この記事では、「膀胱と尿路の神経性調節」について解説している。
「尿と乏尿の違い」も補足解説しているので合わせて観覧してみてほしい。
蓄尿時の神経調整
膀胱の尿が貯留すると、骨盤神経(求心路)により腰仙髄の排尿中枢が刺激される。
これにより以下が起こり『蓄尿』が可能となる。
- 骨盤神経(遠心路:副交感神経)の活動抑制→膀胱の弛緩
- 下腹神経(遠心路:交感神経) の活動亢進→膀胱の弛緩+内尿道括約筋の収縮
- 陰部神経(遠心路:運動神経) の活動亢進→外尿道括約筋の収縮
上記の神経調整により「尿を排泄せずに貯留しておくことが可能」となる。
排尿時の神経調整
膀胱の尿が400ml程度貯留すると、骨盤神経(求心路)による活動が活発化し、尿意が高まる。
そして、排尿中枢(橋)が興奮することで以下が起こり『排尿』が可能となる。
- 骨盤神経(遠心路:副交感神経)の活動亢進→膀胱の収縮
- 下腹神経(遠心路:交感神経) の活動抑制→内尿道括約筋の弛緩
- 陰部神経(遠心路:運動神経) の活動抑制→外尿道括約筋の弛緩
排便時の神経調節
排便時の神経調節についても記載しておく。
「骨盤神経求心路⇒脊髄⇒骨盤神経遠心路(副交感神経)⇒直腸収縮⇒排便」などの流れは排尿時と類似しているので、セットで覚えたほうが効率が良い。
排便時の神経調節
直腸に消化残渣が送り込まれ、直腸壁が伸展し、
その情報が骨盤神経(求心路)を通って「腰仙髄の排便中枢」に伝えられる。
その結果、以下が起こり『排便』が可能となる。
- 骨盤神経(遠心路:副交感神)の緊張亢進→直腸(平滑筋)収縮。
- 下腹神経(遠心路:交感神経)の緊張抑制→内肛門括約筋(平滑筋)弛緩
- 陰部神経(遠心路:運動神経)の緊張抑制→外肛門括約筋(随意筋)弛緩
直腸に糞便が送り込まれ、そこに蓄えられる(肛門の外肛門括約筋が収縮して排便は抑えられる)。
糞便によって直腸壁が伸展されると、その情報が大脳に伝えられ、便意を催すとともに、排便反射が引き起こされる(実際には排便反射は大脳の意思によって平素抑制されているが、排便時にはその抑止が除かれる)。
「蓄尿時と排尿時」と「排便時」の神経調整
最後に、ここまで記載した「蓄尿・排尿・排便時の神経調整」をまとめて記載して終わりにする。
補足:閉尿と乏尿の違い
補足として、乏尿と尿閉の違いについて解説しておく。
乏尿
乏尿とは「腎臓における尿の生成が少なくなり、1日尿量が400ml以下になった場合」を指す。
例えば以下などで乏尿が起こる。
- 循環虚脱で腎臓への血流が少ないケース
- 脱水で腎臓での水の再吸収が増加するケース
- 急性腎不全により急激な腎機能の低下が起こったケース
尿閉
尿閉とは「尿は生成され膀胱に貯留しているが、排出できないこと」を指す。
例えば前立腺肥大など「下部尿路閉塞や膀胱収縮性の障害」などで起こる。
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