この記事では『大腿剪断テスト(Posterior Shear Test)』について解説していく。
※大腿スラストテストと呼ばれることもある。
大腿剪断テストの方法・陽性所見・解釈
大腿剪断テストの方法・陽性所見・解釈は以下の通り。
方法
- 患者は背臥位。検者は「検査側とは反対」に位置する。(左仙腸関節の検査なら右側へ位置する)
- 左膝関節屈曲位で股関節を屈曲・内転させることで、左仙腸関節に触れることができるのでPSIS(上後腸骨棘)の内側(=仙骨溝)に手を当てて仙骨を固定する。
- 検者はは反対手で左下肢をまとめ、膝に胸を押し当てる。
- 検者はは、体重移動で膝を押すことで、大腿骨長軸方向へ加圧する。
陽性所見
仙腸関節部に疼痛が誘発すれば陽性。
解釈
仙骨を固定することで、(股関節屈曲・内転位にて)大腿骨を介して腸骨が背外側へ可動する力が働くため、仙腸関節へ後方剪断力を加えることができる。
このテストは「PSIS」と「PSISの内側(つまり仙骨溝)」を同時に触知しておくことで、仙腸関節ジョイントプレイテストとして利用されることもある。
※ジョイントプレイテストとして施行するのでであれば、動画の様にガンガン押すのではなく、ゆっくりと関節の動きを感じながら実施する(また、ジョイントプレイテストであれば、触診手と可動手は逆のほうが実施しやすい場合もある)。
関連記事:複合テストを施行することの有用性
仙腸関節の疼痛誘発テストの信頼性・特異性・感受性についての検証では、Laslettらの文献が有名である。
そして、以下に示す6つの疼痛誘発テストを組み合わせることによって、仙腸関節原性の痛みかどうかを同定できると考えられている。
- 離開テスト(Distraction or gapping)
- 大腿スラストテスト(Posterior shear or thigh thrust)
- 圧迫テスト(Compression)
- 仙骨スラストテスト(Sacral thrust)
- ゲンスレンテスト(Pelcic Torsion)その①
- ゲンスレンテスト(Pelcic Torsion)その②
※最初の4つのテストのうち2つ、あるいは6つのテストのうち3つが陽性であれば、仙腸関節性の可能性が高いとされている。
念のため、「理学療法診療ガイドライン 第一版ダイジェスト版 P463」からも引用しておく(「Laslettらの文献」と使用されているテスト名は異なるが内容は同じ)。
Question1
仙腸関節に対する徒手的検査の信頼性はありますか?
Answer 推奨グレードB:
複数のテストを組み合わせて実施することで、仙腸関節に対する徒手的検査の信頼性は高まる。
解説:
以下の6種類の仙腸関節に対する徒手的検査のうち、
①仙腸関節前方引き出しテスト
②大腿剪断テスト
③仙腸関節圧迫テスト
④仙骨剪断テスト
⑤ゲンスレンテスト(股関節屈曲側)
⑥ゲンスレンテスト(股関節伸展側))
3つ以上陽性、または①~④テストの内2つが陽性の場合、
感度94%、特異度78%で仙腸関節性疼痛と診断でき、
6つのテストが全て陰性の場合、仙腸関節の問題を除外できるという報告がある。


この記事では、ここに記載されている6つの仙腸関節テストのうち大腿スラストテストを解説していることになる。
残りの圧迫テスト・離開テスト・仙骨スラストテスト・ゲンスレンテスト(屈曲+伸展)に関しては以下の記事で解説しているので合わせて観覧してみてほしい。
⇒『ニュートンテスト(圧迫テスト・離開テスト・仙骨スラストテスト)』
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以下の記事では、徒手整形外科的テストの一覧をまとめているので、合わせて観覧してみてほしい。