この記事では「手部の疾患」について解説していく。
手部の機能
手部の皮膚
「手部の皮膚」は背側と掌側で各々が特徴が異なっており具体的には以下の通り。
手掌面
- 皮膚層が厚い(プニョプニョした肉厚がある)。これにより、物に触れた際の外傷から守ることができる。
- 皮膚と皮下組織の移動性が少ない。これにより物が掴みやすい。
- 指先部に知覚神経が豊富。これにより物の性質が分かりやすい。
- 独特な紋がある。
- 毛根なし。
手背面
- 皮膚と皮下組織の移動性に富む(皮膚がズルズルと動く)。これにより、指の屈曲が抵抗なく行える。
- 爪がある。
- 毛根あり。
手の主要機能
手の主要機能は以下の3つになる。
- つかむ(主に尺側の指が、完全に強く屈曲することで行われる)
- つまむ(母指と示指・中指の対立運動)
- 識別(母指・示指・中指)
de Quervan病(ドゥ・ケルバン病)
ドゥ・ケルバン病は以下の病態を指す。
特徴
- 中高年以上の女性に多い。
- 産後数カ月の女性が多い。
「産後数カ月の女性に多い理由」としては以下のように言われている。
症状
母指の中手骨基部から橈骨茎状突起にかけての自発痛・運動痛・圧痛(+腫脹・熱感・発赤)
疼痛誘発テスト
疼痛誘発テストとして「Eichhoff test(アイヒホッフ テスト)」がある。
Eichhoff test(アイヒホッフ テスト)
母指を他4指に入れ込み(母指MP屈曲・CM内転)、手関節を尺屈させる。
これにより長母指外転筋腱・短母指伸筋腱が腱鞘内を滑走し、狭窄した腱鞘に機械的刺激を加え、疼痛を誘発する。
類似テストに「ファンケルシュタインテスト」があり、このテストに関しては動画を参照してもらいたい。
以下の記事ではファンケルシュタインテスト・アイヒホッフテストの違いも含めて各テストを解説しているので、気になる方はチェックしてみてほしい。
治療
- 原因動作の禁止
- 局所の安静⇒固定
- 腱鞘内注射
弾発指(ばね指)
弾発指(ばね指)の特徴は以下の通り。
概要
- 手指屈筋腱のMP関節掌側部の狭窄性腱鞘炎。
- 中高年以降の女性が多い。
好発部位
母指・示指・環指
症状
- 指屈伸時に引っかかる。
- MP関節掌側側に腫瘤を触れる。
- 自発痛・圧痛。
治療
- 初期⇒腱鞘内注射(ステロイド)が著効。
- 進行⇒腱鞘切開術
Dupuytren拘縮(デュプイトラン拘縮)
ドュプイトラン拘縮の概要は以下の通り。
病態
尺側の指(小指)から進行
手掌腱膜の瘢痕性肥厚(線維腫症)による。
原因不明。
MP関節・PIP関節の拘縮(DIP関節は動く)
治療
手術(肥厚した手掌腱膜の切除)
マッサージで悪化することは無い。
Heberden結節(へバーデン結節)
へバーデン結節の概要は以下の通り。
症状
- (変形の)進行中はDIP関節に疼痛・圧痛が生じる。
- (変形の)進行が止まると、疼痛消失する(変形は残存)。
- 変形のみで、疼痛が無い人もいる。
診断
単純X線で骨棘証明
治療
NSAIdsの内服・塗り薬(進行中の疼痛を軽減させるための対処療法)。
以下のポイントを伝えることも大切。
「変形が進行している間は疼痛が持続しやすいが、いずれ必ず痛みは治まる」と伝える。また、「変形は残存するので指輪は必ず外しておくこと」も伝える(手術をしない限りは、指輪が抜けなくなる)。
Bouchard結節(ブシャール結節)
ブシャール結節とは「手指PIP関節の変形性関節症」を指す。
・手指DIP関節の変形性関節症⇒へバーデン結節
・手指PIP関節の変形性関節症⇒ブシャール結節
ヘバーデン結節とブシャール結節は単独で生じることもあれば、合併することもある。
ヘバーデン結節の方が発症頻度は高い。
ガングリオン
ガングリオンの概要は以下の通り。
好発部位
手関節背側・足背・膝窩部。
※全身どこにでもできる。
※原因は不明
症状
- 腫瘤
- 弾発硬
- 境界線が明瞭+ガングリオンがコロコロ動く
治療
- 圧砕(押しつぶして砕く・痛い)
- 穿刺吸引(ゼリー状で淡黄色透明でゼリー状なヒアルロン酸が吸引できる)
- 摘出術
※①②は袋が残っているので、再発する。