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風邪を引いた際の反応と、その後の点滴によって生じること

専門用語解説

この記事では、以下の例を通して「身体の生理的反応」を解説していく。

 

風邪を引いた際の反応と、その後の点滴によって生じること
 

目次

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風邪を引いた際の反応

 

「風邪」と診断された男性がいたとする。

 

バイタルは以下の通り。

 

体温:40.0度

 

この発熱は以下の機序で生じている。

 

  1. 免疫活性食細胞は、白血球(好中球やリンパ球など)やマクロファージといった「免疫活性細胞」が風邪ウイルスを迎えうつ(ウイルスなどの異物を食べるように取り込んむ)。

  2. ウイルスとの戦いが始まると、免疫活性食細胞の働きで「サイトカイン(免疫反応において細胞間相互作用をつかさどる液性因子の総称)」という物質がつくられる(サイトカインにはインターフェロン・インターロイキンなどがある)。

  3. 例えばインターフェロンは、組織細胞がウイルスに感染するとT細胞や感染した組織細胞から遊離され、未感染の組織細胞のウイルスに対する抵抗性を増強したり、感染した組織細胞に対するリンパ球の感染性を増強したりする。

  4. この様に、ウィルス感染に対して様々な活躍をするサイトカインは、血液の流れにのって、やがて脳にも達する。その際、サイトカインでは通過できない血液脳関門の先にある視床下部へ情報を伝達するためプロスタグランジンE2(PGE2)という「メディエイタ」の産生を促す。そして、この「メディエイタ」が情報を持って視床下部へむかうことになる。

  5. メディエイタから情報を受け取った視床下部の体温調節中枢は、身体各部に体温を上げるようにという指令を出す。この命令にもとづいて、以下などが生じ発熱が促される。

    皮膚の血管が収縮

    筋肉をふるえ

    ・・・など。

 

 

発熱が重要な理由

 

発熱するには何らかの理由があると考えられ、例えば以下などが言われている。

 

病原菌の増殖が抑制される

風邪などのウイルスは、低温の方が繁殖しやすいという性質を持っているが、発熱するとそれが抑制される。

 

白血球の機能が促進される

白血球の動きが活発になり、侵入した外敵を食べる作用が活発になる。

 

免疫応答が促進される

外的と戦う免疫機能が高まる。

 

 

発汗による脱水

 

体温しきった後は、発汗により「(前述した)体温を上昇しようとする作用」と「発熱作用」によって体温が維持される。

 

また、ウイルスの撃退に伴い(発汗作用も含めた)解熱作用が優位となり、体温は平熱に近づいていく。

 

「脱水=体液の低下⇒血液量も低下かする」なため、血圧が低下し、それに伴い以下も生じる。

  • 「血圧↓」により『高圧受容器反射』が反応し「脈拍↑」が生じる。
  • 血液量低下により体内へのO2供給が不十分となり、『化学受容反射』により「呼吸数↑」(や脈拍↑)が起こる。

 

呼吸数が増えると、不感蒸散増加により、更に脱水傾向となる。

 

この様にして脱水が進行するので「水分補給」が重要となる。

 

 

どんな水分を補給する?

 

脱水の改善には「水分補給」が大切になってくるのだが、「どんな水分を補給すれば良いか」も重要となる。

 

これを理解するためには、まずは「脱水にも種類がある」という点を理解する必要がある。

 

 

脱水の種類

 

脱水には以下の種類がある。

 

  • 等張性脱水(ネフローゼによる脱水が該当)
  • 低張性脱水(下痢・嘔吐などによる脱水が該当)
  • 高張性脱水(発汗亢進・水分摂取不足)

 

等張性脱水とは:

細胞外液の水分量は減っているが、(Na+などの)電解質の濃度は(水分が減る前と)変化ない。

 

低張性脱水とは:

細胞外液水分量が減っており、濃度が薄くなっている(電解質が失われている)。

 

高張性脱水とは:

細胞外液の水分が減っており、濃度が濃くなっている。

 

 

低張性脱水では、他の脱水よりも多くのNa+を水分補給時に摂取するのが望ましい。

 

一方で、高張性脱水時の水分補給で(Na+)などの電解質が不要なわけではなく、スポーツ飲料のような電解質を含んだ飲料水は理想的と言える。

 

ここから先は、「発汗亢進による脱水(高張性脱水)に対する水分補給」にフォーカスして記載していく。

 

 

高張脱水に対する水分補給

 

脱水治療に用いる補液剤と、その成分は以下などがある。

 

  生理食塩水 リンゲル液 5%ブドウ糖
電解質 Na+ 154 147
K+ 4
Ca2+ 4
Cl- 154 155.5
Lactate-
糖質 50
pH 6.4 6.4 約5
浸透圧比 約1 約1 約1

 

厳密には「純粋なブドウ糖液」を臨床で使用することはなく、若干でも電解質を混じらせる。ただ、上記は分かり易くするために「純粋なブドウ糖液」を掲載している。

 

浸透圧を比較してもらえば分かるが、どれも体液と等張だ。

 

一方で成分は以下のように各々違う。

 

生理食塩水

0.9%の食塩水(Na+とCl-)が入っており、この濃度(0.9%)は体液と酷似

 

リンゲル液

Ca2+とK+も含有している点が、生理食塩水と異なる。これらの電解質を有していることから、より体液と類似した成分と言える。

 

5%ブドウ糖液

糖質だけが入った水。電解質は一切含有されていない。

 

 

それでは、高張性脱水に最もてきしているのは、どの補液剤なのだろうか?

