呼吸器疾患 | 臨床医学各論

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この記事では肺疾患について解説している。

 

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「呼吸器疾患の発症部位」と「外呼吸・内呼吸」

 

呼吸器疾患を記載する前提として、「呼吸器系の分類」と「外呼吸・内呼吸」について解説していく。

 

呼吸器疾患の発症部位

 

呼吸器疾患の発症部位は「上気道」「下気道」「間質・毛細血管壁」に大別される。

 

上気道

上気道は鼻腔・咽頭・喉頭を指す。

疾患としては風邪症候群(上気道炎)が該当。

 

下気道

下気道は気管支・終末気管支・呼吸細気管支・肺胞を指す。

疾患としては気管支炎が該当する。

 

 

間質・毛細血管壁

間質・毛細血管壁では肺胞と血管の隙間を埋めている。

疾患としては(間質性)肺炎が該当する。

 

肺炎は肺胞腔内の感染により生じると資料には書かれてあるが、ということは普通の肺炎は「下気道の炎症」ということになるのか??

 

余談:鼻呼吸のメリット

・鼻毛・線毛がある⇒外界からの異物流入を防いでくれる。

・鼻腔は湿っているし暖かい⇒(乾いた冷たい)空気をを高温多湿にする。

異物排除は鼻水や喀痰により行う。

 

外呼吸と内呼吸

 

 

ちなみに「首を絞められて死ぬ」のは外呼吸因性(気道がふさがれる)ではなく、内呼吸因性(脳への血管が閉塞される)によって起こる。

※首を絞められても、完全に気道をふさぐことは困難。

 

赤血球

酸素を結合するタンパク質は「赤血球のヘモグロビン」である。

ヘモグロビンを有しているので、赤血球は「酸素の運び屋」と呼ばれる。

 

ヘモグロビンとミオグロビン

ヘモグロビンとミオグロビンの違い

ヘモグロビン⇒4本鎖で構成。末梢で酸素を離す。

ミオグロビン⇒2本鎖で構成。末梢で酸素を離さない。

※末梢ほど血中酸素濃度が低い。

 

補足:新生児黄疸

遺伝子が変わるために起こる黄疸なため、1週間程度で収まる。

※新生児の皮膚や白目が黄色味を帯びる

 

内呼吸と外呼吸は以下の記事でも解説しているので、合わせて観覧してみてほしい。

⇒『外呼吸と内呼吸について

 

 

風邪症候群

 

風邪症候群は上気道カタル性炎症普通風邪とも呼ばれる。

 

風邪はウイルス感染によって発症するが、他の特殊感染(インフルエンザ・麻疹・風疹・百日咳など)との鑑別も重要。

 

経過

短期間(1週間以内)に完治。

※1週間以上症状が続くようであれば、別の疾患も疑う。

 

症状

発熱(多くは38度以下。3日以内に収まる。)

長期に発熱が続くようであれば、別の疾患も疑う

 

治療

抗生物質はウイルスには効果ないため、以下の対処療法を行う。

保温、安静、水分・栄養補給、手洗い、うがい

※これらは予防にもつながる。

 

普通風邪はウイルス感染なのでに抗生物質が効かない

しかし普通風邪は「細菌による二次感染」を引き起こすことが多く(特に高齢者)、二次感染には(細菌感染なので)抗生物質が有用

 

二次感染を起こす菌としては以下などが挙げられる。

インフルエンザ菌(ウイルスじゃないヤツ)・肺炎球菌ブドウ球菌・連鎖球菌など。

 

急性気管支炎

 

急性気管支炎(下気道炎)は、ウイルスによる上気道炎から波及・続発する。

 

感染源

急性気管支炎は、「ウイルス」あるいは「細菌による二次感染」により発症する。

機序は「ウイルス性⇒気管支粘膜損傷⇒二次感染」の順

 

症状

発熱・湿性咳嗽・痰

痰の色は「白色(ウイルス波及性)」または「黄色・緑色(最近による二次感染)」であり、痰の色が治療方法のヒントとなりえる。

 

治療

  • ウイルス性の場合⇒対処療法(ただし、二次感染予防を目的に抗生物質使用あり)
  • 細菌性の場合⇒抗生物質

 

肺炎

 

肺炎は、肺胞腔内の感染により生じる。

 

