この記事では、骨・関節の感染症についてい解説していく。
化膿性脊髄炎
化膿性脊髄炎の定義は「細菌による骨(骨膜・骨皮質・骨髄)の感染」である。
化膿性脊髄炎は、急性期から「治療法・細菌感染力・患者抵抗力」のバランスにより慢性化することもある。
膿・菌には抗生剤だが、服薬では血管が豊富な部位へ優先的に行き届いてしまい、(血管が乏しい骨の化膿は治りにくい。
感染経路
- 血行性(喉・腹部・皮膚の感染により菌が骨にまで及ぶ)
- 近傍の感染巣からの直接波及(重度な褥瘡など)
- 開放性損傷で直接的に骨へ感染する(日本ではゴールデンハワー内に適切な処置が為されるため、意外と少ない)
上記感染経路の中では「血行性」が一番多い。
※特に「子供の血行性」が多く、理由は「子供は成長軟骨があり、骨端でも血管が豊富」だから。
急性化膿性脊髄炎
特徴
- 小児の血行感染が多い(前述した通り。大人では抵抗力が低下しているケースで感染しやすい)
- 好発部位は長管骨(大腿骨・脛骨・上腕骨など)の上下端
- 黄色ブドウ球菌によるものが最多(最も多い細菌なため)
- 「骨端の化膿層」が関節内・骨髄腔・骨皮質と広がっていく。
症状
- 局所症状⇒強い疼痛(拍動性・運動性・持続性)、発赤・熱感・腫脹も強い
- 全身症状⇒敗血症を伴うことあり
検査
- 単純X線:発症直後は異常なし⇒1週間くらいで骨反応
- 採血 :白血球↑↑・CRP↑↑
治療
まず抗生剤大量投与(点滴)
上記で24時間以内に反応なければ緊急手術
- 骨膜切開⇒排膿
- 骨開窓術⇒骨内を抗生剤で洗浄
合併症
- 敗血症⇒死亡
- 化膿性関節炎併発(後述)
- 骨の成長傷害・病的骨折など
- 慢性化(慢性化膿性骨髄炎)に移行
慢性化膿性骨髄炎
病因
- 急性(急性化膿性脊髄炎)からの移行
- 急性化膿性脊髄炎が治癒したと思われていたものが、数年~数十年後に再発
- 開放性骨折後、数年後に再発
- 一次性のもの(凄く少ない。血行性感染後、急性化せず慢性発症するもの)
症状
- 鈍痛・軽い熱感・発赤・腫脹
- 皮膚廔孔(ろうこう)から排膿
治療
- 病巣部は血流悪く抗生剤が効かないので手術。
- 腐骨摘出
- 病巣広範囲切除(正常な組織も含める)
- 持続局所還流法(2~4週)
化膿性関節炎
化膿性関節炎の原因菌は、黄色ブドウ球菌が最多。
- 血行性感染が多い
- 小児の骨髄炎からの波及が多い。
- 成人では「高齢者の膝関節」に多い(理由としては膝痛などへの関節注射時の感染)。
※膝が急に腫れていたがっている高齢者は、針刺しで起こっていないか確認。
※膝痛は変形性膝関節症以外に、化膿性関節炎・偽痛風と間違わないよう要鑑別。
乳児化膿性股関節症
乳幼児化膿性股関節症の特徴は以下の通り。
- 血行性骨髄炎から「化膿性股関節症への移行」が多い(大腿骨近位端が多い)。
- 好発年齢は0~1才。
- 症状はオムツ交換時に激しく泣くなど
補足:単純性股関節炎
単純性股関節炎は、ここまで記載してきた「菌由来」ではなく「原因不明」で発症する。
特徴は以下の通り。
- 幼稚園から小学校低学年に多い
- 急に股関節の激痛で発症(小児は正確に部位を表現できず、膝や足に疼痛を訴えることあり)
- 原因不明
- 検査では「単純X線や採血は異常なし」が特徴
- 数日~数週間で自然治癒
骨肉腫
骨肉腫の特徴は以下の通り。
- 骨肉腫は、悪性の原発性骨髄腫の中で最多である。
- 10代の男性に多い
好発部位
- 大腿骨遠位と脛骨近位の骨幹端で3/4を占める(つまり膝近位部に発症し易い)
- その他では上腕骨近位
診断
- 血液⇒ALP(アルカリフォスターゼ)上昇
- 単純X線・MRI
治療・予後
- 肺転移により死亡(こうならないためにMRIによる早期発見が大切)。
- 5年生存率は60~70%(50年前は抗がん剤が無く10%だった)
- 早期発見+化学療法・放射線治療+手術(人工物を入れるなどして患肢温存)