この記事では、動脈血中のガス分圧(酸素分圧・二酸化炭素分圧)についてイラストを用いながら解説している。
各数値も覚えながら理解するよう努めてみよう。
血液中のガス分圧
肺におけるガス交換は、肺胞気と肺の毛細血管の静脈血との間のガス分圧の差によって行われる。そして、肺胞気のO2分圧は約100Torr、CO2分圧は約40Torrである。
一方、全身から肺に戻ってくる静脈血のガス分圧は、O2が40Torr、CO2が46Torrである。従ってO2は100-40=60Torrの分圧差により、肺胞気から静脈血中に拡散する。
一方、CO2は46-40=6Torrの分圧差により、血中から肺胞気中に拡散する。肺胞壁とそれを囲んでいる毛細血管壁はいずれも非常に薄く、肺胞気と血液との間のガス拡散は速やかに行われる。
その結果、動脈血はO2分圧95Torr、CO2分圧40Torrの動脈血となって肺から出ていく。
上記をイラスト化したものが以下になる(酸素分圧が左イラスト、二酸化炭素分圧が右のイラストになる)。
上記は吸息時(酸素分圧158,二酸化炭素分圧0.3)の話だが、呼息時も「酸素分圧116」「二酸化炭素分圧32」と圧倒的に酸素分圧の方が高い(何となく呼気では二酸化炭素の方が多い気がするが、実は酸素の方が多い)。
酸素分圧について
酸素分圧は、待機中では158Torrだが、肺胞内では血中から放出された二酸化炭素と水蒸気が混ざるため下がり100Torrになる。酸素を受け取った動脈血の酸素分圧(PaO2)も拡散によって肺胞内と血中の酸素濃度が同じになるため、100(~95)Torrである。末梢の細胞に酸素を渡し、二酸化炭素を受け取った静脈血の酸素分圧は大きく下がって40Torrになる。
二酸化炭素分圧について
二酸化炭素分圧は、待機中ではほぼ0Torr(0.3Torr)だが、全身の細胞で代謝によって発生した二酸化炭素を受け取ってきた静脈血では46Torr程度に高くなっている。それが肺胞に運ばれ、拡散によって肺胞内に排出されるとやや低下し、動脈血では40Torr程度になる。
余談:用語解説
この記事に含まれている用語の解説を余談として記載しておく
ガス分圧
分圧とは、混合気体などの中で、個々の物質が占める圧力のことを指す。
血中酸素分圧
血液中に含まれる酸素の分圧のこと(血中に含まれる二酸化炭素の分圧は「二酸化炭素分圧」と呼ぶ)。血中ガス分圧を示す際は、pressure(プレッシャー)のPをつけPO2
(二酸化炭素分圧の場合はPCO2)と書く。
また、動脈血中の酸素分圧PaO2は、静脈血酸素分圧はPvO2である。
Torr
Torrはトリチェリの訳であり「トル」と読む。ものの圧力を示す単位でmmHgと同義。「1気圧は760Torr(=760mmHg)」である。
現在では生理学の分野でもTorrが使われるが、血圧については慣習的にmmHgが使われている。