感染源

感染源としては以下が挙げられる。

  • 細菌性肺炎(肺炎球菌・インフルエンザ菌、肺炎桿菌、モラキセラ・カタラーリス、マイコプラズマ)
  • 肺炎クラミジア(性病であるトラコマチスとは別)やオウム病・レジオネラ菌
  • ウイルス

・・・など。

 

症状・所見

  • 全身 症状:発熱・悪寒・頭痛(酸素不足)・関節痛・全身倦怠感や食欲不振(発熱などで全身状態悪くなる)
  • 身体 症状:脈拍上昇・呼吸数上昇・脱水
  • 呼吸器症状:咳嗽・呼吸困難・喀痰・胸痛(胸膜へ炎症が波及した場合)など

 

肺炎(肺に炎症が起こる)は肺水腫につながるイメージがある。

確かに「重度な肺炎」であれば肺水腫が起こるのだが、一方で左心不全も肺水腫を起こす疾患として有名なので覚えておこう(左心不全⇒肺うっ血(肺から心臓への血流が滞る)⇒肺水腫)。

肺水腫の原因には大きく分けて二種類があります。一つは心臓に原因がある場合で、何らかの原因で心臓の左心室から全身へ血液を送り出す力が低下し血液が肺に過剰に貯留する状態で、これを心原性肺水腫と呼びます。もう一つは心臓以外の原因で生じるため非心原性肺水腫と呼ばれます。このタイプは肺毛細血管の壁が病的変化により液体成分が滲み出しやすくなって生じるもので、中でも急性呼吸窮迫症候群といわれるものは死亡率も高い疾患です。非心原性肺水腫は重症肺炎、敗血症、重症外傷など様々な疾患に引き続いて生じます。

日本呼吸器学会HPより引用

 

検査

  • 一般 検査:好中球↑・CRP↑・血沈↑
  • 肺X線検査:浸潤影(肺胞に水が溜まっており、これが映る)

 

治療薬

  • 細菌性⇒ペニシリン系、セファロスポリン系(細胞壁合成阻害)
  • 非定型的肺炎(マイコプラズマ)⇒テトラサイクリン系、ニューキノロン系

 

発症機序

 

肺炎の発症機序は以下の通り。

  1. 感染により肺胞に炎症が生じる(肺胞内に水が溜まる)
  2. ガス交換が難しくなる
  3. 酸素の血中供給が不十分になる。

 

間質について

肺胞と肺胞の間は「血管」や「リンパ」や「(それを支える)間質という領域」がある。

そして通常は、「肺胞に入った酸素」が間質中にある血管に入って心臓⇒全身へ供給される。

しかし、肺胞が水浸しになるとガス交換がしにくくなる。

 

ちなみに肺胞中の水は、痰として排泄される。

 

発症要因

 

発症要因は「市中感染(どこででも起こる感染)」「院内感染」「宿主易感染性(生体防御機構の脆弱)」が挙げられる。

 

市中感染

マイコプラズマ・クラミジア・肺炎球菌など

 

院内感染

黄色ブドウ球菌・緑膿菌・MRSA・真菌など

 

宿主易感染性

日和見感染(エイズなど)

 

その他、内因性(誤嚥⇒誤嚥性肺炎)も挙げられる。

 

肺結核

 

結核菌による呼吸器感染症(全結核の8割)

 

主訴は「弱い症状(2週間以上持続する咳、客タン、微熱、寝汗=盗汗、倦怠感)」なため見逃す可能性あり

 

感染と発症

感染≠発症」であり、具体的には以下の通り。

起因菌:結核菌(保因者)

↓多くは飛沫感染

宿主(初感染)⇒直ちに(2週間~1年程度で)発病=一次感染(初感染の約5%が1次感染)

ツベルクリン反応陽性。※予防接種(BCG接種)でも陽性となる。

数年後に免疫低下などの要因により

発病(数年経っての発病を2次感染と呼ぶ)約5%が発病

症状は全身(胸膜・リンパ節・皮膚・髄膜炎・骨・関節・性器・腸など)

粟状結核(血行による播種性病態)を来すことあり。

 

検査

ツベルクリン反応QuantiFERON法による感染の有無判定。

 

診断

  • X線写真
  • 結核菌の同定(痰、胃液培養、抗酸菌の検出、菌の遺伝子診断)

 

治療

  • 多剤併用・長期投与が基本。
  • 初期強化療法(2カ月)⇒維持療法(4-6か月)

※「最初は強い薬剤を短く、次に弱い薬剤を長く」が基本。

 

