかったため、「距離でお金を稼ぐビジネスモデル」が成り立ち、このビジネスモデルは個人事業主でも活用しやすかたった。
一方で、「同一建物内(施設内)を効率的に回って施術を行う」というビジネスモデルは個人事業主にはハードルが高くなっているように感じる。
その施設を利用するのに一番手っ取り早いのは「施設にコネを作る」ということになり、コネを作るにはそれなりの信頼づくりが大切となるのだが、大手事業所は最初からブランドを持っているため信頼に直結しやすい。
もちろん個人でも営業をかけて成功することも不可能ではないが、施設へアプローチをするのであれば、それまでに実績を積み上げているであるとか、よっぽどプレゼン能力が高いであるとか、成功する人は限られるだろう。
いずれにしても、訪問マッサージを取り巻く環境は、今後大きく変わっていく可能性がありそうだ。