 

 

高張性脱水に最も適した補液剤は?

 

高張性脱水に最も適した補液剤は、どれだろう?

 

結論は「ブドウ糖液」である。

 

厳密に、臨床で用いられるのは「ブドウ糖液に若干の電解質も混ぜたもの」

 

高張性脱水は「細胞外液の水分が減っており、(Na+などの)電解質濃度は濃くなっている状態」であることは前述した通り。

 

なので、「生理食塩水」や「リンゲル液」などの電解質を多く含んだ補液を用いると『細胞外液は増えるが、濃度は濃いまま(高張なまま)』となってしまう。

 

すると、浸透圧が高い(細胞内・外の濃度差が大きい)ので細胞内に水分が外へ逃げてしまい、細胞がシワシワになってしまう(実際には、滅多に生じない現象だが、あくまで例えとして)。

 

 

一方で5%ブドウ糖液では以下が起こる。

 

  1. ブドウ糖液を使用することで細胞外液が増加する。

  2. ブドウ糖液は電解質を含んでいないので、電解質濃度は「細胞内液のほうが細胞外液より高い」となる。そのため浸透圧(濃度の低い方から高いほうへ水が移動するという性質)により水分が(細胞外から)細胞内へ移動する。

  3. このままだと低張液(細胞内の水分が多い状態で、浸透圧が等張な状態)になるのだが、細胞内に入った糖は、後にエネルギーとして使用されるので、(糖の濃度が消えただけ)今度は細胞外液の濃度が高くなる。※食事に例えると、糖や酢も(塩よりは浸透圧が低いが、)浸透圧を有している。

  4. そのため浸透圧により、今度は(糖が抜けた)水分が細胞内から細胞外へ移動する。

    ※これにより細胞外の濃度が薄まり、細胞内・外の浸透圧が等しくなる。

 

 

繰り返しになるが、実際に臨床で「純粋なブドウ糖液」が用いられることは少なく、電解質も多少含まれているものが使用される。

 

そして、上記に類似した飲料水がスポーツドリンクである。

 

 

ただし、スポーツドリンクも一気飲みはNG

 

前述したようにスポーツドリンクは、適度な糖質・電解質を含んでいるので高張性脱水の予防に効果的である。

 

細胞外液とスポーツドリンクを比べた場合、スポーツドリンクのほうがNa+・Cl-が少ない一方で、糖が多い。これにより浸透圧を下げて等張に出来る。

 

一方で、「激しい高張性脱水」時にスポーツ飲料を一気飲みすると以下が生じる可能性がある。

 

低ナトリウム血漿・痙攣・細胞膨化

 

これは細胞外液の「量が増加する一方で、急激に濃度が薄まること」で生じる。

 

したがって「重度な脱水」が生じている場合に、スポーツドリンクを飲む際はゆっくりと飲むことが重要。

 

あるいは、もし低ナトリウム血漿やけいれんが生じるレベルなら「水分補給に、若干の塩をなめる」などが効果的。

 

 

脱水時に恒常性を保つために起こる反応

 

脱水時に生じる反応として、例えば以下などが挙げられる。

  1. ADH(抗利尿ホルモン・バゾプレッシン)
  2. レニン・アンギオテンシン・アルドステロン

 

どちらのホルモンも尿量を減らす役割があるのだが、以下の様な違いがある。

 

ADH

体液浸透圧上昇が刺激となって分泌促進

水分の再吸収飲み促進

つまり「ADHの分泌促進は、低張な体液を増加につながる」ということ。

 

RAA(レニン・アンギオテンシン・アルドステロン)

体液量の減少が刺激となって分泌促進

水分再吸収のみならず「Na+(やCl-)の再吸収」も起こる。

つまり「RAAの分泌促進は、等張な体液増加につながる」ということ。

※水分のみならず、電解質も吸収されるので、電解質濃度が薄まらないため。

 

 

復習:浸透圧とは

 

最後に、もう一度「浸透圧」という用語についておさらいして終わりにする。

 

浸透圧とは「水を動かそうとする圧力」を指す。

 

この浸透圧により「濃度の低い方から高いほうへ水が移動する」という現象が起こるのだ。

 

料理で例えると、塩は砂糖や酢と比べ浸透圧が高く、水を引き出すのに適していると言われる。

 

例えば「キュウリを食塩水に浸ける」と「塩によって高くなった浸透圧」の影響で、「キュウリの水分が食塩水へ移動する(つまり、キュウリの水が抜けてシワシワになる)」という現象が起きる。

 

これは「浸透圧により、水は(塩分などの)濃度の高いほうへ移動する性質があるから」と考えられる。

 

次に「きゅうりの漬物(塩分多)を、普通の水に浸ける」と浸透圧の影響で「漬物の中に水が移動する」という現象が起きる。

 

すると、シワシワだった漬物は水分を吸収してパンパンになる。

 

これが細胞内(きゅうり)・細胞外(きゅうりの外)でも生じていると考える。

 

「(塩分の入っていない)単なる水」を補給してしまうと、細胞内のNa+濃度が高いことから、細胞内に水が急激に流入してしまう(細胞がパンパンになる=細胞膨化)。

 

そうならないためにも、適度な水分補給には適度な塩分も必要となる。

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