この記事では『ニュートンテスト(Newton Test)』について解説していく。
ニュートンテストの方法・陽性所見・解釈
ニュートンテストの方法・陽性所見・解釈は以下の通り。
方法
ニュートンテストは「以下の3方法中2方法で仙腸関節部に疼痛が誘発された場合」を陽性とする。
- 仙腸関節離開(背臥位にて、検者は手をクロスして両側の上前腸骨棘を手掌で包み込むように引っ掛け、腹外側方向へ圧迫)。
- 仙腸関節圧迫(背臥位にて、検者は左右の腸骨稜外側に手掌を当て、挟むように正中に向かって圧迫)。
- 仙腸関節スラスト(腹臥位にて、手掌を仙骨に当て、仙骨部を腹側方向へ圧迫)。
以下は仙腸関節離開+圧迫テストの動画なる(仙腸関節スラストの動画は、後で記載)。
陽性所見
「前述した3方法」中2方法で仙腸関節部に疼痛が誘発された場合。
解釈
- 仙腸関節離開(背臥位にて、両側の上前腸骨棘を腹外側方向へ圧迫)
⇒腹側靭帯の伸張+背側関節面の圧迫刺激が加わる。
- 仙腸関節圧迫(背臥位にて、腸骨稜を左右両側から挟むように圧迫)
⇒腹側関節面の圧迫+背側靭帯の伸張刺激が加わる。
- 仙腸関節スラスト(腹臥位にて、仙骨部を腹側方向へ圧迫)
⇒腹側靭帯の伸張(+入力刺激のベクトルを変えるとニューテーション・カウンターニューテーション刺激)
ちなみに、仙腸関節離開テストと同様(腹側靭帯伸張+背側関節面圧迫)の刺激が加わるテストとしては「パトリックテスト」がある。
ニュートンテストの別解釈
文献によっては、前述した3つの方法のうち仙腸関節スラスト(伏臥位にて、手掌を仙骨に当てて、仙骨部を腹側方向へ圧迫するテスト)ををニューテーションテストとして記載している文献もあるので注意したい。
つまりは以下がニュートンテスト。
以下がニュートンテスト(仙骨スラストテスト)の動画となる。
ニュートンテストでは、単純に仙骨へ「腹側方向への刺激」を加える。
つまりは、仙骨のニューテーション・カウンターニューテーションといった方向は特に考慮しない。
ただし、徒手療法でニューテーション・カウンターニューテーション方向へグレード3の力を加えることで、疼痛の誘発、あるいは軽減が認められる場合があるので、ついでに評価しておくことをお勧めする。
関連記事:複合テストを施行することの有用性
仙腸関節の疼痛誘発テストの信頼性・特異性・感受性についての検証では、Laslettらの文献が有名である。
そして、以下に示す6つの疼痛誘発テストを組み合わせることによって、仙腸関節原性の痛みかどうかを同定できると考えられている。
- 離開テスト(Distraction or gapping)
- 大腿スラストテスト(Posterior shear or thigh thrust)
- 圧迫テスト(Compression)
- 仙骨スラストテスト(Sacral thrust)
- ゲンスレンテスト(Pelcic Torsion)その①
- ゲンスレンテスト(Pelcic Torsion)その②
※最初の4つのテストのうち2つ、あるいは6つのテストのうち3つが陽性であれば、仙腸関節性の可能性が高いとされている。
念のため、「理学療法診療ガイドライン 第一版ダイジェスト版 P463」からも引用しておく(「Laslettらの文献」と使用されているテスト名は異なるが内容は同じ)。
Question1
仙腸関節に対する徒手的検査の信頼性はありますか?
Answer 推奨グレードB:
複数のテストを組み合わせて実施することで、仙腸関節に対する徒手的検査の信頼性は高まる。
解説:
以下の6種類の仙腸関節に対する徒手的検査のうち、
①仙腸関節前方引き出しテスト
②大腿剪断テスト
③仙腸関節圧迫テスト
④仙骨剪断テスト
⑤ゲンスレンテスト(股関節屈曲側)
⑥ゲンスレンテスト(股関節伸展側))
3つ以上陽性、または①~④テストの内2つが陽性の場合、
感度94%、特異度78%で仙腸関節性疼痛と診断でき、
6つのテストが全て陰性の場合、仙腸関節の問題を除外できるという報告がある。
この記事では、ここに記載されている6つの仙腸関節テストのうち、離開テスト・圧迫テスト・ニュートンテストを解説していることになる。
残りの大腿剪断テスト・ゲンスレンテスト(屈曲+伸展)に関しては以下の記事で解説しているので合わせて観覧してみてほしい。
⇒『大腿剪断テスト』
⇒『ゲンスレンテスト』
関連記事
以下の記事では、徒手整形外科的テストの一覧をまとめているので、合わせて観覧してみてほしい。