この記事では、以下の例を通して「身体の生理的反応」を解説していく。
大量出血によって起こること
男性が交通事故による大量出血で、救急搬送された。
バイタルは以下の通り。
呼吸数:30回/分(多い)
脈拍:132/分(多い)
血圧:80/50(低い)
大量出血により「呼吸数↑」「脈拍↑」「血圧↓」などの異常なバイタルになるのだが、一番最初に生じる所見は「血圧↓」である。
理由は以下の通り。
すると体内に十分なO2が供給されなくなるため、『化学受容反射』により「呼吸数↑」(や脈拍↑)が起こる。
また、「血圧↓」により『高圧受容器反射』が反応し「脈拍↑」が生じる。
「高圧受容器反射」や「化学受容反射」に関しては以下の記事で整理してほしい。
(大量出血⇒)止血によって生じること
大量出血によって「呼吸数↑」「脈拍↑」「血圧↓」が生じる機序は、前述した通り。
そして止血をすると、上記の異常バイタルは正常に近づく(呼吸数↓・脈拍↓血圧↑)。
正常に近づく機序は以下の通り。
では、(血圧が上昇するために必須な)「出血によって減った血液を増やす(造血する)機序」について解説して、この記事を終了する。
血液の細胞成分と液体成分
血液量は以下の要素に分けられ、各々が調整されることで血液量が元に戻る。
- 血液の細胞成分
- 血液の液体成分
血液の細胞成分
細胞成分では赤血球が重要となるが、赤血球新生を促進してくれるのが「(腎臓から分泌される)エリスロポエチン」というホルモンである。
血液量が低下すると、恒常性を維持するために「エリスロポエチン」が分泌され、これが「骨髄における造血作用」を促進してくれる。
血液の液体成分
血液における液体成分は「血漿」である。そして血漿は「ADH(抗利尿ホルモン・バゾプレッシン)」や「RAA(レニンーアンジオテンシンーアルドステロン)」による尿量調節によって増加する。
止血をすると、(徐々にではあるが)上記作用によって血液量が増え、それも血圧↑・脈拍↓・呼吸数↓に寄与することとなる。