この記事では、関節の基本情報について記載している。
関節とは
関節とは以下を指す。
上記の定義であれば、可動関節(滑膜関節)以外に不動関節も含めて表現することができる。
関節の各名称
関節(滑膜関節)は以下などで構成されている。
関節軟骨
関節軟骨=硝子軟骨
※ちなみに、線維軟骨で有名なのは椎間板
関節腔
関節腔には無色透明な滑液が入っている。
滑膜
滑膜の作用は以下の通り。
滑液の分泌(A細胞)
関節内の異物を取り込む(B細胞)
関節における血管について
- 骨⇒血管がある
- 関節軟骨⇒血管がない(痛みを感じない)
- 滑膜⇒血管豊富
変形性関節症
変形性関節症では、関節軟骨が機械的刺激により徐々に摩耗することで発症する。
関節軟骨が摩耗しても痛みを感じないが、その奥にある骨(軟骨下骨)にまで刺激が達するようになると痛みを感じるようになってしまう。
変形性関節症とは
関節軟骨は、40代ころから硬くなり以下となる。
- 関節軟骨の摩耗
- 軟骨下骨に機械的刺激
- 骨硬化・骨棘形成
- 関節変形
軟骨には血管が無いが、その奥の骨(軟骨下骨)には血管があるため、ある程度病状が進行してから(ある程度、関節軟骨が摩耗してから)痛みが出始める。
変形性関節症は以下の2つに分類されれる。
- 一次性(原発性)⇒加齢以外の原因が無い場合
- 二次性(続発性)⇒疾患や外傷・感染症などに続いて発症する場合
変形性股関節症
変形性股関節症の分類
変形性股関節症は以下の2つに分類される。
一次性
- 原因がハッキリとしないもの。
- 欧米では50%を占める。
二次性
- (変形性股関節症を引き起こす)原疾患があるもの。
- 日本では二次性が多い。
原疾患としては以下が挙げられる。
・発育性股関節形成不全(変股症の90%)
・その他、ヘルペス病・外傷など
症状
変形性股関節症の症状は以下になる。
- 初期は股関節の運動後痛
↓
- 徐々に、運動開始時痛が起こり始める(変形性関節症独自の症状)
↓
- 安静時痛・運動時痛出現
有痛性の可動域制限出現
↓
- 変形が進むと関節破壊による関節可動域制限
残存する関節可動域を変える運動を強制されると激痛が生じる。
※このレベルで手術する人が多い。
↓
- 関節可動域が完全に消失(完全拘縮)すると疼痛消失するケースもある。
治療
治療は「保存的治療」と「手術的治療」に分けられる。
保存的治療
- 減量(まずは3kg減を目標とするのがおススメ)
- 筋力増強訓練(股関節周囲筋を中心に)
- 温熱療法(ホットパックなど)
- マッサージ
荷重関節(特に股・膝関節)は「体重の数倍の負荷がかかる」と言われている。
仮に「体重の5倍負荷がかかっている」とした場合、3kg体重が増えると関節への負担は15倍に増える計算になる。
実際、股関節痛が増悪した際に問診してみると「体重が増えている」とのコメントが得られること多い。逆に股関節痛が軽減した場合は「体重が減っている」とのコメントが得られること多い。
手術的治療
- 人工股関節置換術(臼蓋・大腿骨頭ともに人工物にする)
- 人工骨頭置換術(大腿骨頭を人工物に変える)
変形性膝関節症
変形性膝関節症では、(変形性股関節症と異なり)一次性が圧倒的に多い。
一次性⇒加齢以外の原因がない
二次性⇒他の疾患に引き続き発症
好発年齢・性差
変形性股関節症は、50歳以上の女性に多いと言われている。
もっと厳密にいうと、40~50歳代では圧倒的に女性の発症が多いが、80歳代以上となると性差が無くなる。
女性が多い理由として、もちろん骨格的な要素もあるが、筋量差も関係していると考えられる。
内反変形・外反変形
- 内反変形=O脚(日本人に多い)
- 外反変形=X脚(欧米人に多い)
症状
初発
・運動後に発症・歩行時痛・安静で軽快
↓
・数日~数カ月で消失⇒痛かったことを忘れる。半年か1~2年で再発を繰り返す。
・徐々に運動開始時痛が生じるようになる(変形性関節症に共通した特徴)
進行
・安静時痛・関節水腫(繰り返す)・疼痛性ROM制限(正座が出来ないなど)
末期
・関節破壊・骨性ROM制限・内反変形・大腿四頭筋萎縮
変形性膝関節症(=膝OA)何となくのイメージ:
リハビリしなければ、40~50歳代で初期膝OA⇒60歳代で疼痛増悪・水腫繰り返す⇒70歳代で人工膝関節。
膝蓋跳動テスト
膝の腫脹を評価する徒手検査法として「膝蓋跳動テスト」がある。
動画としては以下を参照。
膝関節は伸展位でも良いが、軽度屈曲位が良肢位(安楽な肢位)なため、こちらが採用されることが多い(膝下にクッションなどを敷き軽度屈曲位とする)。
一側手(頭側手)で水腫を膝蓋骨方向へ寄せ集め、反対手(尾側手)で膝蓋骨が動くか評価(水腫があれば膝蓋骨がぷかぷか浮いているので、よく動く)。
検査
単純X線検査(関節裂狭小化、骨棘形成・高度な変形)
治療
- 減量(3kg減量を目標。関節への負担は体重の5倍と考えると、15kgの負荷が減る)。
- 大腿四頭筋訓練
- NSAIDs(内服+湿布)
- 関節内注射(ステロイド・ヒアルロン酸)
- 足底版(O脚に対しては外側ウェッジ)
- 手術として人工膝関節・若くアクティブなら高位脛骨骨切り術を検討。
足底板
外側ウェッジは医療機関で保険適応で処方可能。ただし、ロフトなどで「O脚補正中敷き」も販売しているので、それを試してみるのもあり。機械的ストレスが変化するので、適応であれば即時的かつ著効を示す。ただしロフトの場合、あくまで中敷きなので屋外活動時のみの症状軽減に役立つ。
以下はアマゾンで購入できる中敷きなので、興味があればチェックしてみてほしい。
人工膝関節と高位脛骨骨切り術
人工膝関節は関節可動域制限が生じる(正座困難・しゃがみ動作困難)。また、耐久年数も考慮し、手術適応時の年齢が若い場合は高位脛骨骨切り術が適応されることもある。
補足資料
補足として理学療法士協会の資料も添付しておく。