 

気胸

 

気胸は「胸膜(壁側胸膜や臓側胸膜)が破れ、肺腔に空気が貯留する(結果、肺が膨らまなくなる)疾患」である。

 

症状は突然の胸痛呼吸困難

 

X線写真では「肺の虚脱」が確認される。

 

治療

治療は以下の通り。

  • 軽度 ⇒安静
  • 中等度⇒胸腔ドレナージ

※持続的な場合は、外科的手術。

 

気胸の分類

 

気胸は自然気胸外傷性気胸医原性気胸などに分類される。

 

自然気胸

  • 原発性気胸(20歳前後・長身・痩せ型の男)
  • 続発性気胸(COPD肺がん、肺吸虫、結核など)

 

外傷性気胸

交通事故・鈍的外傷

 

医原性気胸

カテーテル・経皮肺針生検・針灸

 

肺癌

 

肺癌死亡率が高いのが特徴である。

 

肺の臓器として特異的性格を持っており、それは以下の通り。

血液は必ず肺を通るため、血液を介して全身の様々な部位へ転移しやすい(血行転移)

 

ちなみに、転移しやすい癌としては肺癌・乳癌が挙げられる(乳癌はリンパによる全身転移が生じやすい)。

 

肺癌の転移先として特に頻度が高いのは脳・骨である。

 

肺癌の分類

肺癌の分類(多く発生する部位・特徴)は以下の通り。

非小細胞癌 腺癌(44%) 肺野 女性に多い
扁平上皮癌(31%) 肺門部 喫煙者に多い
小細胞癌 大細胞癌(9%) 肺野 増殖早い
小細胞癌(16%) 肺門部

喫煙者に多い

転移しやすい

腺癌・扁平上品癌の順で発生しやすい。

肺野部は発見しづらい(心臓が邪魔しているので)。

小細胞癌は転移しやすいので厄介

 

肺癌の症状

肺癌の症状は以下が挙げられる。

  • 咳・淡・血痰・発熱などの非特異的な症状
  • 癌の発生場所による特徴的症状
  • 全身症状
  • 転移先症状(脳・骨・肝臓・リンパ節・副腎・皮膚など⇒つまり全身)

 

また肺癌は、交感神経圧迫による麻痺である『ホルネル症候群(縮瞳眼瞼下垂第三眼瞼突出)』が特徴的である。

 

肺癌の治療

 

肺癌の種類別治療例。

小細胞癌

進展早い。抗がん剤有効。

非小細胞癌

進展程度、型により選択。

 

手術or化学療法の選択例。

根本的外科手術

外科的手術は、早期(3cm以下、転移無し)で可能。それ以外、化学療法(特に分指表的治療薬)。

化学療法

化学療法は、副作用とその対策が重要。放射線療法などの併用も。

 

 

治療選択のTNM

肺癌では、以下の「TNM」を組み合わせて病気を分類したうえで治療選択を行う。

  • T:Tumor(腫瘍の大きさ)
  • N:Node(リンパ節腫大)
  • M:Metastasis(転移)

 

上記を参考に以下の7つに分類する。

「ⅠA期・ⅠB期」「ⅡA期・ⅡB期」「ⅢA期・ⅢB期」「Ⅳ期」

 

上記分類を参考にした手術選択例は以下になる。

  • TⅡBは手術が第一選択となる。???????????
  • ⅢAは手術または化学療法(+放射線)を選択
  • ⅢBは化学療法(+放射線)を選択

 

上記分類を参考にした生存率は以下になる。

手術後の5年生存率

・Ⅰ期 ⇒70%

・Ⅱ期 ⇒50%

・ⅢA期⇒20~30%

非手術時の生存中央値

・Ⅲ期⇒16カ月

・Ⅳ期⇒8~10か月

 

 

換気障害の基礎

 

閉塞性呼吸器疾患

閉塞性呼吸器疾患としては以下が挙げらえる。

  • 肺気腫   ⇒肺胞 の炎症 +αで破壊
  • 慢性気管支炎⇒気管支の炎症
  • 気管支喘息 ⇒アレルギーによる気管支炎

肺気腫と慢性気管支炎はCOPDと呼ばれる。

 

拘束性呼吸器疾患

閉塞性呼吸器疾患としては間質性肺炎が挙げられる。

 

 

COPD(慢性閉塞性肺疾患) | 閉塞性換気障害

 

