この記事では「浮腫とは何か?」や「浮腫が生じる機序」について解説している。
浮腫とは
浮腫とは以下を指す。
日常的に経験するのは「ずっと立ち仕事をした後や、座っていた後の足のむくみ」だろう。
広辞苑で浮腫を引くと「水腫に同じ」と記載されており、医学的に「浮腫=水腫」と記載されてる教本が多い。
一方で、多少異なる解釈をしている書籍もあり、個人的にも「水腫」のイメージは「浮腫よりも、じゃぶじゃぶに水がたまっている感じ」がする。
※臨床においても、(水腫よりも)浮腫というう表現の方が圧倒的に用いられる。
ここから先は、表現を『浮腫』に統一しつつ浮腫が生じる機序について解説していく。
浮腫が生じる機序
浮腫のできるメカニズムとはどのようなものだろう。
心臓から出ていった動脈はどんどん細くなり、毛細血管になって、次は静脈になる。
そのあたり、すなわち末梢組織では、血管と血管外組織の間で水の出入りがある。
そして末梢組織では、理法則に則って、血管の中と組織の中の圧の差によって、圧の高い方から低い方へと水が移動する。
この際に重要なポイントは「血管内圧」と「膠質浸透圧」だ。
血管内の静水圧
血管内の水圧は「血管の中から外へ出て行こうという圧力」として働く。
これは、静水圧とよばれていて、動脈側から毛細血管、そして、静脈側へと、だんだんと低くなっていく。
膠質浸透圧
もうひとつの大事な圧は「膠質浸透圧」とよばれるもの。
膠はニカワのことで、「膠質」は「こうしつ」と読む。
コロイドに対する訳語で、タンパクのような小さな粒子が水の中に分散しているような状態をさす。
毛細血管やその前後にある細い動静脈の壁は、水を通すが、タンパクは通さない。
血漿中にはアルブミンというタンパクが大量に存在するのだが、組織間の液中には無い。
従って、血管の中と外では、タンパクの濃度がちがうのだ。
そのタンパクの濃度の違いが圧の差を生み出して、それを『膠質浸透圧』と呼ぶ。
タンパク濃度の高い血漿とタンパク濃度の低い組織間液が、水だけを通す壁で仕切られているような状態だ。
なので、水が濃度の低い方から高い方へと移動して、タンパクの濃度が平均化されていく(その圧が膠質浸透圧)。
静水圧と膠質浸透圧
毛細血管とその前後の動静脈あたりで、以下のバランスによって水分がどちらへ動くかが決まってくる。
- 血管から外の組織へと水を押しだそうとする静水圧
- 組織から血管へと水がはいってこようとする膠質浸透圧
リンパ系の役割
静水圧と膠質浸透圧のバランスでいくと、やや組織に水がたまり気味になるようになっている。
そうでないと、からだが干からびてしまうのだ。
しかし、、組織にたまりすぎると浮腫になってしまう。。。
そこで、もうひとつ重要なファクターがあり、それが『リンパ系』である。
組織にたまった水分は、リンパ系が汲み出してくれる。
リンパ管は最終的には静脈へつながっているので、組織にしみ出た余分な水分はリンパ系から血管へともどっていくということになっている。
浮腫が生じる原因
ここまで記載してきたように、以下のどれかがおかしくなると組織に水が溜まってしまう(むくみ・浮腫・水腫が生じる)。
- 静水圧の上昇
- (血漿の)膠質浸透圧の低下
- リンパ系の排出機能障害
静水圧の上昇
静水圧が上昇すると、当然、血管から組織へ出ていく水の量が多くなるために、浮腫になる。
例えば「静脈の圧が上昇してしまうような時」が該当し、全身性のものと局所性のものがある。
全身性
全身性のものは、心不全、心臓の働きが悪くなった状態。
そうなると、大静脈から心臓への血液の還流がうまくいかなくなって、体中で静脈の圧があがります。
局所性
局所性のものは、静脈に血栓ができて、血液がうまく流れなくなってしまうような状態などが該当する。
つまり「心臓の障害(心不全など)」で浮腫が生じる!
血漿の膠質浸透圧の低下
膠質浸透圧とは、前述したように血漿中のアルブミンというタンパクの濃度によって決まる(その量が少なくなれば、膠質浸透圧が下がるわけだ)。
そして例えば、以下などの状態で膠質浸透圧が低下する。
アルブミンがうまく作られないような状態
アルブミンが失われていくような状態
※「アルブミンがうまく作られない状態」は、肝硬変のような肝臓の病気や栄養失調によって生じる。
※「アルブミンが失われていくような状態」は、腎臓の疾患で尿にアルブミンが出て行ってしまうネフローゼ症候群のような病気で生じる。腎不全で尿が出なくなっても当然浮腫になります。
つまり「肝臓・腎臓の障害」で浮腫が生じる!
リンパ系の排出機能障害
リンパ管が慢性的に詰まっても、浮腫が生じる。