骨の特徴 | 整形外科・解剖学

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この記事では、骨の「役割」「リモデリング」「ビタミン・ホルモンの関係」について解説していく。

 

目次

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骨の役割

 

骨の役割は以下の通り。

 

  • 骨格⇒体形の保持
  • 臓器の保護
  • カルシウムの貯蔵
  • 造血機能

 

上記は国家試験でも出題されるレベルな重要知識である。

 

骨の成長

 

骨は成長ホルモンの影響により、生後から一定の年齢までドンドンと成長していく。

 

そんな「骨の成長」を長管骨(長い骨)を例に解説する。

 

長管骨の成長は以下の2つに分類される。

  • 縦軸方向の成長
  • 横軸方向の成長

 

縦軸方向の成長

縦軸方向の成長は「骨端軟骨(=成長軟骨)が石灰化しつつも、末梢方向へドンドン肥大化すること」で起こる。

縦軸方向への成長は(軟骨によって生じることから)軟骨内骨化と呼ばれる。

ちなみに「骨端軟骨」と聞くと、何となく「骨の先端」をイメージしてしまいがちだが(後述するイラストの様に)先端ではない点に注意してほしい。

ちなみに「長管骨における骨の先端」は関節を形成していることが多く「(骨端軟骨ではなく)関節軟骨」が存在する。

関連記事⇒『関節の構成体を解説

 

横軸方向の成長

横軸方向の成長は骨膜(骨の表面に存在する組織)の骨芽細胞が作用することで生じる。

横軸方向への成長は(骨膜が関与していることから)膜性骨化と呼ばれる。

この記事では「長管骨(長い骨)」を例に解説しているが、」(腸骨や頭蓋コツなどの)扁平骨」の成長は(前述した軟骨内骨化ではなく)膜性骨化が主に関与している。

 

上記の解説をイラストにしたものが以下になる。

 

 

骨新生・骨破壊・骨溶解・骨吸収

 

骨は骨新生骨破壊を繰り返しながら常に代謝を繰り返している。

 

骨破壊は「骨溶解」「骨吸収」と同義である。

そして、「骨破壊・骨溶解」は何となく骨を弱くする(骨密度が低下する)イメージがあるので分かりやすい。

一方で「骨吸収」という用語は、何となく「骨にCaが吸収されて骨密度が高まる」とイメージ易いが、逆である。「骨吸収とは、骨からCaを溶解(骨破壊)する作用」を指すので間違わないように。

 

 

骨のリモデリング

 

成人骨格では常に3~5%リモデリングされる。

  • 骨吸収期間約40日
  • 骨形成期間約140日

 

上記の厳密な期間は文献によって異なるので重要ではないが、ポイントは以下となる。

 

骨は「壊す」と比較し「造る」の方が約3倍もの期間が必要

 

従って、例えば「病的な甲状腺機能亢進(バセドウ病)」により全身の新陳代謝が活発になると、骨粗鬆症が進行する。

 

 

骨とホルモン・ビタミンの関係性

 

骨に関連したホルモン・ビタミンは以下の通り。

 

  • 副甲状腺ホルモン
  • カルシトニン
  • 成長ホルモン
  • 甲状腺ホルモン
  • エストロゲン(女性ホルモン)
  • アンドロゲン(男性ホルモン)
  • 副腎糖質コルチコイド
  • ビタミンD

 

副甲状腺ホルモン

 

副甲状腺ホルモンは「パラソルモン(PTH)」「上皮小体ホルモン」と同義である。

 

副甲状腺ホルモンの役割は以下の2つになる。

 

  1. 骨に直接作用し骨破壊を行う(⇒血中Ca濃度上昇)
  2. 腎臓に作用しビタミンD活性化促進(⇒血中Ca濃度上昇)
  3. 腎臓に作用してカルシウム再吸収促・尿中への排泄抑制(⇒血中Ca濃度上昇)
腎臓におけるビタミンDの活性化を促進して、活性型ビタミンDの作用によって腸管からのカルシウムの吸収を増加させる。

上記により「血中のカルシウム濃度を一定に保つ働き」を副甲状腺ホルモンは担っている。

 

特に骨密度に関しては①が重要で、この作用により骨密度は低下する。

 

 

カルシトニン

 

カルシトニンは甲状腺傍濾胞から分泌されるホルモンである。

 

カルシトニンは「甲状腺から分泌するホルモン」であるが「甲状腺ホルモン」とは呼ばず、カルシトニンと呼ぶ(作用も異なる。甲状腺ホルモンの作用は後述する)。

 

