この記事では、「整形外科的な治療」と「治癒過程」について解説していく。
整形外科の治療は以下の2つに分類される。
- 外科的治療
- 保存的治療
ここから先は、開放性孫相にフォーカスを当てて、外科的治療について解説いていく。
開放性損傷とは
開放性損傷とは「損傷部の皮膚が破れ、外気に晒された状態」をさす。
一方で非開放性損傷とは「組織損傷の重軽に関わらず、皮膚の損傷が見られない状態」を指す。
開放損傷は外気に晒されているため(非開放損傷と異なり)「細菌感染リスクが高い」という特徴がある。
つまり上記は「細菌感染が生じるかどうか」という発想に基づいた分類となる。
※細菌感染していると、もちろん治癒が遅くなる。
開放損傷では、細菌感染の危険性が高いので予防処置が重要で、具体的には以下の通り。
- 創の徹底的な洗浄とブラッシング
もしも転倒してアスファルトで擦りむいて、砂利などが付着した傷口は「チョロチョロと水を流す」ではなく「ゴシゴシとタワシで擦る」くらい徹底して細菌感染を予防する」くらいの心構えが重要。
↓
- デブリドマンを施行
創面の異物・壊死組織・これから壊死するであろう挫滅組織を切除・除去すること
golden hour の重要性
golden hour (=golden period・黄金の時間)とは「受傷後6時間以内のこと」指す。
この期間であれば、洗浄・ブラッシング・デブリドマン後に「創の閉鎖」をしても良い。
一方で、受傷後6時間以上経過しているのであれば、細菌感染の危険度が増すので、開放創にしておき経過観察する。
縫合
縫合には以下の2種類がある。
- 1次縫合⇒創を縫合すること
- 2次縫合⇒縫合を行わず、開放創のまま治療させること(なぜコレに「縫合」という用語を用いるかは不明)。
※2次縫合はgolden periodを過ぎた患者の処置として適応される。
創治癒の経過
創治癒の経過は以下の通り。
- 出血
浸出液(血漿成分)のフィブリノゲン(液体)がフィブリン(線維)に変わる(=フィブリン網形成)。
↓
- 壊死組織・異物の排除
壊死組織・異物の排除は、白血球の貪食作用による。
↓
- 線維芽細胞の増殖・線維組織の増殖・毛細血管の増殖
これにより「肉芽組織」が形成される。良い肉芽は多くの毛細血管が入り込む。肉芽はいるまでも存在するわけではなく、その後に毛細血管がなくなり、肉芽は消失する。
↓
- 毛細血管の遅行・消失
これにより元の組織に置き換わる(骨は完全に置き換わり易い)。
一方で、瘢痕となる場合がある。瘢痕は「完全に元の状態が組織に戻らず、(毛細血管の無い)肉芽組織のまま残ってしまうこと(腱・靭帯・筋肉は100%元の組織に置き換わらず、瘢痕が残り易い)。
瘢痕が起こるかどうかは、様々な要因による。
(損傷の程度だけでなく、栄養状態・遺伝など様々)。
治癒の阻害因子
治癒を阻害する因子は以下の通り。
- 局所の血流障害
- 大量の壊死組織の存在(だからデブリが必要)
- 異物の介在(だから開放性損傷では、十分な洗浄・ブラッシングを行う)
- 細菌感染(膿が出てきたら治らないので、膿を掻き出してあげる or 常に清潔にしておく)
- その他の合併症
その他の合併症としては「高齢(代謝が悪い)」「低栄養(低タンパク血症や亜鉛・ビタミンC欠乏)」「糖尿病」「抗がん剤・長期ステロイド投与(免疫力低下)などが挙げられる。
炎症
炎症とは以下を意味する。
血管をパンパンにして、白血球を含んだ血漿成分を漏出させる!
炎症の4徴候
炎症の4徴候は以下の通り。
- 腫脹
- 発赤
- 疼痛
- 熱感
これに機能障害を加えることもある。
対応
炎症に対する対応は以下の通り。
- 原因の除去
- 冷却(冷却で、漏出し過ぎた血漿成分↓・熱↓で凄く楽になる)
- 局所安静
- 抗炎症剤(NSAIDsなど)
余談:温湿布と冷湿布の違いについて
温湿布トレイシップの違いは、メンソール・唐辛子のどちらの成分が入っているかどうかだけ。
本当に冷やしている・温めているという訳ではなく、上記の成分で、その様に感じているだけ。
メンソールの方がかぶれにくいので「温湿布が欲しい!」と主張しない限りは冷シップが出る傾向にある。
もし温かくしたいなら、冷湿布の上にホッカイロを乗せるなどして温めたら、普通に温熱効果が得られる。