この記事では、自律神経(交感神経・副交感神経)におけるポイントをイラストを使いながらまとめている。
自律神経の総論
自律神経系におけるポイントは以下の通り。
- 自律神経は交感神経と副交感神経に大別される。
- 臓器は通常、交感神経と副交感神経の二重支配を受ける(例外は後述)。
- 交感神経と副交感神経の働きは相反する拮抗的な作用であることが多い(例外は後述)。
二重神経支配・拮抗作用の例
交感神経と副交感神経の二重支配・拮抗作用の例として以下が挙げられる。
交感神経 | 副交感神経 | |
心臓 | 亢進 | 抑制 |
血管 | 収縮 | 拡張 |
気管 | 拡張 | 収縮 |
瞳孔 | 散瞳 | 縮瞳 |
内臓平滑筋・括約筋 | 抑制 | 亢進 |
消化液 | 分泌抑制 | 分泌亢進 |
膀胱 | 弛緩 | 収縮 |
性機能 | 射精 | 勃起 |
「二重神経支配・相反作用の例外」+補足
先ほど、自律神経は交感神経・副交感神経による「二重神経支配」「相反作用」が特徴と記載したが、ここからは例外を記載していく。
また、それに付随した補足も記載しておくので「ついでに紐づけして」覚えておくと効率的だ。
例外①+補足
汗腺・血管平滑筋・立毛筋は交感神経単独支配である(「交感神経で発汗・血管収縮・立毛筋収縮が起こる」一方で「副交感神経による作用は無し」である)。
間違いやすいのは「心臓血管は二重神経支配」という点。
また、骨格筋に関しては交感神経β受容体による血管拡張作用も有している(これにより運動中も血流↑により運動パフォーマンスが向上)。
例外②+補足
唾液腺は交感神経・副交感神経共に分泌亢進作用がある(=二重神経支配だが、拮抗支配ではない)。
例外③+補足
副腎髄質は節前ニューロンによって直接支配されている(交感神経のイラスト参照)。
ちなみに、副腎皮質は交感神経支配ではない。副腎皮質が調整を受けるのは下垂体ホルモン(副腎皮質刺激ホルモン)なので、これらを整理しておくこと。
・副腎髄質←交感神経によって調整(自律神経支配)
・副腎皮質←下垂体ホルモンによって調整(ホルモン支配)
自律神経の「神経伝達物質」「受容体」
- 自律神経は中枢を出ると目的臓器に達するまでに一度ニューロンを交代する(例外は副腎髄質)。そして、「一度ニューロンを交代するための神経細胞が集まっている部位」を自律神経節(交感神経節・副交感神経節)と呼ぶ。
- 中枢にある神経細胞を節前ニューロン(そこから出る線維が節前線維)、途中の神経節にある神経細胞を節後ニューロン(神経節細胞から末梢臓器に至る線維を節後線維)と呼ぶ。
- 神経終末はシナプスで神経伝達物質を分泌して、接触する神経細胞や臓器(平滑筋・分泌腺)に興奮を伝える。
自律神経の「神経伝達物質」
交感神経節前ニューロン末端、副交感神経節前ニューロン末端および副交感神経節後ニューロン末端から放出される神経伝達物質はアセチルコリンである。
一方、交感神経節後ニューロン末端から放出される神経伝達物質は、殆どの例でノルアドレナリン(ノルエピネフリン)である。
自律神経の「受容体」
自律神経において(神経伝達物質を受け取る)「受容体」は以下の2つに大別される。
- アセチルコリン受容体(ニコチン受容体+ムスカリン受容体)
- アドレナリン受容体(=カテコールアミン受容体:α受容体+β受容体)
アセチルコリン受容体
アセチルコリン受容体は「ニコチン受容体」と「ムスカリン受容体」に分けられる。
- ニコチン受容体:節後ニューロンの神経細胞に存在する受容体。
- ムスカリン受容体:(平滑筋などの)効果器に存在する受容体。
アドレナリン受容体(カテコールアミン受容体)
アドレナリン受容体(カテコールアミン受容体とも呼ばれる)は「α受容体」と「β受容体」に分けられる。
- α受容体:全身の血管収縮・胃腸管括約筋の収縮などに関与。
