この記事ではウィルス感染の疾患について記載している。
インフルエンザ(+タミフル)
インフルエンザは「インフルエンザウイルス」と「インフルエンザ菌」があるので混同しないように。
※インフルエンザ菌は、病理学で比較的出題される!(ここでは割愛)。
インフルエンザのポイントは以下の通り。
- 一般的に(A・B型が)冬季に流行する(B型は春先にも流行しやすい)。
- 風邪症状で発症するので初期診断が難しい。
- 小児や高齢者では重症化することがある。
- インフルエンザ脳炎などの合併症が起こることもある。
ウイルスが増殖した後では薬の効果がないので、発症早期(48時間以内)に服用することが望ましい。
抗インフルエンザ薬としてはタミフル・リレンザが有名。
ここから先は、タミフルについて記載していく。
タミフルについて
タミフルの作用機序
タミフルの作用機序は以下の通り。
※つまり、HAが細胞膜から切り離されるのを抑制するということ。
↓
※つまり、拡がりを抑える(重症化を抑える)というのが目的なため、早期でないとタミフルの効果はない(重症化したものを改善させる薬剤ではない)。
↓
※つまり、感染から40~48時間を超えると原理的には効果がないということ。
タミフルの誤解
「インフルエンザ脳炎などを合併することがある」と記載したが、これによりインフルエンザでは異常行動がみらる可能性がある。
そして、「タミフルの副作用として異常行動がみられることがある」と記載されている文献も多いが、実際のところ「異常行動がインフルエンザによる影響なのか、タミフルによる影響なのか」はハッキリしない。
従って正誤問題で「タミフルは異常行動を伴う心配がある」という設問が出てきた場合、答えは「誤り」である。
風疹
風疹は風疹ウィルスの感染で発症。
別名3日はしかと呼ばれる(「3日で治るはしか」という意味)。
妊娠中の罹患で「胎児の奇形(先天性風疹症候群)」が生じる。
経過
飛沫感染(潜伏期14~21日)⇒上気道粘膜増殖⇒リンパ節での増殖⇒ウィルス節腫脹(発疹前数日~3-6週)⇒発疹(バラ紅色斑状丘疹:顔・耳後・頸部・体幹・四肢)・発熱⇒2~3日解熱⇒回復。
診断
典型的臨床症状
治療
安静、水分補給、対処療法
風疹ワクチン(弱毒性風疹ワクチン)
予後:良好、ときに関節炎、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血
麻疹
麻疹は麻疹ウィルスの感染で発症。
別名はしかと呼ばれる。
第5種感染症。
罹患者・死亡者
数万・数十人/年
症状
飛沫感染(潜伏期10~12日)⇒上気道粘膜⇒カタル期(2~3日)⇒コプリック斑(口腔粘膜)⇒解熱⇒発熱(2~3日)・発疹(耳の後ろ、頸部⇒全身)⇒回復期
治療
- 安静・水分補給・対処療法
- 麻疹ワクチン(弱毒性麻疹ワクチン)生後12~90カ月で免疫成立
予後
良好。
時に麻疹後肺炎、中耳炎、脳炎。
流行性耳下腺炎
流行性耳下腺炎はムンプスウィルスの感染で発症。
別名おたふくかぜと呼ばれる。
第五類感染症。
罹患者
学童が主、15%は思春期以降。
経過
飛沫感染(潜伏期2~3週)⇒粘膜下組織で増殖⇒ウィルス血行⇒唾液腺・膵臓・睾丸・髄膜
症状
発熱、有痛性耳下腺腫脹
合併症
髄膜炎(=難聴に繋がる)、すい臓炎・睾丸炎症(=不妊に繋がる)
※膵臓まで症状が及ぶと、かなり重症化であることを意味する。
診断
典型的臨床症状、血清アミラーゼ(腺組織が壊れて、外へ出てくるから)
治療
耳下腺湿布、対症療法
予後
1週で軽快、髄膜炎⇒難聴、睾丸炎⇒(男性が原因による)不妊
単純ヘルペス感染
単純ヘルペスはHSV1・HSV2に分類される。
HSV1
幼児期感染、口腔粘膜⇒歯肉口内炎⇒髄膜炎
再活性化:神経節支配領域の皮膚にヘルペス(口唇ヘルペス)
目⇒角膜ヘルペス
HSV2
性行為感染(潜伏期2~20日)⇒知覚神経終末⇒軸索⇒知覚神経節⇒性器ヘルペス
診断
ウィルス分離同定、ウィルス抗原抗体反応、遺伝子診断
治療
抗ウィルス薬(アシクロビル、ビダラビン)
予後
- 免疫能正常患者⇒予後良好、再発あり
- 免疫不全患者、中枢神経感染、新生児(妊婦産道)⇒予後不良
水痘・帯状疱疹
水痘・帯状疱疹は水痘・帯状ヘルペスウィルスの感染で発症。
罹患者
水痘⇒小児期感染
帯状疱疹⇒高齢者
感染
飛沫または接触感染(上気道、水痘内溶液10~20日)⇒急性丘疹(水痘)⇒神経に潜伏⇒再活性化(帯状疱疹)
症状
発熱、水痘(紅色丘疹⇒水痘⇒膿疱⇒痂疲)
帯状疱疹では、「神経潜伏感染、再活性化で帯状水泡、肋間神経痛(肋骨に沿った痛み」が特徴。
診断
ウィルス分離同定、ウィルス抗原抗体反応
治療
抗ウィルス薬(アシクロビル)、非ステロイド性抗炎症薬
予後
- 免疫能正常患者⇒予後良好、再発あり(疼痛)
- 免疫不全患者、新生児(妊婦産道)⇒予後不良
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