血液のpHは通常7.40程度(7.35-7.45)で、わずかにアルカリ性に傾いた状態で一定に保たれている。
そして、上記から逸脱したものを「アルカローシス」「アシドーシス」と呼ぶ。
この記事では上記の用語解説に加えて、代謝性・呼吸性のアシドーシス・アルカローシスの例も一覧表で記載している。
アルカローシスとアシドーシス
アルカローシスとアシドーシスは、それぞれ以下を指す。
アルカローシス
血液のpHが正常範囲(7.35-7.45)を超えて酸性側へ傾いた状態。
つまり、正常範囲(7.35-7.45)よりも「数値は高くなる(高いほどアルカリ性になるから)」。
アシドーシス
血液のpHが正常範囲(7.35-7.45)よりもアルカリ側へ傾いた状態。
つまり、正常範囲(7.35-7.45)より「数値は低くなる(高いほどアルカリ性になるから)。
正常範囲に収まっている状態が正常なため、アルカローシス・アシドーシス共に病的状態と言える。
そして、アシドーシス・アルカローシスは「呼吸性なもの」と「代謝性なもの」に分類される。
呼吸性と代謝性
呼吸性(呼吸が関連)
体液中のCO2 あるいはH+濃度が上昇して酸性に傾こうとすると呼吸運動が亢進し、体液中のCO2 が肺から多量に空気中に排泄され、体液のpHは元の値に戻る。
呼吸の疾患などで、CO2が減少してpHが高くなる状態を『呼吸性アシドーシス』と呼ぶ。
一方過呼吸などでCO2が過剰に排出されて、体液中のCO2が減少してpHが高くなる状態を『呼吸性アルカローシス』と呼ぶ。
代謝性(腎臓が関連)
腎臓は体内の過剰なH+を尿中に排泄し、HCO3-(重炭酸イオン)を再吸収して体液pHを調節する。
しかし、腎機能の低下で体液中のH+が排泄されず、pHが低下することを『代謝性アシドーシス』と呼ぶ。
※この場合、酸性物質の緩衝のためHCO3-が減少する。
また、下痢でアルカリ性懲役が大量に失われる際や、糖尿病などでケトン体などの酸性物質が大量に産生される際にはも代謝性アシドーシスが生じる。
一方で、嘔吐などで胃液中の酸が大量に失われて体液のpHが増大する場合を『代謝性アルカローシス』と呼ぶ。
呼吸性・代謝性のアシドーシス・アルカローシス【一覧表】
前述した内容を一覧表にまとめると以下になる。
呼吸性アシドーシス | 呼吸器疾患などで十分CO2 が空気中へ排出されない |
呼吸性アルカローシス | 過呼吸などで、過剰にCO2 が排泄される |
代謝性アシドーシス |
腎機能低下で体液中のH+が排泄されない・下痢・糖尿病・飢餓 |
代謝性アルカローシス | 嘔吐(胃酸が排出される) |
嘔吐と下痢
嘔吐がアルカローシス・下痢がアシドーシスと覚える。
下痢で重炭酸イオンが過剰に排泄されることでアシドーシスになる。
なぜ糖尿病はアシドーシスになる?
ここでは、補足として「糖尿病がアシドーシスになる理由」について記載していく。
糖尿病は「(細胞の)糖の利用不全」が根源で生じる。そして、糖を利用できないので「脂肪⇒脂肪酸」「タンパク質⇒アミノ酸」へ代謝して、これらを糖の代わりに使用する。
脂肪酸もアミノ酸も『酸』であり、これら酸が増えるので酸性(アシドーシス)になる。
なぜ飢餓でアシドーシスになるか
糖尿病と同様に、糖質を摂取していないため、エネルギーが不足する。そして、糖の代わりに体内にためている脂肪やタンパクを酸(脂肪酸・アミノ酸)へ変換し、エネルギーとして使う。従って、(糖尿病と同様に)体内に酸が増えてアシドーシスになる。
関連記事
以下の記事でも酸塩基平衡について解説している。
以下の記事では循環器系(ガス交換)についても解説しているので、合わせて観覧すると理解が深まるかもしれない。