この記事では「古法按摩の手技」について按摩手引や按腹図解(家法導引三術)を参考に解説していく。
今回、この記事を改めて作成しようと思ったきっかけは、先日受けた「3年実力テスト」で関連した問題が出題されたからだ。
臨床に出てからは、まったく不要な知識だとは思うが、学生の内は頑張って記憶を整理しておこう!
古法按摩とは?!
古法按摩とは以下を指す。
按摩は中国発祥の手技療法であり、日本では江戸時代に入って復興した。その際に、按摩が体系づけられた資料に記載されているものが、いわりゅる「古法按摩」である。
資料としては以下などが挙げられる。
- 宮脇仲策の「導引口訣鈔」
- 藤林良伯の「按摩手引」
- 太田晋斎の「按腹図解」
ここから先は古法按摩の手技について、以下に分けて記載していく。
- 按摩手引に掲載されている手技
- 按腹図解の「家法導引三術」に記載されている手技
按摩手引に記載されている古法按摩手技
按摩手引に掲載されている手技としては以下などがあげられる。
※按摩手引には非常に多くの手技が記載されているが、ここでは有名なもの(国家試験に出題されやすいもの)を中心に記載していく。
墨規矩の術
肩上部・肩甲間部・脊柱両側への左右同時性手掌軽擦
※背部の軽擦法。手を広げ、背部骨間を手早く軽く擦る。
肩井の術
墨規矩の術の経絡を母指揉捏
督脈の術
督脈上の母指軽擦・圧迫
督脈の母指圧迫と肺・心・膈・肝・脾の母指圧迫する術
寿骨の術
耳後・髪際・項窩の軽擦・揉捏
骨分の術
手を広げ骨間(背部の各肋間)を手早く軽擦
鳴骨の術
手を横に立てて、肩上部・肩甲間部・脊柱両側の筋に当て、小指の本筋に当て骨を擦らせ音を出す曲手(あおり手のこと)。
開いた手の小指側の縁を体表に当てて手根を素早く前後に動かし筋肉の走行に滑らすように動かす手技である。この時、関節がコツコツと鳴るようにするために鳴骨の術とも呼ばれる。
〜ウィキペディアより〜
頭維の術
頭の曲
片手を頭の上に置き、もう一方の手の肘を置いた手の上に立てて、立てた手の先を震わせる。
その他
- 耳鐘の術⇒曲手(両方の示指を左右の耳の穴に一度に差し込み、軽く抜き差しする曲手)
- 袋打の術⇒叩打(左右の手を軽く握り合わせ、手の中に卵を握った程に柔らげた手の甲にて軽く叩く)
- 平手の術⇒軽擦(章門より腹部正中に、左右同時に行う手掌軽擦術)
※上記の手技が曲手・叩打・軽擦のどれに分類されるか整理しておく!
家法導引三術に記載されている古法按摩手技
家法導引三術図解
- 解釈:揉捏法
- 利関:関節運動
- 調摩:軽擦法
『按腹図解』の中の『家伝導引三術』では「家法導引の術に三術あり」として「解釈、利関、調摩」というそれぞれ「揉捏法、運動法、軽擦法」の基礎になっている術が記載されている。
国試問題
以下は、古法按摩に関する国試問題の一例である。
知識の定着として問題を解くことは重要なので、合わせて観覧してみてほしい。
アマシ29回
骨粗鬆症が疑われる患者への施術で、圧の強度に最も注意が必要なのはどれか。
1.頭維の術
2.平手の術
3.骨分の術
4.督脈の術
答え→4
関連記事⇒「アマシ29回」
アマシ23回
高齢者への施術で力度に最も注意が必要なのはどれか。
1.督脈の術
2.頭維の術
3.骨分の術
4.平手の術
答え→1
関連記事⇒「アマシ23回」
アマシ26回
古法按摩で歯痛に対する手技はどれか。
アマシ21回
片手で行う古法按摩術はどれか。
1.袋打の術
2.鳴骨の術
3.耳鐘の術
4.頭の曲
答え→2
関連記事⇒「アマシ21回」
アマシ20回
現代あん摩の基本手技で古法按摩の基本手技と対応しないのはどれか。
アマシ19回
調摩の術に用いる手技はどれか。
1.切打法
2.母指くじき
3.母指揉捏法
4.手掌軽擦法
答え→4
関連記事⇒「アマシ19回」
アマシ15回
曲手のうち肩背部に行う手技はどれか。
1.かみなり手
2.耳鐘の術
3.横手
4.柳手
答え→3
関連記事⇒「アマシ15回」
関連記事
古法按摩は国試対策のために覚える必要があるのだが、臨床においては以下に記載されている「あん摩の特徴・種類」を覚えると同時に、習得すればOKである。
以下の記事では、一般のあん摩より独自色のある「吉田流あん摩」について解説している。