血液の循環調節(+圧受容反射・化学受容反射など)

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血液の循環調節(+圧受容反射・化学受容反射など)

この記事では、血液の循環調節について解説している。

 

目次

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血圧調節の仕組み

 

局所性の調節

局所性

筋固有性

(筋原性)

伸張されると収縮し張力を発生。

血管平滑筋・心筋(スターリングの法則)

収縮物質 セロトニン、ノルアドレナリン、エンドセリン
拡張物質

ブラジキニン、ヒスタミン、乳酸、CO2、アデノシン、一酸化窒素(NO)

自己調節 血管が血流を一定に保とうとする現象⇒腎臓(25%)・脳(15%)・心臓(5%)

 

全身性の調節

全身性 自律神経調節 延髄網様体
ホルモン性調節

・中期(分単位)、長期(時間・日単位)で調節

 

・血管収縮

⇒カテコールアミン、レニン・アンジオテンシン系

 

・血液量調節

⇒バゾプレッシン、アルドステロン

 

 

循環の反射調節

 

循環の反射調節として以下について解説していく。

  • 高圧受容器反射(圧受容器反射)
  • 化学受容器反射
  • 心肺部受容器反射(低圧受容器反射)

 

 

高圧受容器反射(圧受容器反射)

 

高圧受容器反射(圧受容器反射)とは以下を指す。

 

(動脈血の)血圧の変化に反応し、血圧を安定に維持する。

 

頚動脈洞大動脈弓の血管壁にある圧受容器によって以下のように調整される。

 

血圧上昇時の反応

  1. 頚動脈洞・大動脈弓の受容器が興奮

  2. その情報が舌咽神経・迷走神経を通って延髄の循環中枢へ伝わる

  3. 心臓と血管神経の交感神経活動が低下+心臓と血管支配の迷走神経の活動亢進

 

  • 心臓の反応:心拍数の低下・心筋収縮力の低下・心拍出量の減少
  • 血管の反応:末梢抵抗血管の拡張・容量血管の拡張
  • 副腎髄質機能:カテコールアミンの放出減少

 

このような反応の結果、血圧は下降して、ある基準値で安定する。

 

血圧低下時の反応

  1. 頚動脈洞・大動脈弓の受容器が抑制

  2. その情報が舌咽神経・迷走神経を通って延髄の循環中枢へ伝わる

  3. 心臓と血管神経の交感神経活動が亢進+心臓と血管支配の迷走神経の活動抑制

 

  • 心臓の反応:心拍数の上昇・心筋収縮力の上昇・心拍出量の増加
  • 血管の反応:末梢抵抗血管の縮小・容量血管の縮小
  • 副腎髄質機能:カテコールアミンの放出増加

 

このような反応の結果、血圧は上昇して、ある基準値で安定する。

 

以下は高圧受容器反射のイラストとなる。

 

化学受容器反射

 

化学受容器反射とは以下を指す。

 

動脈血のO2低下・CO2上増加・H+増加(=pH低下)に反応し、「呼吸」と「循環」の機能を高める反射
 
頚動脈小体大動脈小体の末梢性化学受容器によって以下のような調整が起こるが起こる。
 
  1. 動脈血中のO2分圧が減少したり、CO2分圧やH+濃度が上昇した際

  2. 頚動脈小体や大動脈小体の末梢性化学受容器が興奮

  3. その情報が舌咽神経と迷走神経を通って延髄に伝わる

  • 呼吸中枢に作用して呼吸機能を高める(呼吸数増大
  • 循環中枢に作用して、交感神経活動を高め、心拍数増加心拍出量増大血圧上昇が起こる

 

以下は化学受容器反射のイラストとなる。

 

心肺部圧受容器反射(低圧受容器反射)

 

心肺部圧受容器反射(低圧受容器反射)とは以下を指す。

 

(静脈血の)血液量の変化に反応し、循環血液量を調節する。

 

「圧受容器」としか表記が無い場合は(低圧受容器ではなく、前述した)高圧受容器を指している。

高圧受容器反射・低圧受容器反射ともに「圧の変化」を感受する点は共通しているが、低圧受容反射は「静脈血の圧の変化」を感知するものの、静脈血の圧自体は低いため「(圧の変化というよりは)静脈の血液量の変化」を感受した反応と表現されることが多い

 

肺血管や心房の低い内圧を感受して、血液量のごくわずかな変化を検出し以下のように調整される。

 

循環血液量減少時の反応

  1. 出血などで血液量が減少

  2. 心肺部圧受容器を介して脳に情報が伝えられる

  3. 下垂体葉からのバゾプレッシン(抗利尿ホルモン)分泌増加

  4. 血液量を増やすため、腎臓からの尿量減少

  5. この様にして血液量が調節される。

 

 

循環血液量増大時の反応

  1. 何らかの理由で血液量が増大

  2. 心肺部圧受容器を介して脳に情報が伝えられる

  3. 下垂体後葉からのバゾプレッシン(抗利尿ホルモン)分泌増抑制

  4. 血液量を減らすため、腎臓からの尿量増大

  5. この様にして血液量が調節される。

 

 

循環反射調整を、例を使ってイメージしよう

 

以下の例は、循環反射調整を含めて生理学を理解する上で分かり易いので興味があれば観覧してみてほしい。

 

大量出血が生じた際+止血後における様々な生体反応

 

風邪を引いた際の反応と、その後の点滴によって生じること

 

 

補足の反射

 

体性感覚刺激による反射:

侵害刺激⇒交感神経亢進⇒心拍数増加

アシュネル反射⇒眼球圧迫⇒心拍数減少

 

脊髄後根神経による血管拡張(軸索反射):

求心性線維終末からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などが放出し皮膚血管を拡張。

 

 

ガス交換とガス運搬

 

ガス交換 動脈血と組織・肺胞気と肺毛細血管の静脈血のガス分圧差(拡散)で行われる。
O2分圧

HbとO2の結合はO2分圧・CO2分圧に左右される。

O2分圧が高いほど酸素化ヘモグロビンの割合が増える。

CO2分圧が高いほどHbの酸素結合能力は減少。

O2運搬

Hbと可逆的に結合。

肺胞気100mm・動脈血Hg95mmHg・静脈血40mmHg

CO2運搬

約80%→重炭酸イオン(HCO3-)。

約10%がHbと結合。約10%物理的に溶解。

肺胞気40mmHg・動脈血40mmHg・静脈血46mmHg

塩酸基平衡

CO2蓄積→H増加→呼吸性アシドーシス。

CO2減少→H減少→呼吸性アルカローシス。

 

 

特殊な部位の循環

 

冠状動脈(冠循環)

心筋の血液供給量。心拍出量の約5%。

収縮時に左心室冠血流量は減少。

肺循環 体循環血圧より低い。肺動脈血圧25mmHg。
肝循環 心拍出量の約25%、30%肝動脈より70%門脈より流入。
脾循環 門脈系の一部。血液貯蔵、血液ろ過に関与。
脳循環 内頚動脈と椎骨動脈より、心拍出量の約15%。血流量の自己調節作用。血液脳関門(有害物質を入れない)。CO2増加で動脈拡張。
皮膚循環 動静脈吻合・皮下静脈叢⇒交感神経血管収縮神経⇒体温調節
筋循環

安静時心拍出量の約20%。激しい運動時心拍出量の約80%。CO2や乳酸で血管平滑筋拡張⇒筋血流量増加。

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