カルシトニンの作用は以下の通り。

 

破骨細胞の機能抑制

上記の作用により以下が生じる。

  • 骨新生(↑↑)
  • 骨破壊(↓↓)
  • 血中Ca(↓↓)

 

カルシトニンは骨粗鬆症の予防・改善を目的に、治療として用いられることもある。

 

 

成長ホルモン

 

成長ホルモンは脳下垂体前葉より分泌される。

 

中枢神経と眼以外の全ての組織の成長を促す。

※骨の成長も促す。

 

骨では長管骨の成長軟骨に対して、増殖・肥大を促進する。

 

「成長ホルモンと骨成長」については前述した「骨の成長」も参照してほしい。

 

 

甲状腺ホルモン

 

甲状腺ホルモンは代謝を亢進させる作用がある。

 

そして、通常は骨破壊と骨新生では、骨破壊のほうが約3倍も優位なので、甲状腺機能が亢進すると骨粗鬆症リスクが高まってしまう。

 

前述した「骨のリモデリング」のイラストをここにも添付しておく。

 

 

エストロゲン(女性ホルモン)

 

エストロゲン(女性ホルモン)は以下の作用を持っている。

 

サイトカイン(骨破壊↑・骨新生↓の役割を持っている)の抑制

 

従ってエストロゲンの分泌が減ると骨密度が低下する。

 

女性では閉経後にエストロゲンが0になってしまい、これが骨密度低下を招いてしまう。

 

※閉経は40~50代で起こるとされており、そこから骨密度が急激に下がる。

 

 

ただし、上記イラストを見てもらうと分かるように、閉経で骨密度が急低下した後に、低下度合いがなだらかになる(男性と平行な下降を示す。

 

そして「なぜ閉経後の骨密度急低下が、途中でなだらかになるのか」の理由は、まだハッキリとは分かっていない。

 

例えば、エストロゲンが0になることで、新たな身体機構が女性に備わり、それがエストロゲンの代わりをしてくれているのではないかという説もある。

 

アンドロゲン(男性ホルモン)

 

アンドロゲン(男性ホルモン)の作用は以下の通り。

 

蛋白同化(合成)作用

 

骨も膠原繊維(コラーゲン)やプロテオグリカンなどの蛋白質の成分を含んでいるので、蛋白生成が促進されると、骨密度が高くなる。

 

 

副腎糖質コルチコイド

 

副腎糖質コルチコイドの作用は以下の通り

 

蛋白異化(分解)作用

 

つまりは、前述したアンドロゲンと逆の機序(コラーゲン↓・プロテオグリカン↓)により骨密度が低下する。

 

副腎糖質コルチコイドは「ステロイドホルモン」とも呼ばれ、消炎鎮痛効果も有しているため、積極的に活用される場合がある。

 

ただし、ステロイドの副作用の一つとして骨粗鬆症がある点も覚えておこう。

 

 

ビタミンD

 

ビタミンDは以下により補給できる。

  • 食事(食事により十二指腸から吸収。野菜にはほとんど入っておらず、サーモンなどの魚で吸収しやすい)
  • 皮膚からの紫外線の作用により生合成

 

これらが活性化ビタミンDとなり、以下の作用により血中Ca濃度を上昇させる。

  1. 腸管からのCa吸収促進
  2. 骨破壊

 

上記は骨に対して相反する作用となる。

ただし、「②の作用」は骨に対してネガティブ(骨密度を低下させる作用)だが、「①の作用(骨密度を上昇させる)」のほうが優位なため、ビタミンD摂取は骨密度に対してポジティブに働く。

 

従って「カルシウムを摂取するだけでなく、(カルシウムの吸収を促進するためにビタミンDも合わせて摂取」は正しい。

 

しかし高齢者は、どうしても食欲が低下して、ビタミンD不足に陥りやすい。

なので、日向ぼっこで多少でも紫外線を浴びることは重要となる。

 

最近では紫外線のネガティブな側面がクローズアップされているため、若者でも「長袖+日焼け止め」で完全防備している人も見かけるが、日に数分でも良いので肌に日光を浴びてみよう。

 

以下はエストロゲン(ER)」「カルシトニン(CT)」「パラソルモン(PTH)」「ビタミンD(VD3)」の作用を、血中カルシウム濃度を中心に図示したイラストになる。

 

ここまでの解説をイメージするのに参考になると思う。

 

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