この記事では股関節疾患について解説している。
股関節の概要
大腿骨頭すべり症
大腿骨頭すべり症は以下を指す。
病型・症状
- 大腿骨頭すべり症は11~13歳(あるいは思春期)の男子に多い。
- 片側性で発症し、約半数が両側性へ移行する。
- 大腿骨頭すべり症は「急性型」と「慢性型」に分類される。
急性型:
・外傷を契機に急激に発症(30%の割合)。
・骨折類似の疼痛(=激痛)。
慢性型:
・原因不明でゆっくり発症する(70%の割合)。
・初期は運動後に出現する軽い疼痛。
治療・早期発見
早期治療が必要。
治療としては「整復後の内固定」。
合併症・後遺症
変形性股関節症・大腿骨頭壊死などへ移行する可能性あり。
大腿骨頭壊死
大腿骨頭壊死は「症候性」と「特発性」に分類される。
- 症候性大腿骨頭壊死⇒原因が明確なもの
- 特発性大腿骨頭壊死⇒原因が不明なもの
ここから先は、特発性大腿骨頭壊死にフォーカスして解説していく。
特発性大腿骨頭壊死
「特発性大腿骨頭壊死は原因不明なもの」と前述したが、「発症しやすい人の傾向」というのがあり以下の通り。
- ステロイド長期投与者(30%の割合)⇒なので女性が多いイメージ
- アルコールの多飲・中毒(30%の割合)⇒なので中年男性が多いイメージ
発症機序
原因は不明だが、外側骨端動脈の狭窄や閉塞により大腿骨頭が壊死する。
病理変化
症状
片側での発症だが、50~70%が数年以内に両側性へ移行する。
股関節痛は、しばしば急性に発症に発症・安静で軽快する(2週間程度で消失することあり)。進行すると疼痛増悪。
診断
単純X線検査で以下を認める。
初期では大腿骨頭に帯状硬化像を認める。
進行すると骨頭の陥凹を認める。
MRIなら、帯状硬化像出現前の壊死層が判別可能(早期発見・早期治療が可能!)。
治療
- 保存的治療←壊死部が小さく、陥凹無しな場合。
- 手術(大腿骨回転骨切り術・人工骨頭置換術)
発育性股関節形成不全
発育性股関節形成不全は以下を指す。
- 生下時に外傷や感染に関係なく、股関節が脱臼するもの。
- 成長の途中で、脱臼したまま整復されないもの。
- 臼蓋形成不全い移行するもの。
性差
女性に多い。
原因
原因は不明だが、家族内発生が多い傾向にある。
発育性股関節形成不全の症状
発育性股関節形成不全の症状は「新生児期」「乳幼児期」「歩行開始後」に分類される。
新生児期
乳幼児期に特徴的な症状は以下の通り。
- 開排制限
- クリック音
- Ortolani sign(オートラニー徴候)←両手による徒手操作で評価
- Barlow sign(バーロー徴候) ←片手による徒手操作で評価
乳幼児期
- 大腿皮溝の非対称
- Alis sign(アリス徴候):下肢の見かけ上の脚長差を評価
- Telescoping sign(テレスコープ徴候):脱臼させたり整復したりで評価
- 大端子の位置異常(ローゼルネラトン線・スカルパ三角で評価)
歩行開始後
1歳くらいから歩行が可能となるが、この時期における症状は以下の通り。
- 処女歩行の遅延
- 弾性墜下性跛行
- トレンデレンブルグ徴候
- 脊柱変形
- 下肢の短縮
治療
原則は早期発見・早期治療で、新生児のうちに保存療法を行えば90%完治する。
治療としては保存療法と手術療法があり、保存療法としては以下が挙げらえる。
厚めのオムツ
厚めのオムツは足を開排させる効果があり、自然整復を期待する。3週間して効果がなければ他の手段を用いる。
VonRosen splint(フォンローゼンスプリント)
金属板によって患肢を開排位に保つもの新生児期に使用する。
Rlemenbugel(リーメンビューゲル)
下腿を腰部にひきつけるようにしたバンド。下肢の伸展が妨害され、自然に開排位となり、自然整復を待つ。乳児期に使用する。
Over head traction(オーバーヘッドトラクション)
「生後7~8か月以上経過した患児」や「リーメンビューゲルで治癒しなかった患児」に適応。また手術療法の適応となった患児の前処置にも用いられる。
股関節屈曲位での垂直方向の牽引より始め、次第に外転を加えて整復する。
変形性股関節症
以下の記事では変形性股関節症について解説している。
ここに記載されている疾患が「二次性の変形性股関節症」の原因となることも多い。
合わせて観覧すると、股関節疾患をつなげて整理できるかもしれない。