COPD(Chronic obstructive pulmonary disease)閉塞性肺疾患と呼ばれ、末梢気道病変気腫病変がある。

 

そして、割合により気道病変優位型と気腫優位型に分けることが出来る。

※あくまで「どちらが優位か」であって、厳密にどちらの病変かをきっぱり区別することは難しい。

 

気道病変優位型

気道病変優位型は、慢性気管支炎に該当相当する。重症例では「低酸素血症によるチアノーゼ」や「右心不全による浮腫」を伴うことも多い。

 

気腫優位型

気腫優位型は肺気腫に相当する。

 

COPDにおける慢性気管支炎と肺気腫の違いは以下の通り。

 

  慢性気管支炎 肺気腫
概念 年に痰が毎日3カ月以上持続し、2年以上に及ぶ。

気腔の異常拡大、肺胞壁の破壊(線維化なし)

部位 気道 肺胞
好発者 50歳以上の喫煙者 50歳以上の喫煙者
喀痰 白色粘稠性 少ない
主な症状 喀痰・咳嗽・労作時呼吸困難 労作時呼吸困難
肺機能 一秒率低下 一秒率低下、残気量上昇
X線 肺紋理増強(網み目状像) 肺野の透過性↑・過膨張
治療(対処療法になる) 禁煙・去痰・気管支拡張剤・酸素吸入・感染予防 禁煙・呼吸訓練・吸入療法・感染予防・酸素吸入

COPDでは「労作時呼吸」が生じる。労作時呼吸は「安静にしていると症状が出ないが、活動すると呼吸困難が生じる」という特徴を持つ。

 

COPDの原因は「タバコ・大気汚染・有機燃料の煙」などと言われている。

従って、これら原因を遠ざけた生活を送ることが大切となる(不可逆的な要素もあるため、一度悪化すると戻らないことも考慮し、予防・早期対策が重要となる)。

 

ブリンクマンの喫煙指数

禁煙の重要性を示す指標として「ブリンクマンの喫煙指数」というのがあり、「1日の喫煙本数×喫煙年数」で算出した数値を以下に当てはめることで判断する。

  • 400本以上 ⇒肺がん危険群
  • 600本以上 ⇒肺がん高度危険群
  • 1200本以上 ⇒咽頭がん高度危険

 

 

肺気腫とは

 

肺気腫とは「肺胞の炎症・破壊(破れる)によりガス交換能が低下する疾患」を指す。

 

肺気腫には以下などに分類される。

  • 小葉中心型肺気腫(肺上葉にみられることが多い)
  • 汎小葉型肺気腫(肺下葉にみられることが多い。小葉全体にわたって肺胞が破壊されることも多く、重症となりやすい)

 

気管支喘息 | 閉塞性換気障害

 

気管支喘息では「気道の炎症⇒狭窄と気管支腺の過分泌1秒率の低下」が生じる。

 

以下は「喘息により気管支が狭窄してるイラスト」となる。

何となく、息苦しくなるイメージがわくのではないだろうか。

※「日本呼吸器学会」より画像引用

主には可逆的(発作的に生じ、その後に収まる)な場合も多い。

ただし、死亡例は年4000人と決して少なくない。

 

気管支喘息の成因と症状

 

気管支喘息は「アトピー性(外因)」と「非アトピー性(内因)」に分けられる。

 

アトピー性(外因)

  • アレルゲン(ダニ・ほこり その他)によって生じる。
  • IgE抗体(+)

※気管支喘息は、圧倒的にアトピー性が多い

 

非アトピー性(内因)

  • 様々な要因で起こるとされている。
  • IgE抗体(-)

 

喘息の治療

 

喘息の治療としては以下が挙げられる。

  • 専門医による管理(コントロール)
  • アレルゲンの除去(ダニが好みそうな絨毯などを取り払いフローリングに変えるなど)
  • 吸入薬(ステロイド・β2刺激吸入薬)
  • 内服薬(テオフィリン、抗アレルギー薬・ロイコトルエン拮抗薬)

 

間質性肺炎 | 拘束性換気障害

 

間質性肺炎は「肺間質に生ずる炎症性疾患の総称」である。

 

間質性肺炎の機序は以下の通り。

炎症⇒線維化⇒肺が膨らまない⇒拘束性換気障害

特発性肺線維症が最も多い。

 

治療としてはステロイドと免疫抑制剤による併用療法が行われるが、難治性なのが特徴。

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