- β受容体:心拍数増加・心収縮力増大・脂肪分解促進、骨格筋の血管拡張、気管支拡張、胃腸管平滑筋弛緩などに関与。
骨格筋に関しては血管収縮(寒い時の震え)に関与することもあれば、血管拡張(運動時など)に関与することもある。
※運動時には、内臓の血流を下げて筋への血流量を増やすという役割を担う。
「自律神経系の神経伝達物質と受容体」を一覧表して整理すると以下になる。
節前ニューロン | 節後ニューロン | 効果器 | ||
末端 (放出される物質) |
受容体 |
末端 (放出される物質) |
受容体 | |
交感 | アセチルコリン | ニコチン受容体 | ノルアドレナリン | α・β受容体 |
副交感 | アセチルコリン | ニコチン受容体 | アセチルコリン | ムスカリン受容体 |
例外
自律神経における「例外的な位置づけ」として覚えておくべきポイントは以下となる(ここまで記載した内容と重複する内容あり)。
例外①
副腎髄質は交感神経節前ニューロンの直接支配を受ける(節後ニューロンを介さない)。なので、副腎には(α・β受容体ではなく)ニコチン受容体があり、そこで(ノルアドレナリンではなく)アセチルコリンを受け取る。
例外②
汗腺は交感神経支配でありながらも、節後ニューロンから(ノルアドレナリンではなく)アセチルコリンが放出される。
例外③
骨格筋の一部(血管を拡張させるβ受容体)も、交感神経支配でありながら、節後ニューロンから(ノルアドレナリンではなく)アセチルコリンが放出される。
交感神経
交感神経は、節前ニューロンは胸髄・腰髄(T1-L2または3)から起始する。
内臓神経の経路
交感神経における内臓神経の経路は以下になる。
- 一旦、交感神経幹に入るものの、交感神経節でニューロンを変えずに、節前線維のまま交感神経幹の前方へ出て内蔵神経になる。
- 内蔵神経は大動脈から出る臓器の動脈基部で神経節(腹腔神経節、上・下腸間膜動脈神経節)を作って節後ニューロンに交代する。
- その後、血管に伴行して各臓器に至る。
副交感神経
副交感神経の節前ニューロンは「脳幹のいくつかの神経核」と「脊髄の仙髄」から起始する。
そして、脳神経や骨盤内蔵神経として中枢を出た節前ニューロンの線維は「支配する臓器の知覚にある神経節」または「臓器の中にある神経叢(アウエルバッハの神経叢)」で節後ニューロンに交代し、平滑筋や分泌腺を支配する。
節前ニューロン | 節後ニューロン | 支配 | ||
副交感神経 | 動眼神経副核(中脳) | 毛様体神経節 | 毛様体筋・瞳孔括約筋 | |
上唾液核 (橋) |
大椎体神経 | 翼口蓋神経節 | 涙腺・鼻粘膜の腺 | |
鼓索神経 | 顎下神経節 | 舌下腺・顎下腺 | ||
下唾液核 (延髄) |
小椎体神経 | 耳神経節 | 耳下腺 | |
迷走神経背側核 | 各臓器の神経節(アウエルバッハ神経叢など) | 心臓・肺・食道・胃・小腸・直腸前半・肝臓・膵臓・脾臓・腎臓など | ||
仙骨の側角 | 骨盤内蔵神経→各骨盤内蔵 | 下行結腸~直腸・膀胱・生殖器 |
上記からも分かるように、脳神経に含まれる副交感神経は「動眼神経」「顔面神経」「迷走神経」である。
この点に関しては、以下も合わせて観覧して理解を深めてみてほしい。
⇒『脳神経12対一覧(語呂合わせ:嗅いで見る動く車の三の外、顔耳のどに迷う副舌)』
自律神経の拮抗作用による、排尿・排便調整機能
排尿・排便の調整も、自律神経拮抗作用の影響を受けており、体性神経作用も含めて整理しておくことは重要となる。
以下では、そんな排便・排泄焼成機能に関して整理しているため、合わせて観覧して理解を深めてみてほしい。
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